研究課題/領域番号 |
22K18384
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分51:ブレインサイエンスおよびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡村 均 京都大学, 医学研究科, 研究員 (60158813)
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研究分担者 |
冨永 恵子 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (60256196)
郡 宏 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80435974)
角谷 寛 滋賀医科大学, 医学部, 特任教授 (90362516)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 生体リズム / LED / 光 / リズム中枢 / 霊長類 / 齧歯類 |
研究開始時の研究の概要 |
現今の新型コロナ感染の流行により、我々は、自然と隔絶した高度に人工的な生活を余儀なくされている。現在の人工照明は、省エネ効果の優れた従来型LEDであり、これに長期間暴露することによる、生体リズムの中枢のリズム発振を検索する。本研究では、従来型LEDの欠点を克服した太陽光LEDによる健康への影響を、昼行性霊長類マーモセット、ヒトおよび齧歯類を用い、生体リズム、運動、脳活動において検証する。
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研究実績の概要 |
太陽から照射される光は多様な波長成分からなる。そのうち最もエネルギー順位の高い紫外線UVBは角膜で、紫外線UVAは水晶体で吸収される。赤外線は水晶体で吸収され、可視光のみが網膜に到達し、これが環境からの情報として利用されている。この可視光は網膜の神経細胞で情報処理され、脳に伝達される。 従って、この可視光による障害を考える場合、網膜と脳での障害が考えられる。網膜では、網膜内の脂質、タンパク質や核酸が、酸化還元反応で修飾を受けることがその障害の分子基盤であるとされる。では、脳の場合はどうであろうか?光情報は視神経を介して脳に伝達されるが、受容された光情報は、視覚情報や非視覚情報(対光反射、概日リズムなど)として脳機能の調節に利用される。今回我々は、網膜からの光情報を直接受ける概日リズム中枢である視床下部の、視交叉上核(SCN)への影響を検索した。 今年度は、SCNのアストロサイトに発現する水チャネルAQP4の概日リズムにへの影響に関して検索した。AQP4の概日リズムは、明暗サイクル下や、恒常暗条件下では、全く正常で、野生型マウスと同じであった。しかし、持続的光照明下では、AQP4ノックアウトマウスの概日リズムの振幅は、野生型に比し大幅に低下した。 この恒常明で低下したリズム振幅は、恒常暗条件に戻すと、野生型では数日で回復するが、AQP4ノックアウトでは元のリズム性が回復されるまでの期間が著しく延長された。 可視光のうちエネルギーレベルが比較的高いブルーライトについては、網膜障害や概日リズム障害の惹起が危惧されている。この改善のため近年、太陽光と同じ全スペクトルを持つ太陽光LEDが開発されたが、この太陽光型LEDによる概日リズム障害の改善が期待される。 以上に加え、マーモセット行動・睡眠覚醒リズム、ヒトの睡眠リズム、またリズムの数理機構とその異常に関する研究を遂行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光を浴び続けることで、概日リズムはどのような障害が惹起されるのであろうか? 我々は、SCNに豊富に存在するアストロサイトに着目して研究を進めることにした。SCNのアストロサイトは、この部位にあるニューロンとともに、近年では、概日リズム発振の重要なプレーヤーであると考えられている。本研究では、初めて水チャネル アクアポリン(AQP)のうち、アクアポリン 4 (AQP4)がSCNのアストロサイトに大量に発現することを明らかにし、AQP4 ノックアウトマウスを使用して、概日リズムがどのように変化するかを検索した。 アクアポリンは水分子を選択的に透過させるが、イオンや他の物質は透過させない水チャネルであり、水分子はこのチャネルの細孔を通過する。この水チャネルが働くことで水の細胞膜透過性が上がるとされている。この結果は、AQP4ノックアウトマウスは長期暴露によるリズム産生の機能障害を概日振動の長期の光誘発障害を悪化させ、通常のリズムへの回復を遅らせる。AQP4は光による細胞性障害の防御に効果があることを示唆している。 本研究では、上記結果に加え、マウスにおける光による概日リズム障害の新規分子機構の検索をし、非ヒト霊長類マーモセットやヒトでの睡眠機構およびその病態機構を検索した。さらに、ヒトにおける睡眠の解析、睡眠病態の解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今回、概日リズム中枢であるSCNのアストロサイトが光による概日リズム障害に重要な機能を果たすことを明らかにした。今後、このマウスの結果をマーモセットでも試みる。さらに、行動リズム周期や位相を変動させる分子をさらにマウスSCNで探求し、これをマーモセットでも検索する。また、次年度は、太陽光型LEDでのリズム異常の検出を行い、その使用による改善を検討する予定である。 マーモセットやヒトの睡眠の解析は、現在行っているものを、数理解析を含め、さらに延長して解析を進める。各種病態もこれまで以上に、生理学、生化学、数理学を含めた総合的解析に力を入れて、完遂したい。
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