研究課題
挑戦的研究(開拓)
線維化は心不全、肺線維症、肝硬変、腎不全など多くの疾患、加齢に伴う臓器硬化および機能低下の原因である。線維化の原因は線維芽細胞の増生と永続的な活性化である。申請者らは線維芽細胞の起源細胞の一つとしてMeflin陽性間葉系幹細胞あるいは血管周囲線維芽細胞(PVF)を同定し、活性化した線維芽細胞ではMeflinが陰性化することを見出した。本研究の目的は、これまでの知見を生かして、活性化した線維芽細胞を非活性化する新規手法の開発をすすめ、線維化疾患モデルマウスを用いてその意義と分子メカニズムを検証することである。
研究代表者はこれまでに、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)あるいはMSCとほぼ同等の分化能を有するとされる血管周囲線維芽細胞(perivascular fibroblast: PVF)の特異的なマーカーとしてMeflin分子を同定した。本研究の目的は、MSC/PVFの未分化性を誘導する新規手法の開発をすすめ(目的1)、線維化疾患モデルマウスを用いてその意義と分子メカニズムを検証すること(目的2)である。本年度は下記の実験を行い、下記の結果を得た。1)昨年度までに実施した複数の化合物ライブラリースクリーニングで同定した6種類の化合物について、初代培養MSCを用いた確認検証実験を行った。その結果、これらの化合物は内因性のMeflinのmRNAの発現には大きな影響を及ぼさないことが判明した。本年度は、上記ライブラリースクリーニング以外の実験系で同定した3種類の化合物について、Meflinの発現の影響に与える影響を定量的PCRを用いて検証した。これらはAm80との同時投与で効率よくMeflinの発現を上昇させることを見出した。2) 昨年度から開始したデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性腸炎モデルを安定して作成することに成功した。昨年度までに作成したMeflinおよびIL-10の二重欠損マウスを上記DSS誘導性腸炎モデルに供し、大腸の組織病理学的な検証を開始した。またAbcb4欠損マウスを共同研究者より入手、これを肝線維化モデルにするためのバッククロス作業をほぼ完了した。また心臓の線維化モデル(HFpEF)モデルを安定して作成することにも成功し、心臓の機能低下(E/e’値の異常)がみられることも確認した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度までの化合物ライブラリースクリーニングで同定した化合物群が内因性のMeflinのmRNAの発現に影響を及ぼさないことが判明し、本プロジェクトは中止を余儀なくされたが、別の手法で同定した化合物群がMeflinの発現を上昇させることを見出したため、当初の目的遂行に向かって順調に進みつつあると考えている。また多くの線維化疾患マウスモデルの作成についても順調に進んでいる。
化合物ライブラリースクリーニングで同定した化合物については予想される結果が得られなかったため、プロジェクトの方向性を変更する。それ以外の検証項目については、当初の研究計画書の予定通りに実施する予定である。線維化疾患の各種モデルマウスの作成も順調に進んでおり、今後は上記化合物を上記マウスモデルに投与してその効果を検証する予定である。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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