研究課題/領域番号 |
22K18406
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
明智 龍男 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (80281682)
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研究分担者 |
香月 富士日 名古屋市立大学, 大学院看護学研究科, 教授 (30361893)
市川 太祐 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (30824619)
古川 壽亮 京都大学, 医学研究科, 教授 (90275123)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | Society 5.0 / AYA世代がん / サイバー空間 / フィジカル空間 / ICT / 分散型臨床試験 / AYA世代 / がん / スマホ精神療法 / society 5.0 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させた革新的な緩和ケアシステムの開発を行う。具体的には、AYA世代のがん患者を対象に、スマートフォンデバイスを通して、苦痛症状のスクリーニング、セルフケアを含めた必要な情報の提供、精神療法に加え、ソーシャルネットワーキングシステムを用いた多職種サービスを受けられるような革新的な支援システムを開発する。そして、その効果を、分散型臨床試験(Decentralized clinical trial: DCT)による多施設無作為化比較試験にて検証する。また蓄積されるビッグデータを人工知能により解析し、個別化医療へと展開する。
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研究実績の概要 |
本研究では、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させ、患者の苦痛症状緩和をはかり、生活の質を向上するための包括的支援法を開発する。加えて、その有用性を検証するための臨床試験をサイバー空間で実施するための研究開発を行う。これを実現するため、思春期・若年成人(AYA)世代のがん患者を対象に、スマホを通して苦痛症状のスクリーニング、セルフケアを含めた必要な情報の提供、精神療法に加え、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を用いた多職種サービスを受けられるような支援システムを開発し、その効果を分散型臨床試験基盤に基づく多施設無作為化比較試験にて検証する。 初年度の2022年度は下記を実施した。 1.スマホを用いた苦痛のスクリーニングとセルフケア情報の提供システム:AYA世代に頻度の高い苦痛、アンメットニードをスクリーニングし、セルフケア情報を提供するホームページ(HP)を構築した。2.スマホを用いた問題解決療法(『解決アプリ』):我々が開発した構造化された問題解決療法(PST)プログラムを基盤としたスマホによる『解決アプリ』をAYA世代がん患者用に改編した。3.SNSを用いた多職種支援:メディカルケアステーションという医療用チャットツールを用いて多職種支援を実施するシステムを構築した。4.分散型臨床試験基盤構築:来院しなくても臨床試験に参加できるシステム(研究紹介HP、eConsent、ePRO等)を構築した。5.臨床試験の実施:15-39歳のがん患者を対象として、上記1-3に基づく介入の予備的有用性を検討する臨床試験を開始した。なお本試験は厚生労働科学研究費補助金(AYA世代のがん患者に対する医療・支援モデル介入効果を検証する研究(21EA1201))を引き継ぐ形で実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の2022年度は下記を実施した。 1 スマホを用いた苦痛のスクリーニングとセルフケア情報の提供システム:AYA世代に頻度の高い苦痛、アンメットニードをスクリーニングするためのスクリーニングを電子的な患者報告アウトカム(e-Patient Reported Outcome: ePRO)として導入した。各項目にカットオフ値を設け、閾値以上であった場合には、セルフケア情報を提供するとともに関連情報を掲載したホームページ(HP)に誘導する仕組みを構築した。これらには痛みなどの身体的苦痛、抑うつ・不安・不眠などの精神的苦痛、経済的問題や医療費に関する社会的支援、妊孕性に関する情報などを含める。 2 スマホを用いた問題解決療法(『解決アプリ』):我々が開発した構造化された問題解決療法(PST)プログラムを基盤としたスマホによる『解決アプリ』をAYA世代がん患者用に改編した。 3 SNSを用いた多職種支援:メディカルケアステーションという医療用チャットツールを用いて多職種支援を実施するシステムを運用マニュアルの作成を含め構築した。 4 分散型臨床試験基盤構築:研究参加のためのHPを作成し、SNSやリーフレットで容易にアクセス可能な仕組みを構築した。具体的には、HP上のビデオと文書で研究説明を行い、希望者はメールで事務局に参加申し込みを行い、その後は研究助手が電話で適格性を確認し、eConsentで同意を取得する仕組みとなっている。アウトカムの入力もすべてスマホから可能となるようePROのシステムを構築した。 5.臨床試験の実施:15-39歳のがん患者を対象として、上記1-3に基づく介入の予備的有用性を検討する臨床試験を開始した。研究に際しては、名古屋市立大学病院の倫理審査委員会に研究計画を提出し、承認を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、フィジカル空間(現実空間)における従来の病院中心の医療やケアの提供体制の限界を補完するために、サイバー空間(仮想空間)を利用し、患者が居住地域や時間などに関わらず、自由かつ柔軟に支援が受けられる近未来の支援体制を開発することを目的としている。そのためにサイバー空間を利用して、スマホを通した革新的な支援システムを開発することを念頭においた研究計画となっている。以下に現時点までに経験した問題点とその対応策について記した。 ・スマホを用いた問題解決療法:研究者間で検討した際には本アプリについて、AYA世代に提供するうえで問題ないと考えていたが、他の研究での本アプリの使用経験も含めて、進め方が冗長であったり、わかりにくいなどの感想が寄せられたため、予備試験後に再度改良を行うことを想定している。 ・多職種支援:当初、シェアメディカル社が開発した医療用チャットMedlineを基盤とした多職種支援のためのSNSを共同開発する予定であった。しかし、Medlineの開発技術者がウクライナ在住で、ロシアとの戦争のために本開発が事実上中止となった。急遽メディカルケアステーションという既存のシステムに変更したが、現時点までに多職種支援を希望する参加者はみられていない。実際にはSNSを用いた多職種支援に関してのニーズがあまりない可能性を考え、予備試験後に提供の有無などに関して再考する予定である。 ・臨床試験の実施:分散型臨床試験基盤の構築を行い、参加者にとっても利便性の高い仕組みとなっているが、それでも参加者のリクルートが不十分であり、2023年度3月末時点で9名にとどまっている。またアウトカムへの入力に欠損があったりなどの問題点も生じている。今後、臨床試験の円滑な実施とエントリー対象者の確保が最大の課題となる可能性があり、対象診療科の拡大、検証試験時の施設の拡大などを検討したい。
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