研究課題/領域番号 |
22K18407
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20186993)
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研究分担者 |
安田 周祐 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10643398)
谷口 恵香 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70882942)
堀中 真野 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80512037)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2027年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2026年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 先制医療 / がん / RB / 予防 |
研究開始時の研究の概要 |
個々の遺伝性疾患を発症前に薬剤で予防する『先制医療』の必要性が出てきた。それにも関わらず、がん体質の要因であるがん抑制遺伝子の失活に対する特異的予防法の研究は極めて遅れている。私達は、発がん抑制に最重要とされる『がん抑制遺伝子RB』を活性化することが先制医療に繋がると考え、研究を行ってきた。しかしながら、RB自体に突然変異を有する遺伝性網膜芽細胞腫家系の未発症変異保有者に対し、発症を予防する先制医療研究は皆無である。今回、失活したRBの機能を代償し得る方法を探索し、網膜芽細胞腫家系に対する先制医療の開発研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、がん抑制遺伝子RBに突然変異を有する、遺伝性網膜芽細胞腫をはじめとした多くの難治性がんの未発症変異保有者に対する予防薬の開発を目的とする。 RB変異がんに対する予防戦略として、RB変異によって恒常的に活性化した転写因子E2Fを直接阻害する方法と、変異により失活したRBの代替として、類似の機能を有するファミリー分子であるp107やp130を活性化する方法の二種類を考案した。E2F阻害時に発現抑制される遺伝子群と、RBファミリー活性化時に発現抑制される遺伝子群、これら二つに共通する遺伝子を過去の報告から探索した結果、Cyclin E1遺伝子を見出した。Cyclin E1遺伝子のプロモーター活性低下を指標としたスクリーニングを行うことによって、E2F阻害剤とRBファミリー活性化剤という異なる作用機序を有する薬剤を同時に発見できると考えられた。 次に、RB遺伝子を完全に欠失しているヒト網膜芽細胞腫WERI-Rb-1細胞に対し、E2F阻害の陽性対照としてpan-E2F阻害剤HLM006474を、RBファミリー活性化の陽性対照としてCDK2/4/6阻害剤PF-06873600を投与した際の細胞増殖およびCyclin E1 mRNA発現の変化を調査した。その結果、いずれの薬剤も、WERI-Rb-1細胞の増殖を抑制し、Cyclin E1 mRNA発現を低下させることが判明した。さらに、PF-06873600を投与時には、RBファミリーp130が脱リン酸化、すなわち活性化していることを見出した。これらの結果は、Cyclin E1遺伝子のプロモーター活性低下を指標としたスクリーニング系構築の基礎となるだけでなく、RB変異がんに対する予防戦略としてE2F阻害およびRBファミリー活性化が有用であるという根拠を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、E2F阻害剤の探索とRBファミリー活性化剤の探索を分けて行う予定であった。しかし、二種類の薬剤を同時に見出しうる「Cyclin E1遺伝子のプロモーター活性低下」という新たなスクリーニングの指標を考案したことにより、必要実験量の大幅な削減が見込まれた。さらに、陽性対照化合物によるRB欠失がん細胞株WERI-Rb-1の増殖抑制、Cyclin E1遺伝子発現の抑制およびRBファミリーp130の活性化を確認し、スクリーニング系構築のために必要な情報を揃えることができた。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Cyclin E1遺伝子のプロモーター活性を測定するためのプラスミドベクターをRB欠失がん細胞株WERI-Rb-1に導入し、陽性対照化合物HLM006474およびPF-06873600投与によりプロモーター活性が低下することを確認する。プロモーター活性の低下を確認できれば、これを指標として食品や薬品ライブラリーを用いたスクリーニングを開始する。 E2F阻害剤およびRBファミリー活性化剤は、いずれも細胞周期をG1期で停止させることが期待できる。WERI-Rb-1細胞をはじめとしたRB変異がん細胞に対し、得られたヒット化合物が細胞周期をG1期で停止させるかどうかを検討する。さらに、これまでの研究成果であるRBファミリー再活性化食品成分や薬剤を併用することで、細胞周期停止効果が増強するか検証する。 最後に、WERI-Rb-1細胞をはじめとしたRB変異がん細胞を免疫不全マウスに移植し、ヒット化合物を投与した際の腫瘍退縮効果を検証する。並行し、アフィニティクロマトグラフィーを用いてヒット化合物の細胞内での結合分子を同定し、作用機序を明らかにする。
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