研究課題/領域番号 |
22K18411
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
酒井 寿郎 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80323020)
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研究分担者 |
松村 欣宏 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20375257)
米代 武司 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (40724167)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | メタボリックシンドローム / エピゲノム / 生活習慣病 / 脂肪細胞 / 栄養環境 |
研究開始時の研究の概要 |
エンハンサーとよばれるDNAシスエレメント領域は、環境刺激で準備状態から活性化状態へと変化し、細胞特異的な遺伝子発現を誘導する。本研究では、脂肪細胞のエンハンサーを制御するタンパク質複合体(モジュール)を同定し、環境変化に伴うモジュールの構造・機能変化によって制御されるエンハンサー活性化機構を解明する。そして環境刺激が、「細胞分裂 ― エンハンサー制御軸」を介して細胞運命(質と機能)を決定するという新しい分子機構を提示する。
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研究実績の概要 |
生活習慣病の予防と病態解明は大きな課題であり、その発症において脂肪細胞の機能破綻によるメカニズムが注目されている。脂肪組織では、過栄養環境では脂肪を蓄える白色脂肪細胞が、寒冷環境では脂肪を燃焼するベージュ脂肪細胞が誘導され、代謝制御に寄与する。細胞種特異的な遺伝子発現は、遺伝子座から離れたエンハンサーの状態によって制御される。エンハンサーの状態はヒストン修飾によって前準備、準備そして活性化状態に分けられる。本研究では、環境を感知し、エンハンサー状態をスイッチさせる分子を同定し、その機能的タンパク質複合体(モジュール)を介した時空間的な細胞運命決定機構を明らかにすることを目的とする。 エンハンサーに特徴的なヒストン修飾であるH3K4me1, H3K27acのChIP-seq解析を行い、ゲノムワイドなクロマチン相互作用データ(HiC)を参照し、脂肪細胞に特異的なエンハンサーを同定した。3T3-L1前駆脂肪細胞のデータベースから見出したヒストンメチル化酵素活性(SET)ドメインを有するSETD5に着目し、脂肪細胞分化に及ぼす影響を解析した。ドメイン欠失体の解析から、SETD5はSETドメインを介さずに、エンハンサーの状態を制御し、脂肪細胞分化を抑制することを見出した。SETD5のプロテオミクス解析から、エンハンサー状態を制御する新規モジュール(転写コリプレッサー複合体)を同定した。この転写コリプレッサー複合体は、脂肪細胞特異的遺伝子(PpargとCebpa)のエンハンサーのヒストンアセチル化を抑制することを見出した。転写コリプレッサー複合体形成とエンハンサー状態は、SETD5に存在する特徴的なドメインによって制御されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で記載した項目(1)-(3)についての進捗は以下の通りであり、おおむね順調に進んでいる。 (1)エンハンサーに特徴的なヒストン修飾であるH3K4me1, H3K27acのChIP-seq解析を行い、前駆脂肪細胞でのゲノムワイドなクロマチン相互作用データ(HiC)を参照することで、脂肪細胞種特異的なエンハンサーを同定した。(2)3T3-L1前駆脂肪細胞のデータベースから見出したSETD5について、ドメイン欠失体の解析を行い、エンハンサーと脂肪細胞分化を制御するドメインを特定した。(3)SETD5とドメイン欠失体のタンパク質複合体解析を行い、エンハンサー状態の制御モジュールを同定した。また複合体形成に必要なドメインを特定した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から継続して、転写コリプレッサー複合体によるエンハンサー状態の制御機構の解析を行う。 (4)SETD5のChIP-seq解析を行い、脂肪細胞特異的遺伝子(PpargとCebpa)のエンハンサーにSETD5が局在するかを解析する。(5)SETD5のタンパク質レベルは分化初期に上昇した後に消失することに着目し、細胞周期と同期してSETD5をユビキチン化するタンパク質分解軸を同定する。プロテオミクス解析から、ユビキチンリガーゼ複合体APC/C (anaphase-promoting complex/cyclosome) と細胞周期依存的な活性化に関わる CDC20 (cell division cycle protein 20) を見出していることから、これらのノックダウン下におけるSETD5の分解速度の変化を解析する。(6)SETD5によるエンハンサー状態の制御が、ヒストンアセチル化酵素のリクルート阻害によるのか、あるいはヒストン脱アセチル化酵素の活性・リクルートの促進によるのかを解析する。
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