研究課題/領域番号 |
22K18430
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
新妻 靖章 名城大学, 農学部, 教授 (00387763)
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研究分担者 |
湊 健一郎 名城大学, 農学部, 教授 (10341728)
細田 晃文 名城大学, 農学部, 准教授 (50434618)
大浦 健 名城大学, 農学部, 教授 (60315851)
伊藤 元裕 東洋大学, 生命科学部, 准教授 (80612332)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2025年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 海鳥 / マイクロプラスチック / 抗マイクロプラスチック抗体 / ポリスチレン / 免疫抗体反応 / 熱分解GC/MS 分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,プラスチックの一斉分析が可能な熱分解GC/MS分析から生体組織内に取り込まれているプラスチックを定性ならびに定量的に分析し,海鳥類のプラスチック摂取を免疫抗体反応で評価する方法を新規に開発し,海鳥類を含む海洋捕食動物への適用を目指す.海鳥の体内でどのような遺伝子発現が起こっているかについて,RNA-seqを用いて定量的な解析を行い,マイクロプラスチックの生体への影響を明らかにする.これらを新規の手法を日本沿岸で繁殖する海鳥類に適用することで,マイクロプラスチック汚染による海鳥類の健康被害リスクマップを構築する.
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研究実績の概要 |
本研究で開発する海鳥類のプラスチック摂取を評価する免疫抗体反応法で用いるサンプルを北日本および東日本の4繁殖地において,ウミネコ(青森県弁天島,青森県鯛島),オオセグロカモメ(青森県弁天島,青森県鯛島),ウトウ(北海道松前小島,青森県弁天島,青森県鯛島),オオミズナギドリ(東京都利島)の野外調査を実施し,ウミネコは計22サンプル,オオセグロカモメは計12サンプル,ウトウは計50サンプル,オオミズナギドリは計50サンプルの血液をそれぞれ収集した。また,プラスチックの摂取の有無を調べるための海鳥類の胃内容物および海鳥類の生体組織内に取り込まれているプラスチックを定性ならびに定量的に分析するためのサンプルとしてウミネコおよびコアホウドリから採集した。研究遂行において付加的に有用となる海鳥個体の基本計測,餌の採集を実施するとともに胃内容物の分析を実施し,食性の解明とプラスチックの含有の有無の基礎データを得た。さらに,他の研究で得られていたGPSデータを解析して,調査実施海域の海鳥の採餌域を明らかにした。 海鳥類の生体中に抗マイクロプラスチック抗体がどれくらい生成・蓄積しているか調査した。その方法として,抗原抗体反応を利用するELISA法を採用することを試みた。海鳥血清試料を測定した結果,プラスチック製品の原料となるポリスチレンに対して特異的に反応する抗体(トリIgY抗体)が検出できた。また,抗原となるポリスチレンについて,いくつか異なる種類のものをコーティングしたプレートを用いることによって,海鳥個体レベルでの差異が検証できた。このことにより,本検出法は,検出用ポリスチレンの種類を変えることで,どのような鳥に対しても,もれなく検出できる方法であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度ということで,まず調査が可能な繁殖地,鳥類種を選定し,精力的に野外調査を実施した.これにより,今後,免疫的分析に供するための血液を4つの繁殖地,4種の海鳥から多数収集することに成功した。また,プラスチックの摂取の有無を調べるための海鳥類の胃内容物や海鳥類の生体組織内に取り込まれているプラスチックを定性ならびに定量的に分析するための生体組織サンプルをウミネコとコアホウドリから採集した。さらに,研究の深化に欠かせない,本種の基本情報である個体の計測データや,食性,採餌域などについてのデータを付加的に収集・解析して本研究の目的達成に寄与するデータを多数得た。新型コロナウイルス感染症拡大の対応のため,一部繁殖地では,調査が困難であったが,初年度の調査目標は十分に達し,次年度以降の実験室的分析に供する十分量のサンプルを得ることができた. 海鳥類のプラスチック摂取を免疫抗体反応で評価する方法の開発においては,種類の異なるいくつかのポリスチレンコーティングのマイクロプレートを用いたことによって,全ての鳥類について抗ポリスチレン抗体がもれなく検出できた。そのため,本来の目的であるポリスチレンの検出において,有効な抗体を海鳥の血清から得ることができた。現在さらに抗体の純度を高めるために,クロマトグラフィー技術(主にアフィニティークロマトグラフィー)をもちいて,IgYクラス抗体の精製に取り組んでいる。また,いくつかのコーティングプレートを使って,最適な検出方法についても検討することができた。 生体組織内に取り込まれているマイクロプラスチックを定性・定量分析については,サンプルの採集にとどまっており,その分析が遅れている。また,海鳥の体内でどのような遺伝子発現が起こっているかの解析については,モデル生物(鳥類)を使用した室内実験の検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,昨年度と同様の調査を更に精力的に実施し,今後の実験室的な本分析に供するサンプルを十分量採取する。新型コロナウイルス感染症拡大の対応のため,一部繁殖地では,調査が困難であった。今年度は,新型コロナウイルスの影響が昨年度よりも軽減されることが予測されるため,特にこれまで調査が困難であった東北の岩手および宮城のウミネコ,ウトウ繁殖地での調査実施に向けて,現地での情報収集や関係作り,予備調査を進めていく予定である。また,繁殖地周辺部海岸において,プラスチックの採集を行い,繁殖地周辺でのプラスチックの汚染状況を確認し,海鳥類が摂取しているプラスチック類と比較する。 海鳥類のプラスチック摂取を免疫抗体反応で評価する方法の開発においては,先ずは,海鳥中に生成されている抗マイクロプラスチックIgY抗体の精製を進めて,迅速かつ正確な検出方法を確立するために,マイクロプラスチックの原料となるポリスチレンをより特異的に検出できる抗体を得ることを目標にする。本研究ではマウスを用いた抗体作製も検討しているが,抗体のアミノ酸配列情報を解析して全構造を解読すれば,大腸菌を使った組換え体を作成することも可能になるため,その可能性についても並行してアプローチしていく。 鳥類へのマイクロプラスチック投与がどのような影響を及ぼすかについて実験室内で行うことが可能な先行研究となるウズラでの実験やニワトリでの実験を参考とし,研究の方向性を確立する。 海鳥の生体組織内にプラスチックが取り込まれているのかについて,マイクロプラスチックの一斉分析が可能な熱分解GC/MS分析による定性的な解析を進める。また,海鳥類の採食生態の特徴によってプラスチックの取り込みが異なるのかを窒素安定同位体比の解析を進める。
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