研究課題/領域番号 |
22K18443
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
内田 欣吾 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (70213436)
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研究分担者 |
須丸 公雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (40344436)
桐戸 敬太 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90306150)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2024年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | ジアリールエテン / 光細胞毒性 / DNA / ダブルストランドブレイク / 分子機械 / 細胞内動態 / 細胞死 |
研究開始時の研究の概要 |
特定の構造を有するジアリールエテン(DAE)について、細胞内の特定部位(核内のDNA)への送達を、光でトリガーする過程を含む、特異な細胞毒性の発現を見出した。これは、分子機械を用いて細胞内での動態や活性発現を光制御したことであり、従来の光細胞毒性メカニズムとは一線を画する。本研究では、この新規光毒性発現現象の作用機序が明らかにし、それに基づいて、原子の単位で分子構造を最適設計、さらにDNA内に送達されたDAE分子を、別の波長で光開環化させることで無毒化するスキームの実現を目指す。生体透過性や暗所毒性などについても、in vitroでの実証実験を行い、全く新しいバイオ制御の方法論を創生する。
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研究実績の概要 |
2015年の報告で、ジアリールエテン(DAE)による細胞死は、カスパーゼ回路の活性化によるアポトーシスであることを報告していた。DAEは、無色の開環体に紫外光を照射すると着色した平面構造の閉環体になり、これに可視光を照射すると元の開環体を再生するフォトクロミック化合物である。カスパーゼ回路の活性化は、DNAあるいはミトコンドリアがダメージを受けた時に起こる。 本プロジェクトは、DAEが、光誘起細胞死をもたらす機構の解明から始めた。まず12種類のDAE誘導体の細胞毒性を比較した結果、それら全ての開環体に毒性はなく、平面構造をもつ閉環体だけに細胞毒性が確認された。ところで、DNAの塩基対間は、直径20Å、面間隔3.4Åだが、インターカレートする時、塩基対間はその約倍の6.8Å程度まで広がることは知られている。閉環体は、このサイズを超える大きさの誘導体は毒性が低く、それ以内だと毒性を示した。さらに、極性官能基をもつ閉環体も毒性を示さず、これは極性の化合物が無極性のDNAの塩基対間にインターカレートしにくい事と一致する。これより、DAEがダメージを与えたのはDNAであることが示唆された。 さらにDNAを切断する機構を調べた結果、DNA存在下のDAE誘導体の開環体と閉環体の吸収スペクトルが重なる波長域の光を照射する時に細胞死が起こることを突き止めた。これは、DNAの塩基対間にインターカレートしたDAEが、その波長の光を照射されることで、その場で開環・閉環反応を繰り返し、DNAの二重らせんが破壊され、細胞死が引き起こされることが判明した。この細胞死は、ヒトの子宮頸がん由来のHeLa細胞でも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DAE共存下の細胞に436 nmの青色光を照射すると細胞が死滅する現象は、2015年に既に判っていたが、その発現機構が不明であった。このプロジェクト1年目で、その発現機構が分ったことで、新たな分子の設計や、新たな物理学的手法を併用することができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
DNAの塩基対間にインターカレーとした分子が、光により形状を変化することで細胞死が誘起されるのなら、他の光応答性分子への応用も考える。さらに、実際の使用に合わせて2光子励起などを活用し、近赤外光による光誘起細胞死の実験も行う。
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