研究課題/領域番号 |
22K18461
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
水田 洋子 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (30413941)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | コーパス分析 / 自分 / 幸せ / 現象と本質 / 固有名 / 直接指示 / スペースと世界 / 空名問題 / 本質 / 批判的思考 / 言語知識 / 世界知識 / 論理関係 / 談話構造 / 言語表現の意味構造 / 知の構造 / 論理と思考 |
研究開始時の研究の概要 |
言語は人間の概念形成や思考と密接な関わりを持ち、言語の意味についての研究は本質的に哲学と言語学の両方に関わっている。しかし現状では哲学と言語学の交流は限定的である。本研究は、言語表現の意味と人間の知の構造について多角的・相補的に理解を深めることを目指し、哲学と言語学の有機的な結合(特に、両分野の知識や方法論の双方向的な活用)を提案し、事例研究を通してその意義と可能性を具体的に示すことを図る。
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研究実績の概要 |
研究計画にある2種類のケーススタディ、#1(コーパスデータに基づく「本当のN」の分析)と#2(固有名)を進めた。 #1は、Nが「自分」と「幸せ」の場合についての分析を国際語用論学会(2023年7月)で発表し、内容を発展させて論文執筆中である。例えば、「本当の幸せ」は、内面性、困難や努力を伴って得られる、他人を犠牲にしない、などの特徴を持つとの認識が観察された。他言語や哲学の視点も加えて、「幸せ」の構造や本質を掘り下げるというテーマも見出した。 #2は、発話中での固有名の使用に関わる3つの要素―言語情報(意味論的・語用論的性質)、世界知識(個体の命名状況)、コンテクスト情報―の関わりについて考察を発展させた。また、固有名詞としての用法は本質的に直接指示(directly referential)であることを確認し、定冠詞句の指示用法(Donnellan, 1966)および指示詞(indexicals)との共通点を見出した。 2024年3月にシカゴ大学への訪問が実現し(当初予定の2022年秋から延期)、教授と集中的な議論を行うとともに、知の構造についての学際的なアプローチを行った学会(“Phronesis”)に参加した。論文や今後の研究に反映できる収穫を得た。 固有名に関わる基本として、referenceの概念を精緻化した。Fregeのsenseとreferenceについての古典的な議論を複数の根拠により批判し、McCawley (1998)の言語学的な洞察を発展させたもので、referenceにスペースと世界という2つのパラメターを導入した。空名問題など固有名の主要課題への鍵となる。2024年6月に国際学会(Pragmasophia 2024)で発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は概ね計画通りに行っているが、主に以下の理由により成果発表などが遅れている:1) トピック#1は、哲学的な考察が奥深く、どこまで踏み込んで(どこで区切りをつけて)論文にまとめるかの判断が重要、2) トピック#2は、研究課題の「哲学と言語学の有機的な結合」の前提として、長い歴史を持つ固有名の研究についてさまざまな角度から慎重に考察を重ねている、3) 論文執筆や研究にとって重要な位置づけにあったシカゴ大学訪問の時期が、当初の予定より1年半遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き2種類のケーススタディ、#1(「本当の」に関するもの)と#2(固有名)に重点を置き、また最終年度のため成果発表を意識して進める。#1と#2について、内容を厳選した論文執筆(各1本)、#2については更に、2024年6月の学会発表に基づいた論文執筆を計画している(いずれも国際誌への投稿)。
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