研究課題/領域番号 |
22K18469
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
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研究分担者 |
中村 唯史 京都大学, 文学研究科, 教授 (20250962)
Grecko Valerij 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (50437456)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ポスト単一言語主義状況 / 多言語主義 / ドイツ語圏現代文学 / ロシア語圏現代文学 / 他者性 / エスペラント / 越境文学 |
研究開始時の研究の概要 |
グローバル化によって世界の言語状況は劇的に変化し、国民国家の思想が高揚した18世紀以降支配的だった単一言語主義状況に代わって「ポスト単一言語主義状況」が出現した。文学研究では社会のこの質的転換がまだ十分に考慮されていない。本研究は、言語・文化・政治の複雑に絡み合った問題が先鋭的に現れている中東欧地域(特にドイツ語圏とロシア語圏)に注目し、現代社会に出現した新しい言語状況を、文学作品を通して考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は現代文学をグローバル化時代の「ポスト単一言語主義状況」に位置づけた上で、文学作品に見られる多言語性の類型と美的原理、およびその美的機能について明らかにすることを目的とする。 2023年度は主に「越境文学(エクソフォニー文学)」について考察した。越境文学の作家たちは複数言語の使い手なので、言語そのもの、あるいは言語間の緊張関係が関心の対象となるため、その文体にメタ言語的な特徴がある。たとえば、作家がロシア語母語話者の場合、ロシア語のある単語と発音はよく似ているが意味の異なる外国語を使ったり、ロシア語の文を外国語の語順で表現するといった手法が見られる。9月にそのような越境文学の担い手である詩人ダニエル・ユリエフ(ロシア語とドイツ語のバイリンガル)を神戸に招き、ヘンリーケ・シュタール教授(トリーア大学)をコメンテーターとして朗読会を開催した。また、ソ連のような多民族国家における民族語と共通語の関係についても考察し、人工言語であるエスペラントがソ連でどのような役割を果たしたかについて、8月にイギリスで開催された国際会議で研究発表した。2024年3月には望月哲男名誉教授(北海道大学)、亀田真澄講師(中京大学)、古宮路子助教(東京大学)の協力を得て、ワークショップ「異文化コミュニケーションの現在地―バフチンの〈対話〉を手掛かりに」を神戸で開催し、エクソフォニー作家が創作に用いる言語の「他者性」について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、ロシアでの資料収集はウクライナへの軍事侵攻が続いている状況を考慮して中止にせざるを得なかったが、入手済みの資料やweb上のデータベース等で公開されている資料などを使って、ほぼ計画通りに研究を行うことができた。研究の成果はワークショップや国際会議等で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
多和田葉子に代表されるエクソフォニー作家や、モスクワ・コンセプチュアリズムの詩人、ロシア・ポストモダン文学の作家の作品を具体的な分析対象として、①類型論的アプローチ、②構造論的アプローチ、③比較文学的アプローチの3つの観点から考察する。また、インターネット等のメディアが多言語文学に与える影響についても考察する。 プロジェクト・メンバー間の情報の共有と意見交換のために、対面またはオンラインで定期的に研究会を開催する。ウクライナ戦争の状況を注視しつつ、海外渡航が可能であれば、メンバー全員が各担当地域を訪問し、資料収集・調査、研究打ち合わせを行う。海外での調査と、学際的な視点を必要とする分析・考察においては、各メンバーが有する国際的な研究者ネットワークのサポートを得る。海外の研究協力者を招聘し、研究会を開催する。ロシアの「越境文学」に関してまとめた論考を『ロシア文学大事典』(勉誠出版、出版準備中)に寄稿する。その他の研究成果は国内外の学会や国際シンポジウム等で報告し、論文にまとめる。
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