研究課題/領域番号 |
22K18479
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河内 一博 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (00530891)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 言語学 / 言語類型論 / ダイクシス / 意味論 / 語用論 |
研究開始時の研究の概要 |
文脈により指示対象が異なってくるダイクシスには、主要なタイプとして、空間ダイクシス、人称ダイクシス、時間ダイクシスがある。従来の研究とは異なり、本研究では、「ダイクシスの中心の領域」、「空想上のダイクシス」、「共感」の観点から3つのタイプのダイクシスの包括的研究を行う。特にダイクシス関する興味深い現象が見られるクプサビニィ語 (ナイル語族;ウガンダ) とシダーマ語 (クシ語族; エチオピア) のデータを扱う。
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研究実績の概要 |
・論文執筆:空間表現の本のチャプターとして、Kupsapiiny語のデータを使って方向ダイクシスの一般原理を提案する論文を執筆・投稿し、査読審査を受けている。本研究から発展した論文として、Kupsapiinyの名詞の形式についての論文を『言語研究』に発表した。さらに、Sidaama語の文法の記述をThe Oxford Handbook of Ethiopian Languagesに出版した。また、使役・因果関係に関する2本の論文を国際査読ジャーナルに投稿し、査読審査を受けている。
・学会発表:2022年11月にNeglected Aspects of Motion-Event Description 2022: Deixis and Other Topics in Motion-Event Descriptionという移動表現、特にダイクシスに焦点を当てた国際学会で、2本の発表を行った。一つは、Kupsapiiny語の二つのassociated motionの構文が複数の動詞を使う構文からどのように歴史的に発展したかについての仮説を立て、Guillaumeらの含意的階層(そして一般に、通言語的含意的階層)に文法化の度合いの違う構文を置いて比較することはできるかという問題を扱った論文である。もう一つはIkuko Matsuse氏との共同発表で、Kupsapiiny語とKathmandu Newar語が国立国語研究所の通言語的ビデオ実験でテストした言語の中で方向ダイクシスを最も頻繁に言及した言語である理由に関する論文である。他にも本研究から発展した内容の学会発表を行った。この学会での参加者からのコメント等を参考にして、これらの論文の執筆を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間ダイクシス(とりわけ方向ダイクシス)に関する深い研究を進めることができた。それに比べて、人称ダイクシス、時間ダイクシス、他のタイプのダイクシスの研究が遅れている。 2020年3月からコロナ禍で(エチオピアに関しては内戦の影響もあり)フィールドワークを行うことができなかったものの、オンラインでKupsapiiny語とSidaama語のデータを頻繁に採ることが習慣になった。ただオンラインで採れるデータには限界があるが、2023年2月から3月にウガンダにおいてKupsapiiny語のフィールドワークを行い、能率的にデータを収集することができた。Sidaama語に関しては、フィールドワークを行うことができていない。
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今後の研究の推進方策 |
査読審査を受けている本のチャプターおよび国際査読ジャーナルに投稿した論文の査読結果を受けて、修正をすることになることが予想される。 2023年5月に日本アフリカ学会第60回学術大会でGrammaticalization of deictic-directional verbs into prior associated motion proclitics in Kupsapiiny: An investigation from a typological perspectiveと題する論文を発表する。この発表では、文法化の程度の違いにより形式がやや異なるprior associated motionの構文を他の言語のprior associated motionの構文と比較する。 2022年11月に国際学会Neglected Aspects of Motion-Event Description 2022で発表した2本の論文を、2023年7月に本のチャプターとして投稿する。 空間ダイクシスの中でも方向ダイクシスの研究に時間がかかり、他の空間ダイクシス、空間以外のダイクシスの研究を進めることができていないことは、今後の課題になっている。
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