研究課題/領域番号 |
22K18486
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西内 巧 金沢大学, 疾患モデル総合研究センター, 准教授 (20334790)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | パレオプロテオミクス / 植物遺存体 / 種子 / 土器付着物 / プロテオミクス / 植物遺体 |
研究開始時の研究の概要 |
植物遺体や土器付着物から検出された残存タンパク質には、植物グロブリンやグリシニン等のCupinファミリータンパク質が高頻度に見られることを明らかにしている。本研究では、出土地域や年代が異なり、また多様な植物遺体や土器付着物等の多数の出土試料を用いてタンパク質分析を行うことで、エビデンスを積み重ね、植物を含む考古学試料におけるCupinファミリータンパク質の残存性と普遍性を明らかにし、植物パレオプロテオミクスに有用な基盤データを確立する。
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研究実績の概要 |
本年度は、弥生時代を中心に地域の異なる8遺跡で出土した炭化米について、残存タンパク質の分析を行った。炭化米等の植物遺体中のタンパク質の残存状況は、試料によって大きく差異があることから、各遺跡から多数の試料を用いて、それぞれ独立して分析を行った。その結果、全ての遺跡からイネに特異的なタンパク質を検出することができたが、Cupinファミリーに属するタンパク質が検出されなかった試料も複数見られた。また、ジャポニカ種に特異的なアミノ酸配列が検出された試料も見られたことから、タンパク質の残存状況によっては、ジャポニカ種とインディカ種を判別可能であることが分かった。一方、約1400年前の炭化コムギ種子についても10点以上について分析を行ったが、いずれの試料においてもコムギに特異的なタンパク質を検出することはできなかった。 出土土器の炭化付着物の残存タンパク質の分析についても、植物由来のタンパク質に着目して分析を行った。他の試料で既に検出されていたイネやダイズ属由来のCupinファミリータンパク質と同じタンパク質が検出される試料が多かった。一方で、縄文時代の遺跡の土器付着物から、クルミ属のCupinファミリーに属するグロブリンタンパク質を検出することができた。オニグルミである可能性が示唆されるが、オニグルミのタンパク質のデータベースが整備されていないため特定には至らなかった。今後、データベースの整備は課題となるが、これまでの穀物と豆類のCupinタンパク質に加えて、堅果類のCupinタンパク質を検出できたことは大きな成果であり、今後も同様に解析を進めることで、Cupinファミリータンパク質に着目した植物パレオプロテオミクスの研究基盤の確立を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物遺体の残存タンパク質の分析では、8つの異なる遺跡から出土した炭化米からいずれもイネ特異的なタンパク質を検出しており、また、土器の炭化付着物の残存タンパク質の分析からは、イネやダイズ属のCupinファミリータンパク質の検出の再現性を確認している。加えて、縄文時代の遺跡からクルミ属のCupinファミリータンパク質に属するグロブリンタンパク質を検出していることから、今後も同様に解析を進めることで、考古試料におけるCupinファミリータンパク質に着目した植物種同定の研究基盤を確立できると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
植物遺体については、穀物のみの分析となっているため、他の植物種の炭化種子についても可能な限り取り組みたい。出土土器の炭化付着物についても、同じ遺跡から出土している植物遺体等の情報等も参考にして、Cupinファミリータンパク質等の植物由来のタンパク質の検出を試みる。残存タンパク質の分析は、破壊分析となるため、試料の入手が困難な部分もあるが、関連学会や専門誌を活用して研究協力者を幅広く募りたい。
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