研究課題/領域番号 |
22K18490
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
毛利 聡 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80754415)
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研究分担者 |
渡部 昌弘 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30706651)
牧野 雅司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10754301)
光井 周平 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (70612026)
上寺 哲也 呉工業高等専門学校, 機械工学分野, 准教授 (10342552)
堀江 潔 佐世保工業高等専門学校, 基幹教育科, 教授 (20390536)
真部 広紀 佐世保工業高等専門学校, 基幹教育科, 准教授 (10249881)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 近現代考古学 / 戦争遺跡 / 工学 / 先端測量技術 / 文化遺産保護 / トンネル / 無人探査機 / 惑星探査 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,戦争遺跡の調査,保存,活用という課題に対して,戦争遺跡をテストフィールドとして捉え,先端測量技術の開発・実践と組み合わせて解決を目指すものである。具体的には,崩落の危険のある施設や狭隘な所の測量を可能とするロボット計測装置の開発,測量データを基にした構造物のモデル化と構造解析による劣化調査や構造安定性の評価手法の開発と実証を,旧軍港都市に残る遺構を対象に行う。そして,遺構の実像の解明に加えて先端測量技術の高度化・効率化や遺構の保護のための技術開発に資する成果を得ることを目標とする。このように戦争遺跡に対して,保護に加えて,現代の理工学的な課題解決の場という新たな利活用に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本年度調査した遺構を以下に示す。 ・横須賀:千代ケ崎砲台跡,野島掩体壕跡,・呉:旧呉海軍工廠造機部庁舎,同造船部庁舎,同造船船渠,・佐世保:無窮洞・舞鶴:蛇島ガソリン庫跡,第三海軍火薬廠跡 以下に,特筆すべき調査結果について述べる。 昨年度に引き続き,無人機による惑星探査のための技術要件の抽出・整理を目的に無人機の設計開発を行う技術者(堀井樹氏(合同会社AeroFlex))が試作したUAV,UGVによる調査を行った。さらに,無人機複数台を連携したシステムによる探査実験を行った。例えば,千代ケ崎砲台跡の榴弾砲砲座跡が地下の高塁道によって繋がっている構造は,惑星地表の縦孔およびそれに接続されている地下空洞を模擬することができる。このように戦争遺跡をテストフィールドとしてより高度な実験と技術開発を進めることができた。 また,第三海軍火薬廠砲炸薬成形工場跡を対象にLiDAR(携帯式,可搬式,固定式),とUAVといった異なる計測装置で3次元計測を行う実験を行った。その結果,データの使用用途によって計測手法・計測機器を使い分けることで調査コストやデータの管理・保管に関するコストの最適化を図ることが可能であることが明らかとなった。加えて,当然ではあるが現状の遺構のデジタルアーカイブ化に資するデータを所得することができた。 取得した3次元モデルを用いた遺構の構造解析に関しては,その前段階として2次元的な実測の結果をもとにした構造解析を,野島掩体壕跡を対象に行った。解析では,トンネル工学の研究者(岡崎泰幸氏(広島工業大学))の協力を得て,遺構の実測結果と当時の施工に関する史料をもとにトンネルの掘削を再現し,覆工コンクリートに生じる応力の分布を数値解析することで覆工コンクリートの圧縮応力,引張応力が大きくなる部分を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺構の所有・管理者の許諾の関係で当初予定していた呉鎮守府戦斗指揮所,佐世保鎮守府防空指揮所,東山防空指揮所の3遺構の相互比較を目的とした調査は実施できなかった。一方で,戦争遺跡の3次元計測に関するノウハウを有しているロボット工学(冨沢哲雄氏(東京高専)),考古学(鈴木慎也氏(東京高専))の協力を得ることができ,3次元計測手法の比較実験を行うことができた。 研究成果の発表については,査読付き論文1件を発表することができた。他に学会発表,紀要論文の発表に加えて,昨年度に引き続き「旧軍港四市鎮守府日本遺産シンポジウム」(2023年12月3日,於横須賀市内)を開催し,研究成果の市民への公表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も引き続き上記都市の遺構を中心に調査を進める。中でも,第三海軍火薬廠砲炸薬成形工場跡は,遺構を覆っていた樹木が大幅に伐採されたことによりこれまで以上に調査をしやすくなり,上記のような調査も実現したが,日射や風雨に直接晒される部分が増えたことによる劣化の加速が危惧されている。また,青山クラブ(呉市)は,呉市が活用方法の検討を始めている。しかし,耐震対策に多額の費用を要するため,検討結果によっては一部または全体の取り壊しや大幅な改変の可能性がある。これらのように,存続が危ぶまれる戦争遺跡に対しては優先的に調査を行うこととする。 一方,先端測量技術開発に関しては,戦争遺跡のテストフィールド化は一定程度確立できたので,研究分担者以外の研究者,技術者による使用を模索する。また,当初の目標であった取得した3次元モデルによる構造解析は,インフラ構造物において点群データをもとに構造解析を行う技術開発がSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「スマートインフラマネジメントシステムの構築」において進められている情報を得た。すなわち,LiDAR等で取得した3次元モデルを構造解析可能なモデルへの変換とその解析に関する技術開発は高度なものであり,本研究期間内での目標達成は困難である可能性が出てきた。そのため,引き続き情報収集を進め,解析実現の可能性を探る。
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