研究課題/領域番号 |
22K18492
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
和田 浩 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 課長 (60332136)
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研究分担者 |
小椋 大輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60283868)
松井 敏也 筑波大学, 芸術系, 教授 (60306074)
脇谷 草一郎 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (80416411)
水谷 悦子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 研究員 (90849796)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 壁画 / 法隆寺 / 壁体 / 吸放湿 / 世界遺産 / 保存科学 / 火災 / 焼損 / 保存環境 |
研究開始時の研究の概要 |
古代寺院の建物に配置された壁画は異なる土を使った層状構造を持つ壁体に描かれる。壁体は本来各層の土質の組み合わせによって環境の変化にともなう影響を緩和する能力を備えている。しかし、火災による焼損が生じると各層が変質し、製作当初とは異質の状態となる。焼損した壁画を安全に保管するためには保存環境を整備しなければならないが、そのためには、焼損後の壁体を定性せねばならない。こうした課題の解決には、壁体の層状構造が本来持っていた能力が、経年劣化、焼損、修理、およびその後の劣化という過程でどう変化するのかを把握する必要があると考えている。本研究では模擬壁体による実験を行い、壁画の物理モデル化を目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は、「法隆寺金堂壁画収蔵庫内環境のモニタリング」、「法隆寺金堂壁画限定公開に対する環境調整等に関する検討」、「壁画の物理的特性を把握するための実験サンプル(模擬土壁)作成」について、調査・検討を行った。また、継続的に金堂壁画収蔵庫に設置した温湿度・二酸化炭素濃度データロガー及び古材収納庫の温湿度のモニタリングを実施した。 2023年度の法隆寺金堂壁画収蔵庫の限定公開に際して、壁画の劣化に関わる保存環境上の問題点の把握および劣化メカニズムの解明、将来の保存・公開を目指すうえでの建築的・設備的な改修に利用可能な知見の蓄積を目的に、収蔵庫内の生物調査、温湿度環境調査、コンピューターシミュレーションを活用した調査時、限定公開時の運用方法の提案などを行った。その結果、公開時期は、令和3年度、4年度と同様の11月とした場合に、公開時の1日の観覧者の人数を過去2回の50人/日から、80人/日とすることで公開可能と判断されることを確認した。 法隆寺金堂収蔵庫の壁画の保存・公開を考えた場合に、壁画の物理的特性を把握した適切な環境条件を明らかにすることを目的としてこれまでの土壁に関する調査結果、文献値と現地での目視観察結果を元に模擬壁体の作成を行った。模擬土壁は、内部に温湿度センサーやひずみ計測が可能な仕様となっている。 小椋は「遺跡や歴史的建物等における文化財の保存のための環境制御に関する一連の研究」が評価され、日本建築学会賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実存する法隆寺金堂壁画を保管する収蔵庫の数理モデルを用いたシミュレーションから、限定公開時の公開状況を定める等、本研究課題の成果物を有効活用した実際の壁画公開を実現できた。また、計画していた模擬壁体の製作を順調に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
周囲の温湿度条件を変化させた場合の変形挙動を明らかにすることで、劣化防止のための温湿度条件に関する実験室実験に加えて、模擬壁体を収蔵庫に置いて計測を行うことで、環境変化が壁画に及ぼす影響を部分的に推定できると考えられる。模擬土壁の火災損傷や損傷後の補修を踏まえた検討も必要である。以上の内容について研究を進める。
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