研究課題/領域番号 |
22K18493
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
石村 智 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 部長 (60435906)
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研究分担者 |
清水 信宏 北海学園大学, 工学部, 准教授 (60892304)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 無形文化遺産 / リビングヘリテージ / スーダン / 武力紛争 / ポストコンフリクト / 文化遺産 / 文化多様性 / 平和構築 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ポストコンフリクト国において、文化遺産が文化多様性の保護および促進に貢献し、平和構築に資するものとなる可能性を探るものである。具体的には、長年にわたって内戦と政情不安にあったが、現在国の復興が進められているスーダンを対象に、現地調査を実施し、「生きている遺産」と呼ばれるリビングヘリテージの存在が、コミュニティの文化的資源としてどのように関連し活用されているかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、2023年5月15日~20日に、カウンターパートであるスーダン国立民族学博物館のAmani Noureldaim館長、Elnzeer Tirab副館長を日本に招へいし、研究交流を実施するとともに、東京文化財研究所とスーダン国立民族学博物館の間で共同研究の覚書を交わす予定であった。しかし4月15日に発生した、スーダン国軍と準軍事組織RSFの武力衝突によりスーダン全土が武力紛争下におちいるという事態になったため、招へい事業は延期を余儀なくされた。 この事態の変化は、本事業の今後の進め方を大きく変更させるものであったため、本事業の継続か中止かをメンバー間で話し合ったが、「武力紛争下における文化遺産保護」というテーマにシフトした上で、本事業を継続することとした。 今後の方針を定めるべく、私たちは8月14日に大英博物館を訪れ、スーダン文化遺産研究の権威であるJulie Anderson博士、およびスーダンの文化遺産保護のプロジェクト「Safeguarding Sudan’s Living Heritage (SSLH)」のリーダーであるMichael Mallinson氏・Helen Mallinson博士と面談し、情報交換を行った。その上で、武力紛争下にあるスーダンの文化遺産保護に係る事業を共同で進めることに合意し、東京文化財研究所とSSLHプロジェクトの間で共同研究の覚書を締結した。9月10日~13日にかけては、エジプトのカイロで開催されたユネスコの会議「緊急事態下にあるスーダンのリビングヘリテージ保護のための専門家会議」に出席し、本事業の概要を説明するとともに、スーダンの文化遺産に関わる国際的専門家、およびエジプトに避難してきたスーダン人専門家と意見交換を交わした。 現地カウンターパートともオンラインを通じて連絡を取り合い、研究交流を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度の初めに現地スーダンで武力衝突が起こり、現地カウンターパートとの研究交流や現地調査を実施することが出来なくなったのは大きな痛手であった。しかし現地が武力紛争下という状況になったことで、本研究課題のテーマの重要性はより高まったと考える。 現地カウンターパートとはオンラインで連絡を取り合いつつ研究を進めることが出来たので、この困難な状況においては最大限の成果を上げることが出来たと考える。また英国など海外の専門家とも協力関係を構築することが出来たので、当初想定していたよりも研究を国際的に広く展開することが出来た。 また学会や研究会での発表、論文の公刊等を通じて、その成果の発信を順調に進めることが出来た。 こうしたことから本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2024年度が最終年度となるため、これまで三か年の成果を取りまとめるとともに、その発表を行う。具体的には、5月28日・29日に国内外に退避しているスーダン人専門家およびスーダン文化遺産の国際的専門家を招いてオンライン・ワークショップを開催する。また9月10日~13日にドイツのミュンスターで開催されるメロエ学学会にて研究発表を行う。さらに8月には単行本『スーダンの未来を想う:革命と政変と軍事衝突の目撃者たち』(明石書店)を刊行予定である。 スーダン現地の治安状況は依然、予断を許さないため、現地調査は断念せざるを得ない。しかしカウンターパートとは引き続き連絡を取り合いながら、研究交流を継続する予定である。 以上の方針に基づいて本研究課題の事業を継続し、十分な成果を上げることが出来るよう努力する。
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