研究課題/領域番号 |
22K18501
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
堀江 典生 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (50302245)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 反移民感情 / ランドスケープ / 境界 / Gated community / ロシア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,ロシアにおいて移民が空間の中心的な主体となって運営されている市場(いちば)が,閉ざされたコミュニティ空間として市民によって異質な空間と認識されていることに着目し,移民のランドスケープから移民と市民との間の境界がどのように維持され,反移民感情の発露がその境界でどのように発生しているのか,また,移民と市民の境界がどのように解消されうるのか,ロシアの東西主要都市の市場(いちば)の比較から明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は,移民が中心となって運営している市場(いちば)が,フェンスなど物理的な境界をもち,日常生活において市民が買い物のために入場し移民と交流をもたらす場であるとともに,移民が形成する閉ざされたコミュニティとして市民によって異質な空間と認識されていることに着目し,市場(いちば)における移民のランドスケープから,移民と市民との間の境界がどのように維持され,反移民感情の発露がその境界内部および周辺でどのように発生し,また,移民と市民の境界がどのように解消されうるのか,ロシアの東西主要都市の市場(いちば)の比較から明らかにする。 本年度の研究実績は,A. Iwashita, Y. Ha and E. Boyle eds., Geo-Politics in Northeast Asia, London: Routledgeに所収された研究成果Chinese Land Deals and Migration in the Russian Far Eastが刊行されたことである。この研究成果は,ロシア極東地域において根強く議論される中国脅威論に関わり,中露国境地域のステークホルダーに着目し,外国人による大規模な土地利用は農地所有者にとって歓迎されるものの,行政的にはレントシーキングの対象となっているために,難しく状態であること,大規模農地を必要とする大豆生産では大量の労働力を必要としないために大量の中国人労働者の流入を引き起こしているわけではないこと,などから,中国人による土地取引が問題ではなく,農地が規制を求め実行するステークホルダーの地域資源となりやすいことから生じている問題であることを明らかにしている。また,本年度は,関連する研究成果の報告を,国内学会3回,招待講演会2回,国際学会1回(オンライン)により実施し,研究成果の発表とフィードバックに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロシアのウクライナ侵攻に伴い,ロシア科学アカデミー人口学研究所やロシア科学アカデミー極東支部部諸民族歴史・考古学・民俗学研究所との研究連携が十分に機能しなくなっている。欧州の研究機関もロシアとの研究連携に否定的な姿勢を示すなか,ロシア在住の研究者や在外ロシア人研究者との研究連携が十分に機能しなかった点は,当初想定していなかった事態であった。それゆえ,現地調査の実施は行うことができかなったが,それにもかかわらず,これまでの調査結果をもとに本研究課題を代表する研究成果を公表できたことは,本研究がおおむね順調に進展していると評価する理由である。また,現在,国際誌への投稿準備を進めている論文もあり,概ね順調に研究成果を発信できる状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアのウクライナ侵攻に伴う研究環境の悪化を前提としながらも,ロシア科学アカデミー人口学研究所やロシア科学アカデミー極東支部部諸民族歴史・考古学・民俗学研究所との研究連携を維持しつつ,市場(いちば)における意味音のランドスケープを丁寧に描く研究を進め,研究成果の発出に努めるとともに,その成果の海外学会での発表を企画し,フィードバックを受けつつ,研究を進めていく予定である。また,人間文化研究機構によるネットワーク型基幹研究プロジェクト「地域研究推進事業」における「東ユーラシア研究」において北海道大学拠点が進める「越境とジェンダー」をテーマとしたプロジェクトに参画することで,相乗効果のある研究を進めていく予定である。また,状況が好転した場合は,速やかに現地調査を再開する予定である。
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