研究課題/領域番号 |
22K18511
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
水内 俊雄 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 客員教授 (60181880)
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研究分担者 |
コルナトウスキ ヒェラルド 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (00614835)
筒井 由起乃 追手門学院大学, 国際教養学部, 教授 (10368186)
垣田 裕介 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (20381030)
武岡 暢 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90783374)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | モバイルな就労 / モバイルな居住 / 生活困窮自立支援 / 就労による包摂 / セーフティネット |
研究開始時の研究の概要 |
コロナ禍は、暫定的で不安定居住にある暫居や共居を介し雇用先も変わるモバイルな就労と居住のセットを皮肉にも炙り出した。このセットは派遣業で先行し、「就労による包摂」というコンセプトによるセーフティネット(SF)が、生活困窮自立SFと連携しながら機能するという仮説の検証が主課題である。(1)モバイルな就労と居住のセットのSF的中身,(2)政策が意図しない自立的SFの形成と政策的SFとの連携、(3)それを支える居住様態としての暫居・共居の可能性の追究を行う。否定的に取られ勝ちなこのセットをSFとして捉え直し、その効用を明らかにする。生活困窮自立支援との連携を通じたSFの多層化の達成の試みでもある。
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研究実績の概要 |
(1)モバイルな就労と居住のセットのセーフティネット(SF)的中身,(2)政策が意図しない自立的SFの形成と政策的SFとの連携、(3)それを支える居住様態としての暫居・共居の可能性の追究を3本柱とし、否定的に取られ勝ちなこのセットをSFとして捉え直し、その効用を明らかにしてきた。 初年度に(2)-dとして、外国人労働者の就労と居住に関する調査が追加され、昨年度はこの(2)-dに最も多くの時間が割かれた。代表の水内を中心に、大阪市西成区の西成労働福祉センターやNPO日越支援会(ベトナム人)、インドネシア人材会社のCONVI社の協力を得て、SFの使われ方、SFが効かなかった事例などを、定期的なヒアリングを通じて明らかにした。在留資格で特定技能では登録支援機関が、留学では日本語学校が支援の役割を担っており、一方、技人国や永住では、生活困窮などの制度は使えるが、そうした支援制度へのアクセスが見いだせずに、日越支援会などが使われ、特にベトナム人について支援マニュアルとそのデータベース化が着手された。 また分担者のコルナトウスキを中心に、福岡の吉塚や横浜の伊勢佐木町での東南アジアを中心とする外国人の居場所や新しいSF構築の取り組みの調査も進んだ。その過程において(3)の観点の居住キャリアに特化したヒアリングも行った。いずれの成果も、空間・社会・地理思想27号の特集1で明らかにした。 (1)については、和歌山県のみかん、梅農家を対象にしたモバイルな労働者の実態を、(2)-b:派遣業による社員寮での就労の実態、および生活困窮自立支援の窓口からみた派遣業の利用実態の分析については、この方面で派遣会社の進出が多くみられ、そこへのヒアリング、そして(2)-c:盛り場を拠点とする生活娯楽風俗産業の労働者及び経営者に関する分析、については、大阪市中央区のフィリピンパブでのヒアリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 調査メンバー的には、(2)-d:外国人労働者を中心とする調査分析が主力となったが、これについては、代表の水内、分担のコルナトウスキ、筒井、研究協力者の船岡、本多、ゴック、古川、朱、陸の連携のもとに、西成区のベトナム人集住を背景に、そこで活動をするNPO日越支援会に入ってくる情報を整理、利用し始めた。インドネシアについてはCONVI社で支援員への定期的ヒアリングを行い、前者については、船岡と古川が暫定レポートをまとめている。福岡の吉塚では、いくつかの連携フォーラムにおいて連続的に参加し、吉塚、山王の商店街再生も絡めた外国人の力を利用した地域づくり企画を進めている。前者は日本の在来仏教とミャンマー仏教徒の交流による吉塚御堂の設置、後者では中国人の信仰施設、大阪関帝廟などが核となる感じはしており、継続的な現地調査を繰り返している。インドネシアのモスクについては、来年度により深い調査を行う。 (1)-a:第一次産業の季節労働者を中心とする就労と居住の実態調査については、水内が中心となって新たな研究協力者として建築学の西野とともに進めた。昨年度はモバイルな居住者として和歌山県の梅農家、みかん農家を対象にヒアリンク調査を行った。(2)については、(2)-b:派遣業による社員寮での就労の実態、および生活困窮自立支援の窓口からみた派遣業の利用実態の分析は、垣田が中心となった。東海地方で有力な生活困窮者自立支援事業をいくつか受託する派遣会社に出会い、今年度は継続的にさらに調査する足掛かりを作った。そして(2)-c:盛り場を拠点とする飲食娯楽風俗産業の労働者及び経営者に関する分析、については武岡と協力者の松尾が中心となった。松尾は大阪市中央区のフィリピンパプでの従業員のヒアリングを行った。これも学会発表につながっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたるが、特に(2)-dの外国人調査は、さらに次の挑戦的萌芽研究につなぐ調査の流れを作ることになる。昨年度にも足掛かりをつくるだめにインドネシアのバンドンを訪問したが、発地国での求職者のニーズや送り出し機関のサービスなどの調査をインドネシアに加え、ベトナムでも予定する。 国内調査については、福本、松尾、コルナトウスキ科研とも連動させる。福本とはべトナムの送り出し機関での求職者と機関へのアンケート及びヒアリング調査を行う。また日本での技能実習生、特定技能層の居住キャリアのアンケートとヒアリングを行う。松尾とは、NPO日越支援会での支援DB分析と個別ヒアリングを行う。またNPOの代表が僧侶であり、ベトナム寺院のもつSFとしての役割について、個別支援事例も含めてヒアリングとDB化を進める。西成区にあるインドネシア寺院は余力があればヒアリングに取り組む。なお、大阪においては外国人キャリア形成、人材開発をはかるために、職業訓練関連機関と連携し個別に対応し、その結果を分析対象としていく。コルナトウスキとは、吉塚での外国人人材雇用プラットフォームの機能の追跡を行い、あわせて大阪では飛田本通り商店街をベースに、西成労働福祉センターや日越支援会、そして地元組織などと連携したプラットフォームの形成の準備にあたる。狙いは社会的脆弱層の集住する地域で、外国人の若さ、就労が生み出す生活力などを利用したインナーシティ再生である。特に人材プラットフォームの形成は、日本人の脆弱な求職層にも使える労働市場にとりあえずは戻してゆくことにつながる。これは生活困窮者自立支援の就労支援も活性化し、そのシステムの更新をねらっている。ハウジングについても競合する部分がある。衣食住の中で共居やシェアで過ごす部分も多いので、実態調査も踏まえて、適切なモデルハウジングのような提案も行っていく予定である。
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