研究課題/領域番号 |
22K18521
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分6:政治学およびその関連分野
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
善教 将大 関西学院大学, 法学部, 教授 (50625085)
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研究分担者 |
秦 正樹 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (10792567)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 選挙啓発 / フィールド実験 / 一票の価値 / 投票参加 / 投票率 / 芦屋市 / 効果検証 / 無作為化比較試験 / サーベイ実験 / 投票啓発 |
研究開始時の研究の概要 |
どのような選挙啓発が投票率を向上させるのか。本研究はオンライン上で行うサーベイ実験と、芦屋市の全世帯を対象とする大規模フィールド実験を組み合わせるというこれまでにないアプローチによって、この疑問にこたえる。あわせて、これまで十分に検討されてこなかった選挙に「関わらない」情報の効果を検証することで、既存理論の発展にも貢献する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、当初の予定通り、芦屋市を対象に、選挙啓発メッセージの効果検証を目的とする大規模フィールド実験を実施した。具体的には、1)芦屋市の中で50の町を抽出した上で、2)投票率が近いと予測される25組のペアを作成し、3)ペアごとに処置と統制を無作為に割り付けた上で、4)兵庫県議選終了後に、処置群に居住しているほぼ全ての世帯に処置用(pivotal argument)の葉書を、統制群に居住している世帯に偽薬となる葉書を送付した。また、ミクロレベルの分析を行うことを目的に、芦屋市長選後に無作為に抽出した1500人を対象とする意識調査も実施した。
大規模フィールド実験を通じた平均処置効果の期待値とその誤差の推定、及び葉書の認知度など、全ての分析は既に終了している。本研究では、アウトカムベースのペア内無作為配分を行なっているため、通常の完全無作為配分よりも、かなり効率的に平均処置効果を推定できているという結果が得られた。また、意識調査の分析を通じて、GOTV研究におけるnull resultsの生成メカニズムについて、より詳細な知見を得ることができた。
具体的な、主な知見は以下の通りである。第1に、pivotal argument(=「数票差で選挙結果が変わることを伝える」)が投票率に与える影響は、それほど大きくない。 10%水準でも統計的に有意ではなく、95%信頼区間の上限も1%を下回る。この結果は、投票率を上げるとしても、1%ポイント未満となる可能性が高いことを示唆する。加えて、意識調査を用いた分析でも、統計的に有意な処置効果を観測することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に申請していた計画どおり、芦屋市でフィールド実験を実施することができたため、「順調に進展している」ものと評価する。また、研究計画に明記していなかったが、選挙後に意識調査を実施することができた。これは、効果検証の結果から事後調査が必要と判断したことによるものだが、追加調査を行えた点も「順調に進展している」と判断した理由の一つである。
また、分析についてもその多くが既に終わっている。この点からも進展しているものと評価できる。
ただ、当初は、「町」ではなく「丁」単位で無作為配分することを予定していたものの、郵便局側の事情等により、町単位での無作為配分にせざるを得なかった。したがって「おおむね」と評価することにした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度までの研究成果を論文としてまとめつつ、学会や研究会で積極的に報告する。既に2024年度日本政治学会にて報告をエントリーしているが、公共選択学会や日本選挙学会(2025年度)にもエントリーし、多くのフィードバックを得られるように努める。
同時に、英語で研究成果を執筆し、国外の査読付学術雑誌に投稿する準備も進めていく。日本の事例ではあるが、pivotal argumentの効果検証を行う事例として最適である、事後的な意識調査の結果と実験結果を融合させる新しい枠組みである、などの利点を強調することで、より多くの研究者が目を通す学術雑誌への掲載を目指す。
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