研究課題/領域番号 |
22K18539
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川上 智子 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (10330169)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | イノベーション / IT技術 / 人工知能(AI) / 拡張現実(AR) / 国際比較 / 国の文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,最先端のIT技術であるAI・VR・ARツールを製品・サービスの開発に活用することによって、イノベーションの成果がどのように変化するか、成果が国や文化の違いによって異なるのかを国際的な実証研究を通じて明らかにすることである。日本と欧州の2か所を主な研究拠点とし、人口知能(AI)・仮想現実(VR)・拡張現実(AR)を中心に、これらのスマート技術やツールがイノベーションのプロセスにおいてデータ分析や意思決定にいかに活用され、イノベーション成果を高めるのか、その促進・阻害要因は何かといった研究課題に対し、定性的・定量的にアプローチし、実証的に解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,最先端技術であるAI・VR・ARツールのイノベーションプロセスにおける活用と成果の関係を解明することである。初年度の2022年度はJournal of Product Innovation Management(JPIM)を刊行するアメリカProduct Development Management Association, PDMA)が2020年に全世界の企業を対象に実施した第5次ベストプラクティス調査のデータを分析し、国の文化によるスマート技術の採用状況の違いを考察した。研究責任者の川上は2022年9月から約3か月間、同調査の統括責任者であるデンマークのコペンハーゲンビジネススクール(CBS)のMax von Zedtwitz教授より同大学に客員教授として招聘頂いたため、対面でコミュニケーションを取り、集中的に研究を進めた。デンマーク滞在中、同調査のもう1名の統括責任者であるオーデンセ大学のMette P. Knudsenk教授にもチームに参加頂き、3名で議論した。2022年11月30日にCBS、同12月1日にオーデンセ大学のワークショップで各1回、計2回の研究報告を行い、近接領域の研究者からフィードバックを得た。同年12月9日にはデータ収集に協力頂いた早稲田大学スマート社会技術融合研究機構のシンポジウムで研究成果の一部を発表した。これらの発表機会に得られたコメントを参考に論文を執筆し、International Product Development Management Conference(IPDMC)に投稿・採択された。本論文は2023年6月にイタリアのレッコで開催される同国際会議において発表する。予定である。2023年9月にアメリカのニューオーリンズで開催されるPDMAのResearch Forumにも投稿中であり、改訂版を発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書記載のとおり、2022年度に予定していたMax von Zedtwitz教授との共同研究およびデータ分析は順調に終了した。Max von Zedtwitz教授が独自に収集していた国の文化に関する3つの異なる研究に基づく指数とPDMAのデータを統合することで、極めて効率的かつ効果的に分析を進めることができた。その結果、3回のシンポジウム等での進捗報告を通じて専門家他から貴重なアドバイスを受け、データ分析開始から1年以内にフルペーパーの執筆を完了させ、国際学会にも採択されるという成果を挙げることができた。本研究の興味深い発見事項の1つとして、日本のような集団主義の国ではAI・VR・AR等の最新のITツールをイノベーションに活用することが難しいことが明らかになった。一方、2023年に入り、ChatGPTのような生成型AIが注目を浴びるようになり、海外では守秘や信憑性等の観点から導入に慎重であるのに対し、日本では一部の行政機関が部分的に導入を認める動きも見られる。今回、分析に使用したPDMAの調査は、こうした対話型・多言語処理のAIが普及する以前に行われたものである。また、AI以外のスマート技術についても、普及の初期段階に当たるため、VR・ARの分析結果もAIと大差ない結果となり、技術の違いによる差を認めることができなかった。そこで、2022年に予定していた追加調査の実施を遅らせ、技術の普及動向を見極めたうえで2023年度にあらためて調査を実施する方針に変更した。よって、当初の計画と異なる結果となっているが、現実の動きに適応し、より説得力のある分析結果を得るために必要な修正であったと考えている。以上のことから、2022年度については、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
PDMAのデータに関しては2022年度にフルペーパーを執筆したが、国際会議用のショート版であることから、追加的な考察と改訂が必要である。2023年6月IPDMC、9月PDMC(投稿中)といった国際会議でイノベーション研究者から最先端の研究動向を踏まえたフィードバックを受け、より広範で精緻な議論を展開し、トップ・ジャーナル投稿・採択の可能性を高めたい。2023年度に延期した追加的なデータ収集については、生成型AIを始め、スマート技術の進展と展開に関する世界的な動向を十分に理解したうえで調査設計を行い、年度内に実査を完了させる。申請段階の計画書では、最終年度の2024年度に大規模な追跡調査を行う予定であったため、その予算も視野に入れ、可能であれば日本のみならず、国際比較可能な形で、とりわけ国の文化による比較を念頭に置いた調査を実施したい。2023年6月のIPDMCにはMax von Zedtwitz教授・Mette P. Knudsenk教授も参加するため、現地で対面打合せを行い、今後2年間の研究計画について具体的な行動計画として合意する予定である。両教授が共著した本データを用いた総論的な分析結果は今年JPIMに刊行済みであり、次のステップとして本研究にも十分なエフォートを投入して頂ける状況にある。Knudsen, Mette Praest, von Zedtwitz, Max, Griffin, Abbie, and Barczak, Gloria (2023) Best practices in new product development and innovation: Results from PDMA's 2021 global Survey. Journal of Product Innovation Management, 40(3), 257-275.
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