研究課題/領域番号 |
22K18559
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 西武文理大学 |
研究代表者 |
遠藤 理一 西武文理大学, サービス経営学部, 講師 (70898139)
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研究分担者 |
佐久眞 沙也加 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (20906763)
富永 京子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70750008)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | クリティカル・ツーリズム / モビリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、ツーリズムが観光者や地域、政府組織や企業のいかなる政治性を浮き彫りにするのかを探るとともに、ツーリズム自体がポリティクスとしてのいかなる性格を持つのかを浮かび上がらせることにある。そのために観光学、地理学、社会学の視点より、1) 占領期・戦後期(1950-60年代)、2)沖縄返還以降(1970年代-)、3)東アジアにおけるツーリズム・モビリティ拡大期(2000年代-)における移動をめぐるポリティクスを検証・比較検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、異なる時期・場面におけるツーリズムにおけるツーリストの移動のプロセスにおける他者・他所、移動のための装置との相互作用について、観光がもつ非対称性を踏まえつつ比較検討することから、移動とポリティクスとの関係性を考察することである。 上述の研究に着手するうえで本年度は第一にPeter Adey、Tim Cresswellらによる研究を援用しつつ、分析概念としてのモビリティ概念の再構成の作業を行なった。 同時並行的に事例研究を進行させており、本年度は以下のような作業を行なった。①敗戦直後から朝鮮戦争期にかけての日本における、米軍による兵士向けレクリエーション、ツーリズム施策の調査を行った。②ウェブログから2010年代の中国から日本への観光客の、日本のマナーについての言説を分析し、日本での規範が交渉・反発ないしは積極的な賛意とともに受容されている多面的なコミュニケーション過程を分析した。 ③ 研究分担者である富永は、2000年代以降に盛り上がったとされる国際会議に対する抗議活動のためのツーリズムにおいて、その「前史」にあたるツーリズムが存在することを史料の渉猟とインタビューから知った。1970-2000年代のSummit Protestともいえる世界女性会議に向かう女性団体のツーリズムを、女性団体のミニコミ誌分析とSolo Female Tourism,All female-tourの先行研究の理論枠組みにより検討した。 ④ 研究分担者である佐久眞は、沖縄島北部の森林において世界自然遺産登録がどのように新たな「観光資源」の言説を構築しているのかを文献資料、参与観察、聞き取り調査から検討した。政治地理学という学問的分野において「記憶」という側面から場所の意味づけを検討する重要性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれが当該研究テーマに関わる事例研究を進めており、実質2022年8月からの研究期間のなかで計画通りの走り出しだと考えられる。2023年度、2024年度は調査分析と並行しつつ成果発信を心がける。 なおそれぞれの事例研究についての進捗は以下の通りである。①戦後ツーリズムに関しては、補足調査を残しつつも成果発信を進める段階に入っており、当該研究課題が大きく関わるかたちで改稿を進めている原稿の出版に向けた再構成作業を行なっている。 ② 研究分担者である富永は、国際会議に向かう女性たちのツーリズムに関する論文をFrontiers in Sustainable TourismとAnnal of Tourism Researchへと投稿した。思った以上に史料から検討できる要素が多く、また先行研究も豊富であることから二報の論文投稿が可能になった。現在Review Process中だが、今後の査読でどのような理論の貢献が可能かを見極めたい。 ③ 研究分担者である佐久眞は、2023年夏に現地で参与観察および聞き取り調査を行い、地域内において森林の世界自然遺産登録後に森林価値のみならず利用方法に関しても新たな議論が生じていることを確認した。2022年―2023年には森林の戦史や米軍によるジャングル戦闘訓練センターとしての利用をまとめ、また学会報告を行った。とくに『「政治」を地理学する』は研究分担者のこれまでの成果をまとめ、既に外部でも引用されている。森林という場所の記憶の変遷に着目することで、場所をめぐる政治や経済活動がもたらす観光活動への影響を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
それぞれに事例研究の蓄積があることから、今後はグループ発表などの機会により相互に知見を得るとともに、関連する分野の研究者との意見交換を経ながら研究の進展を図る。また理論的研究と並行しながら事例分析を進めることで、当初の課題に対してやや遠回りになりつつも、クリティカル・ツーリズムおよびモビリティ論における理論的視座の、とくに事例に適用可能な分析概念の発展に寄与する研究の推進を目指したい。 研究分担者である富永は、今後は社会運動論の知見と接合した上で、クリティカル・ツーリズムという「観光」と分担者がこれまで研究したソーシャル・ムーブメントという「活動」がどのような点で重なり、またどの様な点で理論的な貢献が相互に可能になるのかを考えるために、社会運動論の国際会議であるMobiilization Conference(2023年6月)にて報告、またOxford Brookes Universityにて招待公演を行い(2023年6月)、2023年8月までにMobilization誌にて論文投稿を行う予定である。 研究分担者である佐久眞は、観光学術学会にて共同パネル「社会的なものとしての移動を考える」で研究報告「沖縄県民大会ツアーにみる米軍基地反対運動と軍事化された空間の観光体験」を行う予定である。今後は、沖縄島北部やんばる地域における森林観光の事例をもとに、長らく交通が整備されず「陸の孤島」とも称された地域がいかにして第二次世界大戦・戦後を経て沖縄県内における森林観光の地となったのかをまとめ論文投稿を行う予定である。
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