研究課題/領域番号 |
22K18568
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
与謝野 有紀 関西大学, 社会学部, 教授 (00230673)
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研究分担者 |
林 直保子 関西大学, 社会学部, 教授 (00302654)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 潜在連合テスト / IAT / 社会調査法 / 社会調査 / 階層意識 / 測定手法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、社会階層研究などにおいて用いられてきた社会心理変数に対して調査測定法の新たな展開を企図する。すなわち、社会心理学分野で開発された潜在連合テスト(Implicit Association Test:IAT)と呼ばれる手法を社会学的調査研究に適用するための技術開発を行う。 さらに、既存の社会心理変数の測定結果とIATによる測定結果を比較することで、計量的階層研究における社会心理変数を用いたモデルの新規開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、潜在連合テストを社会調査に適用すること目的としているが、2022年度は当該の目的達成の前提として以下の4点を行った。 1)先行研究のレビュー、2)既存のIAT(PC利用)の特性の実証的検討、3)音声型IATという独自手法の展開、4)測定の自動入力の開発 1)についてはレビューをデータベースとして整理した。また、2)については学生対象に行ったデータについて、顕在指標との相関関係を検討し、性別などで関連が異なる可能性が示唆された。3)については音声型IATの音声作成を自動化するエクセルプログラムの開発で成果を得た。4)についてはPythonを用いて、音声型IATの回答を自動的に数値化し、紙の上での回答の正当数を画像処理することで、短時間でCSVファイルに転換することに成功している。 前述2については、IATの安定性の問題から引き続きの検討が必要となっているが、IAT独自のD指標の計算が毎回必要となる。このため、この研究上の要請にこたえる形で、PythonでのD指標計算プログラムの実装をおこなった。ちなみに、これまではD指標の計算にExcelの諸関数を利用していたが、新しいシステムは、より自由度が高く、その一方で、誤った数値を出す可能性がより低いシステムとなっている。また、4)については、紙の上での回答の機械による識別力は100%に極めて近い。また、画面上で自動識別のエラーを容易にチェックできるようになっており、事実上の二重チェックができるシステムとなっている。そのため、次年度以降の研究に対して極めて大きな寄与となることが想定される。 これら2)~4)については2022年度に購入したデスクトップPCを利用して実現が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度前半については、COVID-19の蔓延の実験実施への影響がいくぶん懸念されていたが、後半からは学生参加の実験実施についても可能となってきており、いくつかの実験を予定通り実施することができた。また、Pythonの利用については、これまで研究代表者がPythonに十分習熟しているとは言えなかったため、進捗に対して不確実性があることが懸念されたが、システム開発が予定通り順調に進展した。とくに、PythonのOpenCVを用いた自動入力システムの開発が年度内に実現したことが順調な進展の基礎となっている。 一方、IATのデータ解析から、男女間で測定傾向に差がみられたことは今後の課題となっており、おおむね順調な進展として判断するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の通り研究を実施する。 1)学生を用いたPC型IAT、紙と鉛筆をもちいた調査票類似型IAT、新規開発の音声型IATの間の結果の整合性について検討を行う。さらに、顕在指標とこれらのIAT測定結果の間の関連性についても実証的に検討する。また、顕在指標とIAT測定結果の関連性の背景について、理論面での検討を同時に進める。 2)社会調査としてIATを利用するためには、音声型あるいは紙と鉛筆を用いた調査票類似型のいずれかを改善する必要があると考えているが、音声型の調査をインターネットを利用して実施することが可能かどうかを、調査会社と検討する。また、紙と鉛筆を用いる方式を、タブレット型端末に移植することで調査を実施できるかといった各種デバイスの利用可能性についても検討する。 3)社会調査にIATを援用するに際して、意識項目としてどのような項目が望ましいか、また、顕在指標とIAT測定結果が異なる場合、結果をどのように解釈すべきかについての理論的検討、探索的実証研究を行う。 4)上記3点を前提として、社会調査へのIATの実装を行い、その研究成果を邦文および欧文の論文として発表する。
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