研究課題/領域番号 |
22K18598
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
奈良 由美子 放送大学, 教養学部, 教授 (80294180)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 科学リテラシーとコミュニケーション能力 / 政策担当者に科学リテラシーが求められる場面 / 個別イシューに関する科学リテラシー / 文明史的な視点で考えるための科学リテラシー / 政策担当者が考える科学リテラシー / 科学者から見た政策担当者の科学リテラシー / 科学と政策の媒介者から見た科学リテラシー / 支援ツールの開発と試用 / 科学リテラシー / コミュニケーション / 政治家 / 開発支援ツー ル |
研究開始時の研究の概要 |
昨今の社会状況(気候変動,大規模災害,新型コロナ等)を鑑みれば,政治的意思決定に科学の果たす役割が大きくなっていることがわかる。その意味で,政治家には高いレベルの科学リテラシーや科学コミュニケーション能力が求められるようになっているが,一般にはそのような資質を兼ね備えているとは思われておらず,科学と政治の乖離は大きな社会的課題となっている。本研究では,(1)政治家に必要となる科学リテラシーや科学コミュニケーション能力がどのようなものであり,それは,一般市民に求められるものとどう違うのかを解明し,併せて,(2)政治家の当該資質・能力の開発に資する支援ツールを考案・開発しようという試みである。
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研究実績の概要 |
政治的意思決定に科学の果たす役割は大きい一方で、従来の科学リテラシーや科学コミュニケーションに関する研究や実践においては、政策担当者に焦点を当てることは殆どなかった。本研究は、(1)政策担当者に必要となる科学リテラシーの解明、(2)政策担当者の当該資質・能力の開発に資する支援ツールの考案・開発を目的としている。 2022年度は、(1)-1. 科学リテラシーや科学コミュニケーション能力の要素についての理論的研究、(1)-2. 能力に関する認識についての調査研究を行った。このうち(1)-1 については文献研究として、科学リテラシーに関連する国内外の資料を収集・分析した。その結果、「政策担当者」の類型化、政策担当者に求められる「資質」の整理(リテラシー(政治リテラシー+科学リテラシー)+コミュニケーション能力)、政策担当者と科学者との「関係性」の整理(政策課題の共有と科学的助言の共創による政治的意思決定)が得られた。さらに(1)-2については、科学コミュニケーション関係者によるワークショップ、及び科学者を対象としたグループインタビューをそれぞれ実施した。その結果、政策担当者に科学リテラシーが求められる場面として、平常時とクライシスにおける事実認識、問題構築、調査、予測、方針・目標・計画、予算、管理、評価、記録の一連の政策過程があり、縦断的にも、政策システム、議論→合意形成→意思決定→説明、有識者会議・科学的助言、人材養成が関わることを得た。また政策担当者に求められる科学リテラシーとして、論理、計算、統計、データ、情報、知識、メタ科学、トランスサイエンスといった科学一般に関するリテラシーから、人工知能、人口問題といった個別イシューに関するリテラシー、さらには時空間の階層性、価値と包摂といった文明史的な視点で考えるための科学リテラシーまでがあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況は順調である。本研究では、(1)政策担当者に必要となる科学リテラシーがどのようなものであるかの解明、(2)政策担当者の当該資質・能力の開発に資する支援ツールの考案・開発を目的としている。研究計画では、それぞれの目的に対応して、(1)-1 . 科学リテラシーや科学コミュニケーション能力の要素についての理論的研究、(1)-2. 能力に関する認識についての調査研究、(2)-1.能力開発支援ツールに関する検討、(2)-2. 具体的な支援ツールの開発と試用、を実施することとなっている。 このうち(1)-1については2022年度中に完了している。(1)-2については、調査対象として4者(科学コミュニケーション関係者、科学者、科学と政策の媒介者、政策担当者)を予定しており、2022年度はその中の科学コミュニケーション関係者と科学者に対する調査を終えている。文献調査、ワークショップとインタビュー調査により、政策担当者に必要な科学リテラシーの枠組みの暫定版を得ている。 なお、科学コミュニケーション関係者によるワークショップ及び科学者へのグループインタビューは、いずれも科学コミュニケーション研究所の協力のもと実施した。前者の参加者は約20名であり、ワークのテーマは「政策担当者にもっと科学的リテラシーがあったらと思うのはどんなときか」、「政策担当者の科学リテラシーをテストするとしたら、どんな質問か」である。後者の調査は、8名の専門家(化学、医学、生物学、工学、農学、科学技術社会論、リスクコミュニケーション論)を対象とし、「政策担当者にもっと科学リテラシーがあったらと思うのはどんな時か」、「科学リテラシーの高い政策担当者がいれば、よりよい政策につながると考えられる現代の課題は何か」などを問うた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である(1)政策担当者に必要となる科学リテラシーの解明、(2)政策担当者の当該資質・能力の開発に資する支援ツールの考案・開発に対応し、研究計画としては、(1)-1. 科学リテラシーや科学コミュニケーション能力の要素についての理論的研究、(1)-2. 能力に関する認識についての調査研究、(2)-1.能力開発支援ツールに関する検討、(2)-2. 具体的な支援ツールの開発と試用、が必要な実施項目となっている。 これら研究計画のうち、2023年度は、(1)-2の後半を行う。具体的には、科学と政策の媒介者、ならびに政策担当者自身それぞれ数名を対象にしたグループインタビュー及び個別インタビューを実施する。質問項目としては2022年度に実施したインタビュー内容に基づき、「政策担当者にもっと科学リテラシーがあったらと思うのはどんな時か」、「科学リテラシーの高い政策担当者がいれば、よりよい政策につながると考えられる現代の課題は何か」、「政策担当者が、目の前の課題を超えて、より長い時間スケール、広い空間スケールで、文明史的な視点で政策を考えるために必要な科学リテラシーとはどのようなもの」などを想定している。得られたデータを分析し、研究目的(1):政策担当者に必要となる科学リテラシーや科学コミュニケーション能力がどのようなものであるかの同定を行い、2022年度に得られた暫定版をさらに精緻化し完成させる。翌年度の2024年度は速やかに目的(2)に対応した研究計画(2)-1にかかれるよう、その準備も始めたい。
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