研究課題/領域番号 |
22K18599
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
西島 央 青山学院大学, コミュニティ人間科学部, 教授 (00311639)
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研究分担者 |
古賀 誉章 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (40514328)
青柳 直子 茨城大学, 教育学部, 教授 (80414100)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 手洗い設備 / 手洗い指導 / 学校環境衛生 / 衛生意識 / 小学校 / 中学校 / 社会英気学 / 学校の手洗い設備 / 学校の手洗い指導 / 社会疫学 / 健康格差 |
研究開始時の研究の概要 |
学校の手洗い設備の整備と手洗い指導は、新型コロナウイルス感染予防に限らず、健康格差の縮減や異なる文化的背景や社会的条件にある児童生徒の“衛生意識”の形成のためにも大切である。しかし、明治時代から制度が整備され研究も蓄積されているトイレと違って、学校の手洗い設備については、これまで制度的にも学術的にでも検討されてこなかった。 そこで本研究では、学校の手洗い設備の整備と手洗い指導に関して、社会疫学をベースに、教育社会学、建築環境工学、健康教育学の4つの学問領域からなる総合的な研究枠組みを生み出すことを目的に、手洗い設備の整備と手洗い指導の歴史的経緯と現状及びその課題の把握をめざす探索的な研究を行う。
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研究実績の概要 |
学校の手洗い設備の整備と手洗い指導は、健康格差の縮減や異なる文化的背景や社会的条件にある児童生徒の“衛生意識”の形成のためにも大切である。しかし、学校の手洗い設備については、これまで制度的にも学術的にでも検討されてこなかった。 そこで本研究では、学校の手洗い設備の整備と手洗い指導に関して、社会疫学をベースに、教育社会学、建築環境工学、健康教育学の4つの学問領域からなる総合的な研究枠組みを生み出すことを目的に、手洗い設備の整備と手洗い指導の歴史的経緯と現状及びその課題の把握をめざす探索的な研究を行う。 その目的を達成するために、本年度は、第一に、児童生徒の手洗い設備の使用実態に関する行動観察調査:児童生徒の“衛生意識”の多様な状況の把握を目的に、古賀を中心に、児童生徒 の手洗い設備の使用実態に関する行動観察調査を行う計画であった。しかし、当初、調査協力を得られていた学校が、当該校の立地する自治体の教育委員会の意向等で調査ができなくなった。そこで、改めて調査協力校を選定するための基準をつくるべく、いくつかの小中学校の手洗い設備の状況と児童生徒の手洗いの様子をうかがった。現在、いくつかの選定基準を検討しており、次年度には、その基準に基づき、調査協力校を改めて探す予定である。 第二に、小中学校の手洗い設備が整備され、手洗い指導が行われていく歴史的経緯を行政文書と学校文書から探る計画であった。代表者の西島がこれまでにも教育史研究のフィールドとしてきた長野県飯田市のいくつかの小学校を事例に、明治期から昭和初期までの学校日誌や看護日誌を閲覧したところ、水道設備が整う前から、教員が児童の健康や衛生に関して関心をもち、指導している様子がうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」でも述べたが、本研究課題の採択前の令和4年6月に、研究代表者のつてで、手洗い設備や手洗い指導に困っていたり工夫したりしている学校を探したところ、手洗い設備の状況に困っていて、その使い方で興味深い工夫をしている中学校を紹介された。そこで、採択後から9月にかけて何度か学校を訪問して、管理職と相談を進めて、手洗い設備の使い方の調査に協力していただけることとなった。ところが、研究代表者の本務校の倫理審査で、校長の了解だけでなく、生徒一人一人の了解も取るべきではないかとの意見が付き、その必要があるかどうか校長にうかがったら、そんな面倒な手続きが必要なのかと難色を示し始めた。また、9月末になって、その中学校の立地する自治体の教育委員会から、もしそのような調査が入っていることが市議会議員の知るところとなり、使い方に困っている手洗い設備を放置していたのかと議会で追及されたら教育委員会が困るので、そのことが表面化しないように、調査は認められないと連絡があった。これらの理由で、その中学校での調査はできなくなってしまった。 10月からでは、当該年度内に学校に継続的に入らせていただくような調査を依頼することは難しい。そこで、年度内に本調査を行うことは断念して、改めて、年度内には、どのような条件の学校で調査をするのがよいかを検討するところまでを行い、次年度になってから、条件に見合う学校を探して調査協力依頼をすることとした。研究代表者のつてある小学校、中学校をいくつか見学して、手洗い設備の状況を見学したり、コロナ禍での手洗い指導の留意点や課題などをうかがったりした。 それらを通して、現時点で考慮すべきと考えている条件は、小学校か中学校か、小学校の場合どの学年か、児童生徒数や学級数はどのくらいか、手洗い場の数はいくつどこにあるか、各手洗い場の蛇口の数はいくつあるか、などである。
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今後の研究の推進方策 |
学校の手洗い設備の研究は、少なくとも教育諸学の範囲ではこれまでなかったと思われる。学校の環境衛生では、近年はトイレに対する関心が高まって、トイレの改修には国が補助金を出すまでになっているが、そのトイレも、20年くらい前は、社会的にも学術的にも行政的にも今ほどの関心はもたれていなかったという。その状態から現在の状態にもっていくまで大変な苦労があったと想像されるが、手洗い設備もかつてのトイレと同じ状況にあると思われる。 次年度以降の研究を進めるにあたって、第一に、児童生徒の手洗い設備の使用実態に関する行動観察調査を行うためには、手洗い設備の状況と手洗い指導の状況、そして児童生徒の衛生意識を把握するのに適した調査をするための条件を絞っていくことと同時に、理解の得られやすい学校を探していくことが求められる。研究協力者の丹野を通して養護教諭の研究団体等に相談をして、調査協力校を探していくようにしたいと考えている。 第二に、小中学校の手洗い設備が整備され、手洗い指導が行われていく歴史的経緯を行政文書と学校文書から明らかにする調査については、飯田市では、全国的に水道の整備が進む昭和30~40年代の資料がやや手薄であることがわかってきた。それでも資料アクセスのしやすい飯田市で続けるか、戦後の資料の多い別の地域を探すかを検討して決める必要がある。
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