研究課題/領域番号 |
22K18600
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
赤林 英夫 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90296731)
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研究分担者 |
小林 雅之 桜美林大学, 大学院 国際学術研究科, 教授 (90162023)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 新型コロナパンデミック / 高等教育政策 / 行動経済学 / 奨学金制度 / 実証分析 |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナパンデミックによる混乱は、学校教育システムに変革の必要を突きつけた。本課題では、コロナの下で歴史的転換点にある我が国の高等教育の今後10年のあり方に関して理論・実証・制度的に検討を行う。本研究課題の特徴は、我が国では高等教育研究にほとんど用いられていない、行動経済学による知見の活用である。具体的には、人間の判断の合理性の限界を取り入れた仮説に基づき、様々な調査データを活用し、オンライン授業・奨学金受給や家庭環境・学生の性格や選好等の差が、学生生活や人生設計にもたらす影響を分析する。その上で、実証分析の結果を踏まえ、今後の高等教育の制度設計のあり方を検討する。
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研究実績の概要 |
今年度は2年目で以下の研究を行った。最初の2つは、高校卒業時から社会人になるまでの経路や奨学金の受給状況に関する詳細な情報、時間割引やリスク選好などの行動経済学的質問、親世代(第一世代)の経済・家庭状況を収集した日本家計パネル調査―第二世代調査(JHPS-SG)を利用した。 第一は、高等教育修了者の内、貸与型奨学金を受給した人とそうでない人で、その後のライフコースに差があるか、婚姻確率についてサバイバル分析、子供の数について負の二項分布回帰分析を用いて分析を行った。これにより、奨学金を受給することは、結婚のタイミングを遅らせること、生涯にもつ子供の数を減らす傾向があることが、我が国で始めて定量的に明らかになった。この論文は、高等教育研究における国際的トップジャーナルの一つであるStudies in Higher Educationに掲載された。反響は大きく、国内の各種メディアに加え、英国のTimes Higher Educationからも取材が来て記事に取り上げられた。 第二は、高等教育の進学と奨学金受給に、親の資産、恒常所得、本人の選好が与える影響を、行動経済学的仮説に基づいた事実発見的な分析を行っている。これについては引き続き英語で論文を執筆中である。 第三は、ある大学の経済学部がコロナ禍で実施した学生調査データの分析である。同学部の許可を受けた上で、学生の家庭環境や選好が、オンライン授業の受け方や態度にどのような影響を与えたか分析を行っている。これは、次の教育社会学会での発表を目標にしている。 以上の研究は、本課題の資金で雇用している特任教員がデータ整備と分析・執筆に関わった。 最後に、行動経済学的要素を組み込んだ奨学金受給の経済モデルのレビューを行い、雑誌に招待投稿した。レビューした経済モデルは上記の第二論文に活用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本家計パネル調査第二世代付帯調査(JHPS-G2)にもとづく2本目の論文執筆が遅れているため。ただし、1本目の論文は時間をかけた結果、評価の高い国際誌に掲載されたため、ある程度の時間は必要だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き特任教員を雇用し、第2論文を秋までに投稿、年度内に出版したい。 また、実績に記載した、奨学金受給の経済モデルの論考を完成、出版したい。 さらに、本年度中にある大学で収集した学生データの分析結果を学会報告し、ディスカッションペーパーにまとめたいと考えている。
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