研究課題/領域番号 |
22K18601
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中野 俊 帝京大学, 文学部, 研究員 (60898419)
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研究分担者 |
早川 友恵 帝京大学, 文学部, 教授 (60238087)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | ASD / 自律神経 / 読字能力 / 神経発達障害 / 瞳孔 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)に見られる感覚過敏/鈍麻と読字困難感の関係を明らかにするため、瞳孔反応計測を中心とした実験研究をおこなう。光に対するまぶしさを訴えるASDの瞳孔計測を行ない、ASDと自律神経系の関係および読字能力との関係を明らかにする。実験結果から、言葉にして表現しにくい視覚特性をもつASDの困難感の本質を理解・共有し、 当事者の認知特性に合わせた教育現場における合理的配慮の提案を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は自閉症スペクトラム障害(ASD)に見られる感覚過敏/鈍麻と読字困難感の関係に着目し、ASDの羞明による読字困難感の客観的な評価手法としての瞳孔計測の有用性を検討することを目的とする。ASDは社会的な相互作用やコミュニケーションの困難さ、反復的な行動や関心の狭さなどを特徴としているが、視覚においても定型発達者とは異なる特性を示すことが知られている(Simmons et al., 2009)。ASDに特徴的な視覚特性としては、視覚刺激に対する過敏反応、視線追跡の困難さ、視覚的パターンの認識に対する困難さなどが生じることが報告されており、ASDに特徴的な視覚特性が学習の遅れにも繋がると考えられている。一方で、読字に対する困難感が生じている場合でもその程度には個人差が大きく、特に学習場面においては、読字能力を適切に評価し、個々の特性に合わせた合理的な配慮・補助の提供が必要となる。 本研究では、ASDの読字困難感の背景要因として、自律神経の働きに着目する。自律神経は交感神経系と副交感神経系の2系統で構成され、2つがバランスをとりながら体内の様々な機能を制御・維持する。瞳孔は入力光量や情動反応、認知処理に応じて変化するが、その変動は自律神経によって制御されており、瞳孔の反応特性を計測することで自律神経の傾向を間接的に評価することができる。ASDを対象とした先行研究では、種々の刺激、課題遂行に伴う瞳孔反応が定型発達者と異なることが報告されており(de Vries et al., 2021)、自律神経の働きがASDに特徴的な困難感の背景要因となっている可能性がある。そこで、本研究では定型発達群を対象とした実証実験により、ASD傾向と読字能力及び自律神経の働きの関連性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の職位変更及び所属研究機関の組織体制変更に伴い、研究環境整備に時間を要したことによる研究開始の大幅な遅れに起因し、研究の進捗は大幅に遅れている。初年度は実験課題の作成と刺激セットの作成、実験で取得する時系列データの分析プロセス構築を実施した。 瞳孔径の変動には環境光量や課題中の認知負荷量だけでなく、様々な内的処理過程の影響を受ける。本研究では読字能力の評価手法として文字の読み上げ課題を採用しているが、文字の意味によって誘発される情動によって瞳孔径が変動することが報告されており(Bradley et al., 2008)、読字に対する認知負荷量を評価するためには誘発される情動量を条件間で統制する必要がある。そこで、NTT語彙データベースをもとに親密度・表記の妥当性・感情極性値が統制された刺激セットを作成した。また、読字課題中の認知負荷量を反映した瞳孔径の変動を検出するため、欠損値補間、フィルタリング、基線調整の手法について検討し、分析プロセスを構築した。実験手続きの構築は完了し、現在は参加者を募り実測を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在は設計した実験課題による実験実施を進めている。参加者の募集は難航しているものの、20名程度を目途にデータを収集し、7月までに実験は終了する予定である。実験実施と並行して分析を進め、解析終了後に学会報告を予定している。現在の実施中の実験では単語読み上げる課題を実施しているが、後続の実験ではより教育環境に近づけるため文章の読み上げ課題を実施する予定である。実験課題の基本構造は踏襲し、刺激のみを変更する。10月頃に実験が開始できるよう準備を進め、年内にデータ収集を完了する。
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