研究課題/領域番号 |
22K18604
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
田中 淳 大阪工業大学, 工学部, 教授 (90319575)
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研究分担者 |
鳥居 隆 大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 教授 (00360199)
三橋 雅子 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (20454556)
小島 夏彦 大阪工業大学, 工学部, 教授 (90288754)
藤元 章 大阪工業大学, 工学部, 教授 (90388348)
谷 保孝 大阪工業大学, 工学部, 教授 (90411412)
長谷川 尊之 大阪工業大学, 工学部, 講師 (00533184)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 課題解決(PBL)型授業 / ビッグヒストリー / 太陽系ツアー / 人類の危機への挑戦 / 課題解決型授業(PBL型授業) / リベラルアーツ / 宇宙・地球・生命 / 未来学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は研究代表者らが担当する課題解決型授業,「宇宙・地球・生命ー探究演習(課題解決型PBL授業)」を研究フィールドに設定する。本授業は本学の工学部と知的財産学部の様々な学科の学生が集まり,多様性のある少人数のチームを構成して運営されている。本研究では,これらのチームに課題として与える21世紀型のリベラルアーツ的内容を含むテーマの選定から始まり,実際の授業運営における様々な仕掛け(デザイン思考を用いた作業,ICT利用,自由度を高めた授業環境の設計)の開発や授業への組み込みを行う。学生によるプレゼンテーションやアンケートの解析などを通して教育効果の検証を行い,新しいタイプのPBL型授業を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、物理学、地球科学、生物科学分野の教員が専門を横断して課題解決型授業(PBL)を展開し、旧来からの座学による学習と有機的に連携した新たな学修プラットフォームの確立を目指すことにある。2022年度に行った研究実績の概要を以下に記す。 36名の履修者からなるPBLクラスを2分割し、一方に過去3年間テーマとしてきた(1)「太陽系ツアープロジェクト」を、もう一方には新テーマとして(2)「人類の危機への挑戦」を題材として与え、特に後者では試験的な授業運営を行った。 (1)においてはこれまで4年間の集大成として授業を展開し、アンケート調査などのデータ集積を行なった。 (2)では、「人類の危機への挑戦」を課題に据えた授業を設計し実施した。具体的には、授業を前後半に二分し、前半で現在から未来に向けて人類が直面する可能性のある危機群を網羅的に抽出させ、それぞれの相関関係、解決難易度、時系列に沿った過去履歴や今後の発生確率などを総合的に議論させた。ここでは、現在から未来の世界がどのように展開する可能性を含むかを、特に工学系の学生に俯瞰的に認識させるステージとして授業設計した。前半で抽出した危機群には人文社会系の危機も含むが、後半はサイエンス系の危機を対象として、その現状や未来、そして危機への対策を熟考させた。これらの内容は、物理学、生物科学および地球科学の専門に立脚した知識を総合的に組み立てて考える新しいタイプのサイエンス教育の側面を持つと同時に、全体としては人文社会系の危機も包含した未来像と様々な問題を認識させる新しいタイプの「リベラル・アーツ」教育として位置付けることができる。 以上、2022年度は研究の初年度として、従前から実施してきたPBL型授業の学習効果を把握する調査と、同授業の新展開を進めるために試験的に「人類の危機への挑戦」をテーマとした授業を設計し試験的運営を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の進捗状況は以下の理由によって「おおむね順調に進展している」と言える。本研究の対象となる課題解決型授業、宇宙・地球・生命-探究演習では、4年に一度の対象課題のテーマ変更を行っている。その節目が2023年度となるため、2022年度後期には次年度のテーマ変更を見越し、試験的に新テーマでの授業運営を行なった。具体的には、クラスを2分割し、18名の学生を6人編成の3チームに分けて新しい課題に沿って授業を設計し試験的運営を行なった。授業テーマは上記研究の概要にも記した通り、現在から未来に向けて起こりうる「人類の危機」を16個選出させ、その分類や相関関係、解決困難度などを第一段階で考えさせた。第2段階ではこれらの危機のうち、サイエンス系の危機の現状とその解決法について考えさせ、状況に応じて、担当者による解説や書籍の提供を行い、議論が深化するようにサポートした。2022年度はこの試験的実施において、授業進行の設計と見直しを行い一定の成果を得た。 一方、4年目を迎えた「太陽系ツアー」の授業においては、これまでのKJ法によるアイデア出しや2軸図による論点の明確化などデザイン思考をアップグレードして取り入れた。授業環境においても必要な機材を取捨選択し、学生の取り組みの自由度を高める方向で進めている。また、テーマとして最終年度になるためアンケート調査によりデータ集積を行ない、その解析を進めている。以上の知見を新テーマの授業に組み込むため、研究分担者とともに議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はクラスを2分割し、一方で「人類の危機への挑戦」を新テーマとしたPBL型授業を試験的に実施した。2023年度はこの成果を踏まえ、全受講生を対象に新テーマで運営に取り組む予定である。 2022年度の試験的実施結果については、前後半の授業構成などについて学生アンケートから有意義な改善方法が示唆された。2023年度はこれらを反映した授業構成で臨むこととする。 2023年度後期は新たなラーニングコモンズでの活動が始まるので、まずはその環境整備を行う。AV機器、机や椅子、ホワイトボードなど質と数が授業運営に支障がないか、ある場合にはそれらの補充などをする。その手始めとして可動式モニターを各チームに1台利用させて議論を深化させる取り組みを行う予定である。加えてオンラインストレージの積極的な利用を通じて、チーム議論の素材の共有化を促進する予定である。 また本研究も2年目を迎えるので授業実施後のアンケート調査等を解析し,学生の満足度や成長具合などを可視化し,教育手段の有効性を精査していく。また,それらをまとめ,各教育学会で報告することを計画している. 最後に本研究の新テーマである「人類の危機」には、自然界にその要因があるものと人為的要因が複雑に絡んで存在する。したがって、その対応策を考えるには、様々な観点から危機の原因や仕組みを明らかにし、その延長線上で結論を得る必要がある。一方、近年の科学は専門の蛸壺化が顕著となり科学者は外部世界と切り離され多要素問題に対応できないでいる点も否めない。そのような時代背景を踏まえた時、新テーマである「人類の危機」への挑戦では多様な分野からの複眼的思考が必要となる。本研究では、物理学、地球科学、生物科学からの多面的な検討の重要性を、学生間の議論の中にどのように持ち込み認識させるかについて試行し、その方法論を開拓することを中長期的目標とする。
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