研究課題/領域番号 |
22K18615
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
荒木 祐二 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00533986)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 食品製造 / 加工 / 貯蔵 / 食品 / 計画 / 評価 / 包装 / 衛生 / 農業教育 / 教科内容学 / 農業高校 / カリキュラム / 農学リテラシー |
研究開始時の研究の概要 |
農学は食料生産に加えて,経営,食品製造,国土保全等を包摂する幅広い学問領域である。農学における不易と流行を受け,農業教育の内容も定期的に見直されてきたが,学習内容を構成する普遍的な概念の枠組みについては十分に精査されていない。本研究では教科内容学の視座から農学に刻まれた原理・概念を析出し,授業実践を通じて農業科内容構成論を構想する。農業の教育機能と枠組みを根本から捉え直し,農学の新たな価値観の創出に関与する農業教育カリキュラムスタンダードを構築する。教育現場の課題を解消するとともに,農業科を学ぶ生徒が自律的に判断して未来の社会を形成するための農学リテラシーを育む農業教育の実現をめざす。
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研究実績の概要 |
本年度は,「食品製造」の科目に着目した概念整理を行った。高等学校農業科「食品製造」の科目では,製造原理や原材料特性,食品の安全性や品質表示等の内容に加えて,経営や流通,地域農業との連携についても学習されている。その学習対象や系統性について十分に精査されているとは言い難いことから,教科内容学の所見を基に,食品製造を構成する基礎概念の枠組みの構築をめざす。 食品製造にかかわる学術分野と教育分野の文献を対象とした調査を実施した結果,食品製造を構成する基礎概念は,食品を製造する「A加工」,食品を保存する「B貯蔵」,製造された「C食品」,食品や製造工程にかかわる「D計画・評価」,食品の「E消費・利用」に大別できた。「A加工」は,加工前の状態である「A-1素材」,具体的な加工の方法となる「A-2操作」,食品製造において気を付けるべき「A-3衛生」,食品を保護する「A-4包装・表示」に細分した。「B貯蔵」は,食品の変質や貯蔵法を示す用語で構成された。「C食品」は,食品の種類を表す「C-1分類」,食品に含まれる「C-2成分・機能」に細分した。「D計画・評価」は計画・評価を直接表す「D-1計画・評価」と安全性や環境といった計画・評価の観点となる「D-2社会・自然とのかかわり」に細分した。「E消費・利用」は,食生活や食文化に関する用語で構成された。 また,これらの基礎概念間にみられる相互関連性を構造化した。「A加工」,「B貯蔵」,「C食品」の3つの基礎概念は,二次生産としてまとめられる。本研究では,素材となる生物の生産を一次生産とし,素材を加工する過程を二次生産として区分する。二次生産を経た食品は,「E消費・利用」される。これらすべては「D計画・評価」の対象となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教科内容構成論の形成過程は,教科の認識論的定義をし,学の体系性を理論的に確立するプロセス①と,その理論を基に学習指導要領を批判的に捉え,教科内容構成論を授業実践で具現化するプロセス②に区分される。本年度はプロセス①の理論構築に重心を置いた。まず,農業高校の授業を参観し,指導上の課題を顕在化する。また,農業科の学習指導要領と教科書,各種専門書の文献調査を行うとともに,関連学会を訪問して研究トピックを把握し,農業科で真に指導すべき学習対象の抽出を試みた。その端緒として前述のとおり「食品製造」の科目に関する基礎概念を整理した。研究成果を学会で発表するとともに,投稿論文に向けて着手したことからおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
農学は食料生産,食品製造,流通,経営,国土保全,資源活用等を包摂する幅広い学問領域である。今後は「流通」,「経営」,「国土保全」,「資源活用」と領域の基礎概念を構築する。これと並行して,実際の学習場面において,生徒が農業科の学習内容を概念的に理解するための教材を開発し,農業科内容構成論を具現化する指導法を考案する。高等学校学習指導要領と教科書を教科内容学の見地から批判的に分析し,農業科としてのオーセンティックな(真正の)学習になるよう授業実践モデルの基軸を定める。構想した農業科内容構成論について授業実践を通じて検証する。授業実践は農業高校の現職教員である研究協力者が行う。授業後に農業高校教員を対象にしたヒアリング調査を実施し,指導項目とその配列,留意事項,教材の実用性を含めた授業実践モデルの有効性を評価する。
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