研究課題/領域番号 |
22K18636
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 山梨学院大学 |
研究代表者 |
稲垣 みどり 山梨学院大学, 国際リベラルアーツ学部, 特任准教授 (70769786)
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研究分担者 |
苫野 一徳 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (70507962)
岩内 章太郎 豊橋技術科学大学, 総合教育院, 准教授 (90769837)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 現象学 / 本質観取 / 哲学対話 / 日本語教育 / 複言語環境で育つ子ども / 市民性形成 / 民主主義教育 / 複言語主義 / 共生社会 / 対話 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「共生社会における日本語教育は何をめざすか」という問題を、日本語教育/言語教育の領域と哲学、教育学の領域との協働により考察する。外国人労働者や留学生、また生活者としての外国人とともに生きるために不可欠となる日本語教育の現場を想定し、様々な言語文化的背景を持つ異なる価値観を有した人々が、信念対立を乗り越えて「共生社会」を実現させるために、いかなる日本語教育の実践があり得るのか。日本語教育/言語教育の研究者が哲学や教育学の領域と協働し、現象学の原理に基づく対話実践としての「本質観取」を、国内外の日本語教育/言語教育の実践者に、ワークショップ実践によって広める。
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研究実績の概要 |
今年度は国内外で哲学対話「本質観取」の講演とワークショップを精力的に行った。まず2023年7月に言語文化教育研究学会にて、昨年度のドイツでの学校視察および本質観取の講演とワークショップの報告を行った。同7月には岩内が宇部工業高等専門学校で哲学対話の実践を行った。8月には稲垣がベルギーのゲント大学で開催されたヨーロッパ日本研究協会のシンポジウムで昨年度のドイツでの哲学対話の実践についての研究成果を発表した。その後、2024年1月に、稲垣と岩内は長崎国際大学の研究者と連携し、長崎市内で本質観取の講演とワークショップを実施した。同1月に、稲垣の勤務先大学の山梨学院大学で、稲垣と岩内が多国籍の留学生を対象に本質観取の授業を行った。また同1月に岩内の勤務先の豊橋技術科学大学で哲学者の西研を招いて「「民主主義と哲学対話」の講演会を実施した。2024年2月には、稲垣がハンガリー、ブダペストのエトヴェシュ・ロラーンド大学で本質観取の講演とワークショップを学生を対象に行った。また国際交流基金ブダペスト日本文化センターでも現地の日本語教師を対象に稲垣が本質観取の講演とワークショップを行った。チューリッヒの日本語補習校でも、保護者や高等部の生徒を対象に本質観取の講演とワークショップを行った。稲垣はヨーロッパ渡航中に、対面の哲学対話の実施の他にオンラインでもオランダ教師会やヨーロッパ地域在住の日本語教師対象のワークショップを開催した。以上、国内外で数多くの本質観取の実践を行ったことで、本研究課題の当初の目的である「文化的背景を異にする学習者や日本語教育/言語教育の実践に携わる教師を対象に、現象学的哲学対話の方法である「本質観取」を普及させる」ことができた。また実践のみでなく国内外での学会での研究成果の発表や論文化を通じて、日本語教育/言語教育の文脈における哲学対話の理論化も着々と進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本国内と国外で、哲学対話(現象学的対話)の講演とワークショップを多数おこなった。当初の予定では今年度はアイルランドに渡航して本質観取の講演とワークショップを行う予定だったが、諸事情によりアイルランド渡航を変更し、国内での実践および研究代表者単身でのヨーロッパ渡航に切り替えた。その結果、3名でアイルランドに渡航する費用を抑え、その分国内とヨーロッパ地域の複数の国で、数多くの実践をすることが可能になった。より多くの場所で、より多くの対象者に本質観取の対話実践を普及させることができたという点では、当初の予定を変更したことにも意義があったと考えられる。また実践のみならず、国内外の学会やシンポジウムでの発表などを通して研究成果を発信し、論文化する過程にあり、本研究課題は理論研究としても着々と進捗している。ゆえに、実践と理論の両面で、本研究課題は今年度、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実践を踏まえ、哲学対話を日本語教育その他の言語教育の実践者や研究者により広く普及させるべく、現在本研究課題の研究者3名で哲学対話(本質観取)の導入、テキスト的な位置づけの書籍の刊行を企画しており、原稿の執筆を進めている。また、今年度(2024年度)は当科研研究課題の最終年度に当たることもあり、最後の海外での対話の実践として、アメリカ、プリンストン大学での講演とワークショップを予定している。その他にも昨年度に引き続き、日本国内の様々な日本語教育の現場の実践者や研究者と連携して、精力的に講演やワークショップに取り組んでいく予定である。
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