研究課題/領域番号 |
22K18640
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 米子工業高等専門学校 |
研究代表者 |
堀畑 佳宏 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60649309)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 数学的態度 / 仮説 / 自由 / リベラルアーツ / 情報空間 / 抽象化 / 高専教育 |
研究開始時の研究の概要 |
「全ての説明は元をたどれば仮説である」という観点で世界に対峙する姿勢を,仮説(公理)および推論規則(論理)を明示して構築される学問である数学を受けて,「数学的態度」と名付けた. 数学的態度によって,自身の先入観(認識されてない仮説)に気付き,また学習することも可能となる.先入観を発見し相対化する意味で,自由を希求するリベラルアーツと親和性がある.19世紀に構築された非ユークリッド幾何によって,数学における公理の設定の自由さも明らかとなった.数学の学問の構造としての自由さをリベラルアーツの土台に添え,リベラルアーツの現代的再構築および教育(特に高専教育)への応用を行う.
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研究実績の概要 |
私たちが日々時間を費やす場所は,現実の物理的世界より情報空間(インターネットや脳内の言語空間など)がそのより多くを占めつつある.これに伴い,諸概念の意味や価値,定義なども変化を余儀なくされる.そのような時代に必要となる基本的な能力として,本研究で取り組んでいる「数学的態度」が挙げられる.この態度は,既存の価値観や慣習を,尊重しつつも過度にとらわれずに「仮説」として認識し,その改善や他の選択肢を積極的に提案していく姿勢へと繋がる.また情報空間は,人の想像が作り出す世界であり,しかし人の想像を超えた世界にはならない.従って情報空間を豊かにするためには,物理的世界や現実の人間社会における既存の世界観を相対化し,新しい価値を創造できる力が必要となる. このような観点に基づいた現代版の「リベラルアーツ」を,数学的態度の概念を通じて捉えなおし,再構築を行っている.特に数学的態度を通じて,自分がよって立つ自分の世界観や価値観,あるいは思い込みや偏見にまず気づき,それを相対化できる姿勢を身に着けることで,人や物事から学習することができるための姿勢,興味や専門分野が異なる人の考えを理解したりそうした人々とコミュニケーションをとり共同作業を可能とする姿勢,などが身に着けられることを示した. 本研究はいくつかの分野をまたいでいるため,「日本数学教育学会」「ISATE2023(国際工学教育研究集会)」「日本高専学会」他種々の学会で発表を行った.数学的態度とリベラルアーツの関係の研究については,ISATE2023の査読論文にまとめ受理された.また数学的態度における仮説の役割の詳細な分析については,4年に1回開催されるICME15(数学教育世界会議)の査読論文にまとめ受理された.発表は2024年7月にオーストラリアで開催される会議で行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
技術の進歩や社会の変化が加速する現代において,新しい価値観や世界観を築くうえで必要となってくる能力としてのリベラルアーツについて考察し,数学的態度がその重要な基礎になることを示した.またその際に重要な役割を果たす「仮説」が2種類あることを考察し,論文にまとめることができた.他方で,仮説を構築する際に重要な「抽象化」の分析や,数学的態度を身に着けるための具体的な教育方法についての考察を十分行えてはいない.次年度の課題としたい.
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今後の研究の推進方策 |
まず,仮説を構築したり新しい価値観を創造する上で重要な役割を果たす「抽象化」について,その機能面と構造について考察する.また抽象化と具体化を,「仮説」という概念を通じて捉えることで,両者の関係性を明らかにする.そして数学的態度を通じたリベラルアーツの現代版を構築し,また教育への応用を考えていく.
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