研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究では、意欲が低下している反復社会的敗北ストレス(cSDS)モデルマウスを用いて多数の脳領域における神経活動記録とカルシウムイメージングを長期間にわたり自由行動下にて行う。この脳活動記録データから、数理解析および機械学習を用いて、cSDSを負荷した動物に特有な潜在的脳情報ネットワークモデルを作製し、行動学的結果と合わせて意欲の強度が判別可能か検証する。また、「やる気」を生み出す脳活動や神経細胞群も特定する。
本研究の結果より、社会的敗北を繰り返し経験すると、異性に対する興味関心が低下し、無快楽状態になる可能性が示された。つまり、反復社会的敗北ストレスにより「やる気」が低下することが示唆された。また、やる気の低下している動物において、青斑核(LC)から前帯状回皮質(ACC)へ投射しているノルアドレナリン神経が減少していることが初めて明らかになった。このLCからACCにへ投射する神経系を抑制すると、やる気の低下している動物と同様に痛みに対する感受性も高まることが明らかになった。さらに、広範囲多領域脳活動計測を長期にわたり継続できる実験系が構築で、今後、やる気のなくなった動物の脳活動解析が可能となった。
本研究成果は、最近顕著に増加している精神疾患のうち、「やる気」を低下させる神経回路の一部を明らかにすることができたことから、気分障害などの治療を考える際の基礎エビデンスとなると期待される。また、現在解析している脳活動から、やる気を生み出す特徴的な活動を抽出することができれば、主観的な症状である「やる気」を客観的指標で評価することも可能になる。さらに、実験動物では計測が困難であった無麻酔・無拘束状態の脳活動をリアルタイムで計測する技術であることから、これまでに評価が困難であった実験動物の「こころ」を読み解くことも可能になり、精神疾患の病態生理学の理解につながるものと期待している。
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Neuron
巻: In press 号: 13 ページ: 1-11
10.1016/j.neuron.2023.04.013