研究課題/領域番号 |
22K18654
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
田中 章浩 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80396530)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 警告音 / 判断 / 行動 / デザイン / 聴覚心理学 |
研究開始時の研究の概要 |
東日本大震災以降,災害時の警告音に注目が集まっている.地震や火災などの規模の大きい災害の発生時には,日常生活とは異なる心理状態での一瞬の判断が生死をわける可能性もある.こうした警告音は単に危険を知らせるだけでは不十分であり,受け手の適切な判断や行動と結びつく必要がある.そのためには,過度に緊迫感を煽るような音は逆効果であり,十分に緊急性が伝わりつつも,冷静に判断や次の行動と結びつけられるような音が望ましい.そこで本研究では,単に緊急事態を知らせる警告音ではなく,音を知覚した人々に適切な判断や行動を促進するような警告音の設計指針を得ることを目的とする.
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研究実績の概要 |
2023年度は以下2点について検討を進めた。 1.心理音響実験による警告音の最適パラメータの検討 前年度に選定された候補音をベースとして,各種音響パラメータを操作した実験を実施し,効果が最大になる条件を検討した.具体的には,ピッチ(音の高さ),呈示速度,IOI(連続する音の呈示間隔)を操作した.実験の結果,緊急性高・中の警告音では共通してピッチ操作の効果が確認され,ピッチを上昇させると緊急性も上昇した.緊急性高では呈示速度の効果も確認され,速度を上昇させると緊急性も上昇した.一方,緊急性低の警告音では,音響パラメータ操作の効果は確認されなかった. 2.警告音が適切な行動選択に及ぼす影響の評価 緊急時には同じ対象に対して状況に応じて異なる反応が求められることがある.たとえば「窓ガラス」という同一対象に対して,地震発生時には出口を確保するために「開ける」という行動が求められるが,火災発生時には酸素の侵入を防ぐために「閉める」という行動が求められる.このように,警告音呈示後に同じ対象に対して異なる判断が求められる状況を模した実験課題として,矢印刺激の位置と矢印刺激の向きを用いたストループ様サイモン課題を採用し,警告音が適切な行動選択に及ぼす影響について検討した. 実験では音の緊急性(高・中・低)と音呈示後の課題の難度(高・低)を操作した.難度低条件では画面に呈示される矢印の呈示位置(左・右)の回答を求めた.難度高条件では画面に呈示される矢印刺激の示す向き(左・右)の回答を求めた.参加者には25~35試行に一度,ランダムなタイミングで呈示される警告音を合図に課題を切り替えるよう教示した.実験の結果,難度高条件では,緊急性が中程度のときに反応時間が短くなり,緊急性が低くても高くても反応時間は長くなるV字型の結果が得られ,仮説が支持された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,単に緊急事態を知らせる警告音ではなく,音を知覚した人々に適切な判断や行動を促進するような警告音について検討している.警告音の選定にあたって,研究協力者との議論を効率的に推進するため,Slackを活用している.実験の準備及び実施にあたっては研究補助者に謝金を支給し,効率的に推進している.その結果として,これまで大きな問題なく,順調に研究は進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的をより精緻に達成するための研究を実施するために,補助事業期間を延長している.既に実施した実験の追加分析,学会参加などを進めていく.
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