研究課題/領域番号 |
22K18667
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
本多 真 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, プロジェクトリーダー (50370979)
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研究分担者 |
児玉 亨 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (20195746)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 睡眠ポリグラフ検査 / 酸化ストレス / グルタチオン / 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 / 睡眠の質 / 睡眠障害 |
研究開始時の研究の概要 |
ストレス感受性には心理的要因だけでなく生物学的要因も関与する。腸内細菌叢はストレス感受性の一つの規定因子とされている。また睡眠覚醒制御の基本として恒常性維持と概日リズムの2過程が知られる。恒常性維持機構の基盤となる睡眠物質の一つとして、酸化型グルタチオン(GSSG)が報告されている。これまで酸化ストレスと睡眠の関連検討はほぼ睡眠時無呼吸症候群に限られ、夜間睡眠妨害事象を伴わない症例の検討はない。 本研究では睡眠妨害事象のない症例における、睡眠の質的指標や睡眠障害と生物学的ストレス指標・腸内細菌叢の関連解明を目的とする。長期的には睡眠・睡眠障害の新たな感受性因子として位置づけることを目指す。
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研究実績の概要 |
ストレス感受性には心理的要因だけでなく生物学的要因も関与する。腸内細菌叢はストレス感受性の一つの規定因子とされている。本研究では生物学的ストレス指標として、酸化ストレス指標かつ睡眠物質であるグルタチオン(GSH/GSSG)に注目し、酸化ストレス指標が睡眠の質にどのように影響するのか、さらに腸内細菌叢がストレス感受性と関連する環境因となるか検討することを目的とする。 過眠症の鑑別診断目的で1泊2日の検査入院[睡眠ポリグラフ検査(PSG)-反復睡眠潜時検査(MSLT)]をする症例に過眠症病態研究への協力を依頼し、入院期間中に血液と糞便の収集を行う。2022.4-2023.3の期間に118例の患者が研究に同意し、血液92検体、糞便28検体を収集できた。糞便はリボソームRNA領域の増幅を行いT-RFLP(Terminal-Restriction Fragment Length Polymorphism)法で腸内細菌の系統分類解析および糞便中の短鎖脂肪酸定量を行った(テクノスルガラボに委託)。委託が年度末となったため結果は2023.4には未着となった。解析は2023年度に行う。 血中の酸化ストレス指標(GSH、GSSG)は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって検出・定量を行う。以前、脳脊髄液中のGSH/GSSGはホウ素ドープダイアモンド電極を用いたHPLC系で安定して測定可能であったが、血漿には夾雑物が多く適応できず、赤血球分画を対象とするとGSH濃度が非常に低値でアッセイ間の変動が大きい課題が判明した。試行錯誤を行い、最終的にGSHは、赤血球分画を解凍・除タンパク処理直後にHPLCにかけることで、信頼できる実験系を確立ができた。しかし1検体ずつ処理する必要が生じ、所要時間が延長してたため、まだ収集された検体の半数以下しか解析できていない。順次処理を進め、解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要で述べたように、糞便の収集は予想以上に時間がかかり、1泊2日の検査入院中に落ち着いて採便することができない症例が多く、検体数は睡眠研究同意者の1/4に留まった。少しでも採便しやすい環境をつくることが課題である。本研究開始前に収集した便検体とあわせて70検体につき、予備的検証を進める。 血液検体の収集は順調であるが、特殊電極を用いたHPLCによるグルタチオン(GSH/GSSG)測定の最適条件の検討に時間を要した。当初HPLCで56検体の測定を行ったが、測定日ごとに変動が大きく、通常の細胞内のGSH/GSSG比より異常な低下がみられた。試行錯誤の結果、除タンパク処理をすると処理後30分以内にGSHが10%ずつ壊れ、当初4度で保管し一晩を通じて測定した実験系ではGSHの大半が酸化されてしまっていたことが判明した。HPLCの移動相は毎回調整が必要であるが、安定するまで数時間かかってそれから実験開始となること、1検体の分離時間は30分以上必要であること、などの実験条件のため、除タンパク処理の時間を含めると一日の処理数が数検体に留まる点がボトルネックとなっている。 腸内細菌叢と酸化ストレスのデータが揃ったところで、睡眠指標との関連および環境因子としての腸内細菌叢の役割について解析が開始されるため、当初計画より研究が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き睡眠検査入院症例に研究同意をいただき検体・情報の集積を進める。 便検体収集促進は被験者の便通状態による面が大きいが、少しでも採便しやすい環境を整える(2024年末改築後の病院に移転予定であるが、それまでは古い施設を使わざるを得ないため、トイレに流せる紙を複数枚お渡しする等で対応)ことで、糞便収集を早める工夫を検討する。 血中の酸化ストレス指標については、今年度確立できた方法(除タンパク10分後にHPLCにかける)で地道に検体数を増やす予定である。血液検体自体はこれまでの蓄積を含め数百例あるため、糞便と血液の双方が取れた検体を優先してデータの解析をすすめる。また、腸内細菌叢に影響する交絡因子の聴取にもれがないように臨床情報の収集を確実に行う。
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