研究課題/領域番号 |
22K18669
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分11:代数学、幾何学およびその関連分野
|
研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
齋藤 政彦 神戸学院大学, 経営学部, 教授 (80183044)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 放物接続のモジュライ空間 / 放物Higgs場のモジュライ空間 / 幾何学的ラングランズ対応 / 見かけの特異点理論 / フーリエ・向井変換 |
研究開始時の研究の概要 |
代数曲線上の安定放物接続や安定Higgs場のモジュライ空間MとM_Hの幾何学を考察する.特に、幾何学的ラングランズ対応の観点から、Mの構造層の代数的高次コホモロジー、0次代数的コホモロジーを決定する.またそれにより、安定放物接続のモジュライ空間Mと対応する放物ベクトル束のモジュライスタックVについて、フーリエ・向井変換を定義し、幾何学的ラングランズ対応を考察する.見かけの特異点理論によりMおよびM_H、そのコンパクト化の詳しい記述を行う.また、対応するモノドロミー表現のモジュライ空間M_Bおよびそのコンパクト化の記述を行い「P=W予想」を示す.
|
研究実績の概要 |
本年度は、代数曲線上の安定放物接続と安定放物Higgs場のモジュライ空間MとM_Hの見かけの特異点理論を中心に研究を進めた。この研究で明らかになった重要な事実として、安定放物接続および安定Higgs接続で特異点を一点以上許し既約なものは、代数曲線上の有理1型式の直線束のべきの直線束の直和のベクトル束上の接続やHiggs場の見かけの特異点における初等変換によって得られるという事である。このことから、安定放物接続のモジュライ空間のある開集合上の良い座標として、見かけの特異点q_iとその双対p_iが取れることが分かる。このことは、古典的な見かけの特異点理論を現代的に焼き直したものと言えるが、さらにMおよびM_Hの代数的シンプレクテック構造を与える2形式の具体的な表示を与え,Mの場合には、モノドロミー保存変形を記述することが興味深い。これらの事は、代数曲線が射影直線の場合は、Dubrovin-Mazzoccoが示しているが、種数が2以上の場合に岩崎が階数2で示している事の拡張になっている。MおよびM_Hの次元が2の場合は、パンルヴェ方程式の初期値空間の立場から、様々な研究者によち構造が精密に記述されているが、次元が4以上の場合の構造も記述される事が期待される。この事により、MおよびM_Hのコホモロジーが決定され、幾何学的ラングランズ対応との関連が期待される。光明、Lorayとともに、射影直線上の不確定特異点をもつ階数2の放物接続に対応する放物ベクトル束のモジュライ空間とその自然なコンパクト化の構造を調べた。また、量子曲線と位相的漸化式等とパンルヴェ方程式との関係についてワークショップを開催して情報交換および考察を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の代数曲線上の安定放物接続と安定放物Higgs場のモジュライ空間MとM_Hの見かけの特異点理論については、光明、Loray、Szaboらと頻繁に連絡を取り合い研究を進めている。光明、Lorayとは、射影直線上の不確定特異点をもつ階数2の放物接続に対応する放物ベクトル束のモジュライ空間とその自然なコンパクト化の構造を調べて学術論文を発表した。 このほか、光明、Biswas, 稲場との枠付き対数接続のモジュライ空間の研究においても、そのシンプレクテック構造の存在を示している。岩崎は底曲線が種数2以上で階数が2の時の理論をモノドロミー空間の自然な2形式をリーマン・ヒルベルト対応で引き戻した時の記述を見かけの特異点とその双対により記述しているが、対応するモノドロミー保存変形の微分方程式のハミルトニアンが自然に得られる。これを今後は、階数一般の場合に確立する方向の研究が進んでいる。モノドロミー空間の2型式は、局所系の自己準同型束の交差コホモロジーと対応するD加群の同型を介して理解されるので、この立場からM上の2型式の記述を進めたい。量子曲線や位相的漸化式とパンルヴェ方程式の関係は、今後非常に重要な役割を果たすと思われるが、2月に東京大学で関連するワークショップを開催し関係研究者との情報交換を行っている。カラビ・ヤウ多様体のミラー対称性や正則アノーマリー方程式、Gopakumar-Vafa予想との関係も指摘されており今後の展開が望まれる。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度に京都大学数理解析研究所で予定されている訪問滞在型研究プロジェクト「可積分系・数理物理学の関わる代数幾何学の発展」において、幾何学的ラングランズ対応、位相的漸化式、量子曲線、ミラー対称性、カラビ・ヤウ多様体、放物接続・Higgs束のモジュライ空間とリーマン・ヒルベルト対応、パンルヴェ方程式とそのτ関数について研究集会およびワークショップを開催する予定である。これに向けて、2023年度は国内および国外の研究者と連携し準備を行う。特に、放物接続のモジュライ空間の見かけの特異点による標準座標の理論を完成させ、放物接続のモジュライ空間のコホモロジーの計算が可能になるように研究を進める。国内外においてワークショップや対面での研究連絡を行う。Webによるパンルヴェセミナーを継続し、最新の研究成果を共有する体制を構築する。
|