研究課題/領域番号 |
22K18674
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 宏志 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00362583)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 逆問題 / 楕円型方程式 / 非適切性 / 数値的不安定性 / 非適切問題 / 楕円型方程式のCauchy問題 / 不安定性 / スペクトル解析 / 特異積分方程式 / 連立一次方程式の条件数 / 数値解析 / 楕円型方程式の初期値問題 |
研究開始時の研究の概要 |
逆問題は,非破壊検査や非侵襲検査など,工学・地球惑星科学・医学に現れる問題と密接に関連してその解析手法が進展してきた.本研究で考察する問題は楕円型方程式の初期値問題に分類され,多くの逆問題の数理モデルとなっている.従来は,典型的なラプラス方程式の場合が深く研究されており,アダマールの例によってその数値計算は困難であることが知られている.本研究では,工学や医学でもちいられるエックス線トモグラフィに現れる楕円型方程式の初期値問題を対象として,アダマールの例など従来の理論では説明できなかった新しい数値的性質の解明に挑戦する.
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研究実績の概要 |
本年度は,昨年得られたこの成果を論文として出版され,国内外の研究者と意見交換をおこなった.本研究の目的は,楕円型偏微分方程式の初期値問題に対して不安定性があるにも関わらず数値計算可能な例とその性質を調べるものである.初年度に理論的研究が先行したため,本年度は本助成により並列計算機を導入し,数値計算環境を整備するとともに,初年度の理論的な結果の妥当性を調べる数値実験をおこなった.先行研究では,Cauchy核をもつ特異積分方程式を経由して数値計算が可能となっていたが,その特異積分方程式の離散化手法を変えることで,元の問題の不安定性が引き継がれ,数値計算が破綻する例も見られた.さらに,数値計算が成功する場合には,初年度に得た理論的結果よりも,より安定性が高いことを示唆する数値実験結果も得た.具体的には,初年度は特異積分方程式の区分定数近似によって条件数が多項式増大するという評価を得たが,前者ではCauchy核の特異性を対数関数をもちいて除去する数値積分則を利用した高精度数値計算をおこなったところ条件数が指数的に増大し,後者では,実際に連立方程式に現れる条件数を直接計算したところ,理論値として得られている値よりも小さいという結果を得た.前者からは,高精度離散化によって元の問題の不安定性も近似され,特異積分方程式の不安定性は,楕円型方程式の初期値問題の不安定性を引継ぎ深刻(severely ill-posed)であろうと推測される.これらを勘案すると,先行研究で数値実験が成功したのは,離散化手法にあることが示唆された.しかしながら条件数はあくまで上からの不等式評価であり,引き続き検討が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に得られた理論的な結果を含め,本助成で購入した並列計算機により数値実験をおこなった.申請段階では,この数値実験が初年度にとりくむ予定であったが,初年度は理論的な研究が順調だったため,そちらを優先し,順を変えて,今年度数値実験にとりくんだ.その結果,理論的な結果の妥当性が示された.これらの結果を総合すると,研究自体は概ね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で対象とする楕円型の偏微分方程式の数理モデル自身は,局所的な視点で構成される.一方,研究の動機である数値計算の成功例として得ていた解法は積分方程式がスキーム全体で大きな役割を果たすと考え,積分方程式の何等かの大域的な性質を利用した解法ではないかと考えている.この局所性と大域性をつなぐのは,楕円型方程式の解の性質のひとつである解析性という性質と考えられる.そこで,この局所性と大域性をつなぐ性質を精査する数値実験として,もとの楕円型偏微分方程式という本質は変えず,初期値の与え方などを変えた数値実験に取り組む.例えばこの問題を半空間の問題に変換したり,有界領域の問題に変換するなどして数値的不安定性の変化を調べる.その際,等角写像が必要となると考えられるが,それが数値的不安定性に与える影響,特に定量的な影響を数値実験等で調べる.次に,楕円型方程式の数値解法についてCalremanの公式など,従来は理論的アプローチと考えられてきた手法の数値的実装を試みる.問題が不安定なため,その数値スキームも不安定であることが予想されるが,その不安定性が,よく知られているような深刻(severely ill-posed)なものか,本研究の動機のように数値計算で扱い得るような,例えば条件数が多項式程度にしか増大しない不安定性(mildly ill-posed)かを調べる.最後に,楕円型の偏微分方程式の初期値問題に対して,本研究で得られた理論を整備し,その数値計算手法の可能性もしくは限界について整理し,本研究を総括する予定である.
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