研究課題/領域番号 |
22K18675
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
塩沢 裕一 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60454518)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | ブラウン運動 / 双曲空間 / Berry-Esseen 型定理 / エレファントランダムウォーク / マルコフ過程 / 分枝ブラウン運動 / 線形増大 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の究極的な目標は,マルコフ過程の生成作用素の L2 スペクトル下限が正値であるという条件だけで,線形増大度に関する現象の仕組みを統一的に規定することである。そして本研究の目的は,典型的モデルの解析を通じて,究極的な目標を達成するために着目すべき点を絞ることである。具体的には,分枝ブラウン運動の最大値過程と,リーマン多様体上のブラウン運動の動径過程に対して極限定理を確立する。
|
研究実績の概要 |
本年度は、リーマン多様体上のブラウン運動の動径過程に対して、Berry-Esseen 型定理の研究に取り組んだ。双曲空間上のブラウン運動の動径過程に対しては、確率微分方程式の解としての表示を用いて、中心極限定理が示される。一方で、Berry-Esseen 型定理の導出について検証を行ったところ、中心極限定理には影響しないような、低次のランダムな剰余項の解析が必要であることが判明した。特に確率微分方程式の解による表示および1次元拡散過程の Feller 判定法のみでは、解析が困難であることが予想された。一方で、3次元の場合には推移確率が初等的に表示されることを用いて、Berry-Esseen 型定理を示すことができた。特に、収束レートは通常の Berry-Esseen 型定理と変わらないことが分かった。
研究計画策定時には、推移確率の表示が一般には困難であることから、確率微分方程式の解を通じた解析手法を想定していた。しかし、研究開始後の調査により、推移確率については、Gruet (1996) により積分表示が得られていることが判明した。3次元の場合の考察を合わせて、推移確率の表示を積極的に取り入れる方針に変更した。この表示の漸近解析を行い、Berry-Esseen 型定理を証明するという方針が立った。
本課題採択の直前に、一般化エレファントランダムウォークと呼ばれる、過去全体の挙動に依存したマルコフ過程のモデルについて極限定理を導出し、論文を執筆および投稿した。このモデルも、ドリフトと相関の強さに応じて、増大度に関して(劣)線形性を有するとともに、その中心化が中心極限定理をみたす。このモデルの解析は、研究計画策定時には想定していなかった。しかし、本研究課題に関わることから、本研究課題に関する研究活動の一環として、この研究成果をセミナーで発表をするとともに、研究打ち合わせを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リーマン多様上のブラウン運動の動径過程の解析について、状態空間が双曲空間の時点で、低次項を解析する問題が生じた。この考察に時間が掛かり、研究申請書に記載した分枝ブラウン運動の解析には着手できなかった。一方で、双曲空間上のブラウン運動に関するBerry-Esseen 型定理の証明に向けて、推移確率の漸近解析を実行するという方針を立てることができた。また、一般化エレファントランダムウォークの研究成果が論文として出版された。
|
今後の研究の推進方策 |
双曲空間上のブラウン運動のBerry-Esseen 型定理の証明に向けて、Gruet (1996) による推移確率の表示の漸近解析に注力する。この方針で研究が進展する場合には、リーマン多様体上の動径過程の解析に着手する。一方で、進展がない場合には、分枝ブラウン運動の解析に着手する。
|