研究課題/領域番号 |
22K18676
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大山 陽介 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (10221839)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | q-パンルヴェ方程式 / 超幾何方程式 / セグレ曲面 / 超越数 / q-超幾何函数 / オイラー・ポアソン・ダルブー方程式 / 離散可積分系 / パンルヴェ方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
ある数が無理数かどうか,超越数かどうか調べる問題は,ルート2に対してギリシャ人が頭を悩まして以来の問題である。無理数性を調べるには有理数による近似数列を研究することが有効であるが,この有理数列は一般には何かの漸化式を満たしている。その漸化式が離散パンルヴェ方程式などの離散可積分系の場合には、可積分系の手法が役に立ち,無理数や超越数の研究に可積分系の立場から新しい視点を与えることができると思われる。
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研究実績の概要 |
本年度はq-パンルヴェ方程式の大域解析について研究を進めたが、本研究の中心部分には至っていない。まず、q-パンルヴェVI型方程式のモノドロミ空間が4次のデル・ペッツォ曲面、いわゆるセグレ曲面になることを用いて特殊解の研究を行ない、4月に神戸大学でのWebセミナーで報告した上で、8月に早稲田大学で開かれた国際研究会「10th International Congress on Industrial and Applied Mathematics」においてもq-パンルヴェVI型方程式のモノドロミ空間と特殊解の関係について解説した。本研究の目的である、超越数への適用のためには不確定特異点の場合、すなわちq-パンルヴェ方程式のI型からV型に類似の理論を作らなければならない。III, V型については大体できているので、3月の日本数学会で「Mano's decomposition and q-Painleve equations」としてq-パンルヴェVI型の場合の眞野分解の類似をまとめて報告してある。 特殊解のうち、セグレ曲面の上の16本の直線が交差する場合のいくつかに対しては、原点および無限遠点の周りで一価有理型になる解が対応する。この事実はモノドロミ空間の有用性を示す例となっている。12月にオーストラリアのシドニー大学で行われた国際研究会「11th Workshop on Integrable Systems」において報告した。また、日本数学会 中国・四国支部例会においても概要のみを報告している。 本研究のテーマである可積分系と超越数との対応にはまだ至ってはいないが、q-パンルヴェ方程式の大域構造については次第に明らかになっている。また、本研究において超幾何函数が鍵になっていることから、第33回数学史シンポジウムにおいて「超幾何級数・小史」として歴史を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
q-パンルヴェ方程式の研究の方に進んでしまっているが、超越数が登場するのは不確定特異点の場合であろうと考えている。不確定特異点を扱うためには退化する前の確定特異点型の場合をしっかりと扱わなければいけないので、今年の研究は寄り道ではなく時間がかかっても不可欠なことである。しかしながら主目的である超越数の研究には程遠いために「やや遅れている」と判断せざるを得ない。今後は離散パンルヴェ系で不確定特異点の周りの解を調べて何らかの超越数と関わる研究を考察したい。 経験的にはq-パンルヴェII型方程式あたりの方が見やすいはずであるし、また加法的差分方程式の方がより自然だと思っているが、加法的q-パンルヴェ方程式のモノドロミ空間が特にI型II型ではよくわからず、時間ばかりかかっている。この点も「やや遅れている」と判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
q-パンルヴェ方程式の大域的な研究は、本研究テーマに直結するものでもないが、それ自身重要なので今後も継続していく。特に不確定の場合は、本研究とは強く関係するものである。q-パンルヴェ方程式だけでなく加法的な差分パンルヴェ方程式の構造を調べることも重要であり、結局は特殊解の考察に落ちるにせよ、どの特殊解を選ぶと良いか考察する上では大域構造の研究は不可欠であると考えてる。 昨年度考察したEuler-Poisson-Darboux 方程式のq-類似自体についてはそのままになっているが、ゲルファントのグラスマン多様体上でパンルヴェ方程式を考察することも重要である(大山の昔の研究でもある)。離散の場合にも同様に幾何的に考察することも重要ではあるので引き続いて研究していく。 また、非古典型の場合の直交多項式・超幾何方程式・離散パンルヴェ方程式を統一的に見ないことには超越数へのアプローチは簡単ではないだろう。非古典型直交多項式と離散パンルヴェ方程式の幾何学的なアプローチも一つの方向であると思われる。離散パンルヴェ方程式と超越数の関係をもう少し大域構造という幾何学的な視点から見直すことを最終年度の研究の一つとしたい。 他方では、本研究を始めた原点に立ち返って素朴に離散方程式の特殊解を扱っていこうとも思っている。不確定特異点の周りでのある意味で「行儀の良い解」が重要な役割を果たすはずであり、離散の場合は「行儀の良い解」がまだ十分に説明できていない。
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