研究課題/領域番号 |
22K18679
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 久美子 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00585979)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 極値統計学 / 軸索輸送 / キネシン / ダイニン / KIF1A / iPSニューロン / 神経細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
神経細胞ではシナプスの材料などは小胞(荷物)としてパッキングされ、軸索内をタンパク質分子モーター(キネシンとダイニン)に輸送される。小胞輸送は神経細胞の物流の要であり、その異常は神経変性疾患に関連する。本研究では具体的に、極値統計解析による小胞輸送の輸送速度解析法を提案する。輸送速度データを極値統計解析の再現レベルプロットを用いて解析すると分子モーターの種類と変異体ごとに現れる鮮明な違いをセレンディピティとして発見した。分子モーターの物性モデルを提案し、ベイズ推定によって、この再現レベルプロットを解釈する。物性測定が困難な細胞内でも極値統計解析から分子モーター種類・変異体の物性値を推測したい。
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研究実績の概要 |
神経細胞ではシナプスの材料などは小胞(荷物)としてパッキングされ、軸索内をタンパク質分子モーター(キネシンとダイニン)に輸送される。分子モーターはアデノシン三リン酸の加水分解からエネルギーを得て微小管上に沿って動く。キネシンは細胞体から末端のシナプス領域に向かう順行性輸送を、ダイニンはシナプス領域から細胞体に向かう逆行性輸送を担当する。輸送方向が異なる2種類の分子モーターの物理性質の相違点を解き明かすことは重要である。これまでタンパク質1分子実験で速度-力関係の相違が報告されている。100nm程度の小胞に蛍光ラベルを施し、生きている神経細胞内で小胞輸送を蛍光イメージングし、動画データから輸送速度を測定する。 マウスや線虫などの軸索輸送の輸送速度データを極値統計解析の再現レベルプロットを用いて解析した結果、キネシンとダイニンで異なる振る舞いを見せた。2022年度はキネシンとダイニンのそれぞれの速度-力関係の理論モデルを構築し、シミュレーションで2つの分子モーターの再現レベルプロットの差異を再現することに成功した。速度-力関係の理論モデルからダイニンの再現レベルプロットの異常性を理解することが出来たと考えている。また、ヒトiPSニューロンの軸索輸送の蛍光顕微鏡動画の試験的な解析(再現レベルプロット)を行い、キネシンによる小胞輸送でマウスとヒトで類似した結果を得た。その結果をアメリカ生物物理学会(67th Biophysical Society)の年会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極値統計解析の再現レベルプロットは、キネシンとダイニンで異なる振る舞いをするが、差異を説明するミニマルモデルを構築できた。最小誤差法やKS検定を用いたパラメータ推定を行ったものの、ベイズ推定を利用したミニマルモデルのパラメータ推定は達成できていない。健常者のものであるが、ヒトiPSニューロンの軸索輸送の蛍光顕微鏡動画の極値統計解析に着手することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
マウスや線虫などの軸索輸送の輸送速度データへの極値統計解析の応用について、ミニマルモデルの結果とともに論文にまとめる。2022年度に達成できなかったベイズ推定を利用したミニマルモデルのパラメータ推定は、共同研究者を募って対処したい。 また、ヒトiPSニューロンの軸索輸送への極値統計解析の応用を継続し、神経変性疾患の患者由来のiPSニューロンへの応用の足掛かりにする。
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