研究課題/領域番号 |
22K18682
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (00514051)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | テンソルネットワーク / 量子計算 / NISQ / スピン液体 / 量子コンピュータ / 量子多体問題 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、量子多体状態を解析する革新的な手法として、古典コンピュータと、量子コンピュータを高度に融合して活用する、古典量子エンタングルアルゴリズムの構築を目指す。固体・分子中の電子集団など、量子力学に従う粒子が相互作用している量子多体系では、量子状態を記述するための自由度が、粒子数に対して指数関数的に増大するため、解析的な計算はもとより、数値的手段でも多粒子の振る舞いを解析することが非常に難しい。本研究では、古典コンピュータで成功したテンソルネットワーク法を軸とすることで、従来の量子コンピュータの単独利用から視点を大きく転換し、古典コンピュータと量子コンピュータの長所を高度に融合する。
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研究実績の概要 |
量子多体系の状態を記述する状態ベクトルの次元は、粒子数に対して指数関数的に増えるため、古典コンピュータで厳密な取り扱いが可能な粒子数には大きな制限がある。本研究では、このような量子多体状態の情報を圧縮し、効率的に表現する手段として成功しているテンソルネットワーク表現を、量子回路と融合し、古典コンピュータと量子コンピュータの双方の長所を最大限活用した、古典・量子エンタングルアルゴリズムの開発を目指している。 今年度は、スピン液体状態が基底状態として実現するキタエフ模型を主な対象として、古典・量子エンタングルアルゴリズムを構成する要素のうち、(1)テンソルネットワーク状態の量子回路への変換、(2)変換された量子回路の拡張とその最適化、について解析を進めた。 (1)については、キタエフ模型のスピン液体状態を表すコンパクトなテンソルネットワーク表現、ループガス状態、を量子回路に変換する方法として、従来から検討していた、測定を組み合わせて行う方法に加えて、測定なしで直接量子回路に変換する可能性について検討した。未だ、完全に測定を無くして変換する変換法は得られていないが、少なくとも、測定回数を従来に比べて少なくできることが明らかになった。 (2)については、ループガス状態に複数レイヤーの量子回路を追加した場合のエネルギー期待値と、真の基底状態のエネルギーとの誤差について検証を行なった。追加した量子回路のパラメタを変化させて誤差を確認した結果、誤差を十分に下げるためには、事前の想定よりも多くのレイヤーが必要なこともわかった。一方で、追加する回路からユニタリ性の条件を除外することで、効率的に誤差を低下させられることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、キタエフスピン液体を中心に、考案している量子古典エンタングルアルゴリズムが期待通りに動く可能性を検証でき、この方向性で研究を進めることで、汎用的な、量子古典エンタングルアルゴリズムを構築できる見通しが明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度のキタエフスピン液体での解析を、フラストレート磁性体を中心に他の種類の量子多体系にも拡張し、量子古典エンタングルアルゴリズムの考え方の有効性を検証する。 また、古典計算機を用いた量子状態の物性評価に、近年発展しているモンテカルロサンプリングを用いた方法を適用し、その性能を検証する。
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