研究課題/領域番号 |
22K18687
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村上 修一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30282685)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 平衡形 / 結晶成長 / 表面状態 / 表面エネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではトポロジカル物質における結晶形状と電子状態の関係を探索する。トポロジカル絶縁体や高次トポロジカル絶縁体などにおいて、結晶表面に現れるトポロジカル束縛状態や束縛電荷は結晶の表面エネルギーに影響を及ぼし、結晶の平衡形状を変化させると期待される。このようにトポロジカル絶縁体が種々の結晶の平衡形状に対し特異性を示す可能性や、結晶形状による特異な電子状態の可能性を探索する。
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研究実績の概要 |
トポロジカル相ではトポロジカル表面状態が表面の形状に依存して現れる。本年度はその電子状態と結晶形状やコーナー電荷の関連について以下の成果を得た。 (1)トポロジカル絶縁体・鏡映対称性に守られたトポロジカル結晶絶縁体・高次トポロジカル絶縁体の3相の間を変化する模型を用いて、各相での結晶の平衡形状を計算し、トポロジカル相と結晶形状との関係を解明した。トポロジカル表面状態が現れる表面は表面エネルギーが高いため、そうした表面が出現しにくくなり結晶表面の面積が減るはずであり、確かにこのモデルでこの挙動を確認した。このモデルでは元のトポロジカル絶縁体に磁場や磁化を導入していくことで、他の2相へと転移するが、その際に磁場が貫く面では電子状態にバンドギャップが開くため、そうした面は表面エネルギーが減少し、その面方位の表面が広くなると期待され、計算結果は確かにそのようになることが確認された。。 (2)3次元obstructed原子絶縁体の量子化コーナー電荷の一般論を構築した。コーナー電荷の量子化のためには、結晶形状が頂点推移的多面体(全ての頂点が対称操作で移り変わる)である必要があり、spherical系列とcylindrical系列がある。spherical系列は前年度ほぼ一般論の構築が終わっていたが、今年度、実は時間反転対称性のある場合とない場合とで事情が異なることが判明した。計算の結果、前者のみコーナー電荷公式が確立できることを理論的に示し、全ての場合を網羅する一般論を構築できた。また今年度はcylindrical系列で、多様な点群対称性や結晶形状について、まず実空間の公式を確立し、それを波数空間の公式へと書き替えた。空間群によっては新たなZ2トポロジカル不変量を導入する必要があり、これはsphericalな場合の公式から導出できた。これらにより、全ての場合にコーナー電荷が決められる公式を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
結晶形状とトポロジカル相との関連については、トポロジカル絶縁体、トポロジカル結晶絶縁体、高次トポロジカル絶縁体などさまざまなトポロジカル相に関して、模型での計算のレベルである程度一般性のある結論が得られた。本年度はさまざまなトポロジカル相へと展開した計算を行うことができたため、今後実際の物質へと展開できる準備が整い、今後実際の物質での実現可能性や物性現象に与える影響などを議論できると期待できる。さらに実験や第一原理計算での研究への波及効果も期待される。また3次元絶縁体のコーナー電荷については、前年度のspherical系列の結晶形状に加えて、本年度はcylindrical系列についても理論展開をすることができた。その結果、さまざまな結晶形状や空間群を含む全ての場合において、コーナー電荷の実空間の表式は全て同一の形になるという美しく一般的な結果を得ることができた。結晶形状も空間群も多数あるため、その組み合わせで非常に多数の場合があり、それらすべてを網羅する形でこのようにコーナー電荷が量子化する場合の一般論を構築できること自身が非自明である。さらに今後、候補物質を探索するための準備も整いつつあり、今後候補物質が見出されてくると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
さまざまな結晶形状とトポロジカル相との関連について、前年度までの成果を参考に、ビスマスなどの実際の物質に即した計算を行うことで、高次トポロジカル絶縁体相でのヒンジ状態・コーナー状態と、骸晶などの特異な結晶形状との関係を探り、現実の物質での実現可能性を探索する。また3次元絶縁体のコーナー電荷については、cylindrical系列のさまざまな結晶形状や空間群に関する研究成果について論文にまとめるとともに、コーナー電荷の公式の物理的な解釈・候補物質の探索・物理現象に与える影響について検討を行う。
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