研究課題/領域番号 |
22K18689
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒井 英明 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20534598)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | トポロジカル超伝導体 / 鉄系超伝導体 / マヨラナ準粒子 / スピンホール絶縁体 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代トポロジカル量子計算に必須のマヨラナ準粒子を実現できる系として、超伝導体とトポロジカル絶縁体の人工超格子薄膜が注目されている。これに対し本研究は、鉄系超伝導体を高温超伝導層とトポロジカル絶縁層の自然超格子物質として新規開拓することを目的とする。本系ではマヨラナ粒子の高温化に加え、熱輸送測定による検出が可能になると期待される。そこで、元素置換によるキャリア濃度の精密制御を行い、得られた最適物質においてマヨラナ粒子特有の熱伝導・熱ホール効果を実証する。これにより、多彩なマヨラナ粒子を実現できる物質の設計法を確立することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、高温超伝導層とトポロジカル絶縁層の自然超格子物質とみなせる鉄系超伝導体の開拓することにより、従来よりも高温でのトポロジカル超伝導の実現を目指す。得られたバルク単結晶のフェルミエネルギーを制御することで、マヨラナ粒子状態の実現も試みる。 本年度は、まず前年度に合成した微単結晶のフェルミエネルギーの位置を実験的に解明することを目指し、パルス強磁場中での量子振動の観測を試みた。合成済みの単結晶は最大辺が200-300ミクロンであったため、今回はカンチレバーを用いた磁気トルク測定を採用した。Eu系の単結晶では、Euの大きな磁気モーメントに由来するトルクのため、10テスラ以下の磁場でサンプルがカンチレバーから外れてしまい、高磁場での測定には至らなかった。一方、Ca系の単結晶では60Tまで磁気トルクの測定に成功したが、明瞭な量子振動は観測できなかった。ただし、上部臨界磁場に対応する異常も観測されず、トルクのシグナルを正確に検出できていたかを今後検証する。以上の結果から、磁気トルクに加え、より量子振動に敏感な測定方法を試す必要があることがわかった。また、パルス強磁場実験で信頼性の高いデータを取得するためには、実験室の低磁場マグネットで基本磁気特性を確認する必要があるため、これが可能となるより大きなサイズの結晶の育成も目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、合成済みのEu系とCa系の微単結晶を活用して、パルス強磁場測定を実施したが、量子振動の兆候となるシグナルの観測には至らなかった。さらに複数のサンプルで測定する必要があったが、本年度導入予定であった低磁場マグネットの納期が大幅に遅れ、実験室での予備測定を進めることができず、再度パルス強磁場測定を実施することができなかった。また、磁気トルク以外の測定手法の開発も遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
合成方法を工夫し、結晶のサイズアップを目指す。近年、同様の構造を有する鉄系超伝導体の大型単結晶の合成方法が報告されたため、その条件を起点に本物質において最適化を行う。これが成功した暁には、量子振動をより敏感に検出できる可能性のあるトンネルダイオード測定や交流抵抗測定の観測を進めていきたい。 また、現存の単結晶でも測定可能な磁気トルクの基本特性を低磁場で明らかにし、パルス強磁場測定に適した測定条件(結晶重量や方位)を明らかにできるように、実験室で使用できる低磁場マグネットを早急立ち上げる。
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