研究課題/領域番号 |
22K18692
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
秋光 純 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任教授 (80013522)
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研究分担者 |
堀金 和正 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, サイテック・コーディネーター(特任) (10406829)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 室温超伝導 / ボロン系 / 高温超伝導 / ボロン化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
「室温超伝導の実現」は、人類の夢の一つである。確かに、「物理学の夢」の10本の指の中に挙げられていることは間違いない。最近、申請者は「室温伝導体(Tc~350K)」と思われる物質Ti-B-Cを発見した。しかし、その超伝導体積分率は1%以下であり、その成分を取り出し、それを単相化し、結晶構造を決定する必要がある。それが本申請の目的である。 本物質が実現出来れば、現在のエネルギー問題の解決に向けての第一歩になることは間違いない。
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研究実績の概要 |
我々はMgB2の発見後、ボロン系での新超伝導物質を探索中、TiB2を合成した試料において室温付近である350Kで、超伝導に起因すると思われる磁化の明らかな変位(落ち込み)を観測した。ただ、その超伝導体積分率は0.1%程度と主成分であるTiB2によるものではないが、Ti化合物もしくはホウ素化合物が原因物質となっている可能性が高い。そこで、我々は高温超伝導発現の舞台の一つとして高いデバイ振動数が期待されるボロン系化合物に着目した。 合成過程におけるコンタミネーションの観点から、C, Y, W, Cu, N, Oなど不純物同士の反応による新しい化合物の生成の可能性を追求したものの、高温での超伝導発現は確認できなかった。 TiとBの二元系にはTiB, Ti3B4の存在が準安定相として報告されており、アーク溶解の工夫によって、それぞれ7割~8割程度の主相として得ることに成功した。さらに、これらへのコンタミネーションを想定した試料合成を行うものの、何れも高温での超伝導発現は確認できなかった。 ホウ炭化物BCxは2次元構造を持つため、グラファイト層間化合物を参考に、BC層間へのインターカレーションによるキャリアドーピングを行うべく、焼成温度や保持時間などの合成条件による結晶性の違いや物性の違いを明らかにしバルク結晶の合成手法を確立した。Liインターカレーションを目的とし合成したBCxにLiを反応させたところ、微弱ながらも新規超伝導体によるものと思われる超伝導転移を観測した。さらに、BCxの合成を参考に水素化物TiH2を合成の段階で利用することにより、BC層間にTi層が挿入されたTiBCの合成に成功した(上記研究成果はInorganic chemistry誌に報告した)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
我々は、TiとBの化合物の中に凖安定相の生成や不純物同士の反応によって新しい化合物が合成され、それが高温超伝導を示していると仮定し、種々の試料合成を試みている。 1)合成過程におけるコンタミネーションの観点から、Bの中に含まれる炭素(C)、アーク電極に含まれるイットリウム(Y)、タングステン(W)、アーク用ハースの素材である銅(Cu)のほかに、窒素(N)や酸素(O)の混入を想定した様々な組み合わせの合成を行っているが、高温での超伝導発現は確認できていない。 2)TiとBの二元系にはTiB, Ti3B4の存在が準安定相として報告されているが、安定的に合成された報告例はなかった。しかしながら、アーク溶解の工夫によって、安定相であるTiB2が少量合成されるもののそれぞれ7割~8割程度の主相として得ることに成功した。また、これらの準安定相へのコンタミネーションに起因した不純物相の生成を想定した試料合成を行うものの、何れも高温での超伝導発現は確認できていない。 3)グラファイト層間化合物を参考に、ホウ炭化物BCxのBC層間へのインターカレーションによるキャリアドーピングを行うべく、焼成温度や保持時間などの合成条件による結晶性の違いや物性の違いを明らかにしバルク結晶の合成手法を確立した。合成されたBCxへのLiのインターカレーションを試みたところ、微弱ながらも3.6Kで新規超伝導体によるものと思われる超伝導転移を観測した。さらに、BCxの合成を参考に水素化物TiH2を合成の段階で利用することにより、BC層間にTi層が挿入された新物質TiBCの合成に成功した。本物質の構造は、MgB2と同じAlB2型構造を有しており、BC層にTiの層が挿入された結晶構造を持つ。そのため、Ti以外にもMgB2と同タイプの発現機構を想定した超伝導物質の開発が可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はTiやBの化合物を中心に、以下の方針で新物質開発を進める。 1)TiとBの二元系における準安定相TiB, Ti3B4は超伝導を示さないが、、第一原理計算からフェルミエネルギー直下に大きな状態密度を有することがわかっている。そこで、その大きな状態密度を超伝導発現に利用すべくTi4+に対して3+や2+の元素への置換を行い、キャリア制御を試みる。また、TiB, Ti3B4はそれぞれFeB型、Ta3B4型構造をとり、Bが特徴的なネットワークを形成する。そのため、FeB型、Ta3B4型構造を有する新規化合物の開発も行う。 2)BCxへの Liインターカレーションを試みた結果を受け、微弱ながらシグナルを観測している新規超伝導相の同定を進める。具体的には、これまで実施してきたLi単体とBCxを直接反応させる手法に加え、電気化学法によるグラファイトへのリチウムインターカレーションの類推から、BCxを正極、リチウム金属を負極に用いた2局式セルを作成して電気化学法によるインターカレーションを実施する。また、グラファイトにインターカレーションされにくいナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)についても電気化学法を行いキャリアドーピングを試みる。 3)新物質TiBCの合成法を参考に、MgH2, CaH2, LiHなどの水素化物を用いることでBC層にこれら金属がインターカレーションされた物質群を探索する。
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