研究課題/領域番号 |
22K18697
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人科学技術交流財団(あいちシンクロトロン光センター、知の拠点重点研究プロジェクト統括部) |
研究代表者 |
仲武 昌史 公益財団法人科学技術交流財団(あいちシンクロトロン光センター、知の拠点重点研究プロジェクト統括部), あいちシンクロトロン光センター, 主任技術研究員 (60342599)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 真空中軟X線照射表面電位計測 / 軟X線アッテネータ / 絶縁体の電子収量 / 軟X線吸収分光 / 絶縁体 / 表面電位計測 |
研究開始時の研究の概要 |
軟X線吸収は、内殻電子の励起に伴い起こることからその時に放出される電子数を計測することにより吸収スペクトルを得ることができる。これを電子収量法という。しかしながら、絶縁体試料では電子が補充されず表面が帯電してしまい正しく計測することができない。そこで本研究では、この帯電量を計測することにより吸収スペクトルを得る新たな測定手法を開発する。測定は振動容量型表面電位計により行うが、超高真空下での測定となるため対応したプローブを新たに開発する。また、照射強度が重要なパラメータとなるため、軟X線量を連続可変的に制御する軟X線アッテネータも新たに開発する。
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研究実績の概要 |
表面電位計測による吸収分光では、測定エネルギー範囲において照射光強度を一定に保つ必要があるため、アッテネータを開発している。当初予定していたすだれ状スリットでは、軟X線照射時の熱負荷により十分な安定性が得られないことがわかったため、ハニカム状に変更することした。残念ながら、設置予定ビームラインにおいて真空事故が発生し、設置することはできなかった。 ビームライン光学素子の炭素汚染による強度変動のため、アッテネータだけでは十分な精度で光量調節が難しいことがわかっており、ビームライン光学系のパラメータ調節を併用する方法を検討した。具体的には、アンジュレータのギャップ値または前置鏡駆動で分解能を変えることなく可能であるが、どちらの場合においても高次光成分比が変わってしまう。これは吸収分光において、バックグラウンドのエネルギー依存性が生じることを意味する。どちらの方法でも最適値からずらすことで強度を調整するが、駆動方向によって高次光成分比が異なり、影響の小さい方向があることがわかった。これはアッテネータによる光量調節がうまくいかない場合の代替手段となりうる。 平行して、軟X線照射時の絶縁体試料の帯電状態の評価を進めている。帯電量は光電子スペクトルを測定し、光電子の運動エネルギーのシフト量から見積もった。帯電量は照射光量に対応するが、一定量で飽和することがわかった。その量は試料に依存する。このことから、実際の吸収分光測定においては帯電飽和よりも十分に少ない光量もしくは測定ねるぎー範囲のすべてにおいて帯電飽和する光量で測定する必要があることがわかった。 吸収測定時には積算照射光量が増えていくため、帯電量が増大していくことが懸念されるが、現在のところそのような傾向は観測されておらず、光量に対する帯電量は比較的良く再現されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験を実施しているビームラインにおいて真空事故が発生し、ビームライン分光器のほぼ全てにおいて真空回復、再調整作業が必要となり、復旧作業および利用不可期間に実施予定であったビームラインユーザー利用の補償のため開発中の軟X線アッテネータの設置を断念せざるを得なくなってしまった。代替案として、ビームライン光学系の一部を駆動することにより光量調節できるかどうか調査し、可能であることがわかった。これは昨年度の結果から光量調節の高精度化のためにアッテネータと併用する予定だったものである。 それに伴い、表面電位計による吸収分光測定には着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
軟X線アッテネータについて、本来ビームライン分光器の中間に設置する予定であったが、昨年度の真空事故により設置・調整の時間確保が難しくなった。そのため、ビームライン下流端に簡易の測定真空槽を設置し、その前段にアッテネータを設置することとする。十分な精度で光量調節ができなかった場合には、ビームライン分光器の前置鏡を駆動することによる光量調節に切り替える。 上記真空槽に新たに開発している表面電位計測プローブを設置し、表面電位計測による吸収分光測定試験を開始する。予定通り、絶縁体・金属・半導体のうち代表的な試料を選択してそくていし、この手法の適用範囲について検討する。
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