研究課題/領域番号 |
22K18698
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 明大 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20781850)
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研究分担者 |
山崎 憲慈 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10732985)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | X線自由電子レーザー / 単粒子イメージング / グラフェン |
研究開始時の研究の概要 |
この10年余りで、X線自由電子レーザー(XFEL)施設が世界各地に建設され、高強度・フェムト秒パルス・空間フルコヒーレンスという特長を生かした新しいX線科学の開拓が進んでいる。XFEL計画が推進された原動力の一つが“結晶化困難なタンパク質の単粒子イメージング”という夢である。本研究計画では、ノイズ信号を極限まで低減できる試料環境を実現し、単粒子X線レーザーイメージングに挑む。本研究で開発する試料環境に関する要素技術は、イメージングだけでなく他の計測法にも波及し、将来の放射光・X線レーザー測定の高度化を支える基盤技術へ発展する可能性を有している。
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研究実績の概要 |
(1)大面積自立グラフェン膜の実現:電子顕微鏡用の試料ホルダとして直径~1-2 um程度の自立グラフェン膜がすでに市販されている。しかしながら、これをX線レーザーイメージング測定へ応用すると、X線のサイドローブとグラフェンを支える孔あきカーボン膜がかすかに干渉し、データ解析上無視できない背景散乱が発生するという課題があった。まず、自立膜の大面積化のため、多層グラフェンを安定的に合成できる化学気相成長(CVD)レシピを探索した。さらに、孔あきカーボン膜つきCuグリッドへの転写プロセスにおいて、洗浄工程等を洗練化することで、市販品の100倍以上の面積をもつ自立グラフェン膜を実現した。 (2)自立グラフェン膜からの背景散乱強度計測: SACLAで開発を進めるX線レーザーイメージングシステムを用いて、大面積自立グラフェン膜からの背景散乱強度を計測した。生体粒子測定用に独自に製造した、非常に薄く(20 nm)表面粗さが小さい窒化ケイ素(SiN)薄膜と比較したところ、低空間周波数領域ではSiN薄膜からの背景散乱強度が低い一方で、数ナノメートルの実空間構造に対応する高空間周波数領域では、自立グラフェン膜が優れていることが明らかになった。 (3)自立グラフェン膜上に展開した金属ナノ粒子のシングルショット回折パターン測定:作製した自立グラフェン膜が試料支持膜として機能するかを確かめるため、Auナノ粒子溶液を自立グラフェン膜に滴下・自然乾燥させ、光学顕微鏡と電子顕微鏡で評価した。試料展開による自立グラフェン膜の破損は見られず、SiN膜と同様にAuナノ粒子を保持できることを確認した。さらに、SACLAにおいてAuナノ粒子からシングルショット回折パターンを取得することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にしたがって、大面積自立グラフェン膜からの背景散乱強度を計測した結果、特定の空間周波数においてSiN薄膜よりも優れていることが確かめられたため。加えて、自立グラフェン膜上の金ナノ粒子からシングルショット回折パターンを取得できたため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に取得したX線レーザーデータの解析を進め、大面積自立グラフェン膜の作製プロセスに関する知見とともに論文にまとめる。さらに、グラフェン溶液セル化に向けた研究をスタートする。まずは、これまで開発してきたSiN薄膜を窓材に用いた溶液セルと同じデザインで試作品を作製する予定である。現状よりも自立膜の面積を拡大する必要があるため、現状の多層グラフェンで可能な自立膜の最大面積を、歩留まりや表面のコンタミネーションと関連付けながら探索する。その結果によっては、CVD合成時の基板として、現状のCu箔に加え、グラフェン層数のさらなる上積みが期待できるNi箔の利用も積極的に検討する。
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