研究課題/領域番号 |
22K18701
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 宏彦 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (60609981)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | リュードベリ原子 / プラズマ輸送 / 再結合プラズマ / 電子ビーム / 電子-イオン-リュードベリ原子共存系 |
研究開始時の研究の概要 |
古典輸送、新古典輸送、乱流輸送などの磁場を横切る方向のプラズマ輸送過程は、一般に電子温度が高い環境で輸送係数が大きくなる。一方、核融合装置の炉壁前面に生成される低温高密度プラズマ中では、1 eV以下の低温で増幅するプラズマ輸送現象が観測される。本研究では、電子-イオン再結合過程により多量に生成される“高励起状態原子(リュードベリ原子)”に着目し、電子-イオン-リュードベリ原子の共存系における、全く新しいプラズマ輸送過程の解明を目指す。パルス状電子ビームと高時間分解能レーザートムソン散乱計測を用いて、輸送増大現象へのリュードベリ原子の寄与を実験的に検証する。
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研究実績の概要 |
核融合装置の炉壁前面に生成される低温高密度プラズマ中では、電子-イオン再結合過程により“高励起状態原子(リュードベリ原子)”が多量に生成される。この電子-イオン-リュードベリ原子の共存する環境下でのプラズマ輸送を、パルス状電子ビームと高時間分解能レーザートムソン散乱計測を用いて詳細に調査し、低温化されたプラズマ中で増幅するリュードベリ原子状態を介した全く新しいプラズマ輸送過程を明らかにすることが本研究の目的である。 初年度である2023年度は、直線型装置NAGDIS-IIで生成された定常ヘリウムプラズマに対してタングステン電極、および仕事関数の低い六ホウ化ランタン(LaB6)電極を挿入して実験を行った。プラズマによる自己加熱の方法として、正バイアスにより電子加熱を行った後にパルス的に負バイアスを印加して電子ビームを放出する方法と、負バイアスを印加し続けてイオン加熱により電子ビームを放出する方法の2通りについてその特性を調査した。また、電子ビームの到達距離を調べるため、電子ビーム源から軸方向に離れた位置に静電プローブや高速カメラを設置し、パルス状電子ビーム放出前後の応答を確認した。その結果、電子ビーム放出に起因する発光強度の増加は磁力線に沿って広い範囲で観測されるが、電子ビームの減衰長は短いという結果が得られた。中性粒子との弾性衝突や電離過程が影響していると考えられ、より詳細な計測と理解が必要となっている。また、電子ビームを再結合プラズマへ入射し、フォトマルを用いて高速計測された発光スペクトルの初期データを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究により、メンテナンス性を含めた電子ビーム源の特性を把握し、次の円環状電極を製作するための基礎データを取得できた。一方で、電子ビームの減衰長が想定より短かったことから、今後の計測の条件設定には注意を要することが示唆された。またフォトマルを用いた高速計測を実施できたことから、今後、低エネルギービーム入射時のリュードベリ原子の枯渇の有無を確認することが可能となった。 以上のことから、2022年度における総合評価を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
円環状の電子ビーム源を製作し、ヘリウム非接触再結合プラズマへと適用する。再結合フロント(体積再結合過程が活発な領域)下流に挿入して低エネルギーの電子ビームを入射し、リュードベリ原子の選択的枯渇の有無を発光スペクトルから調査する。 計算、ならびに実験で得られた結果を国内・国際学会や学術論文により報告する。
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