研究課題/領域番号 |
22K18706
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須田 利美 東北大学, 電子光理学研究センター, 教授 (30202138)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 電子弾性散乱 / 電荷密度分布 / 中性子分布 / 4次モーメント / 低運動量移行 / 中性子分布半径 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、電子散乱により2重魔法核 208Pb 核の中性子分布の平均二乗半径(以下、中性子分布半径)を決定することである。中性子は電荷を持たず電子散乱等の電磁相互 作用による定量的な測定が困難だったため、原子核内での中性子分布の理解は未だに定性的 レベルにとどまっている。申請者は理論研究者とともに、低エネルギーの伝統的な電子弾性散乱で中性子分布半径を決定出来る新しい手法を発見した。本研究では、この提案手法による208Pb 核の中性子分布半径決定に挑戦する。この新手法は電子散乱による不安定核への適応の可能性もあり、原子核研究に大変革をもたらす。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、陽子電荷半径決定用に東北大学電子光理学研究センターに建設した世界で最も低エネルギーの電子散乱施設で、208Pb の中性子分布半径を電子弾性散乱で決定する新しい手法の開発研究である。当該手法については、既に3本の論文として発表済みである。 2022年度は2連スペクトロメータのアクセプタンスを含む校正測定、並びに大阪大学核物理研究センターの研究者の協力を得て極薄(~10 μm)の208Pb 標的の作成を行った。その後、ビームエネルギー50 MeVの電子ビームを照射し、弾性散乱事象測定を開始した。 弾性散乱断面積から導出される形状因子のテイラー展開で決定できる電荷密度分布の4次モーメントから中性子分布の情報を引き出すには、10^{-3} 程度の断面積測定精度が必要である。テスト測定から、2連スペクトロメータのアクセプタンス補正制度として10^{-2} の精度は達成したが、更なる精度向上が必要であることを突き止めた。検討の結果、2連スペクトロメータの回転中心(標的位置)に対する設置精度が十分でないことが判明し、2023年度は再測量並びに位置調整を行なって設置精度を ~0.1 mm 程度に抑えた測定を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
物理目標達成のための課題が明らかになり、測定装置の設置精度向上に向けた作業の必要性が明らかになった。当初から想定されていた課題の一つであり問題はない。2023年度以降、物理測定に向けた準備を進め予定通り測定に入ることができると考えている。また理論グループとの共同研究も順調に進んでいる。測定に向けた議論を進めている中、当萌芽研究申請時には想定していなかったアイデアも生まれた。最も軽い原子核、重陽子、に応用すると、原子核の構成子である中性子そのものの電荷半径測定にも応用できる可能性を発見したのである。これは現時点で我々だけが実施可能である。まさに萌芽研究にふさわしい研究展開となっている。
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今後の研究の推進方策 |
測定装置の設置精度の向上を図り、必要な精度でアクセプタンスの把握を行う。その後、電子ビームエネルギー、Ee = 10 - 50 MeV、散乱角度、 30 - 150°、で覆うことができる運動量移行領域での208Pb原子核の弾性散乱断面積測定を実施する。
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