研究課題/領域番号 |
22K18707
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村松 憲仁 東北大学, 電子光理学研究センター, 特任教授 (40397766)
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研究分担者 |
神田 一浩 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 教授 (20201452)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 光子ビーム / コンプトン散乱 / 軟X線 / 多層膜ミラー / アンジュレータ |
研究開始時の研究の概要 |
次世代ハドロン光生成実験での実用化を念頭に、軟X線のコンプトン散乱によって飛躍的に高エネルギー化された3-5 GeVの偏極光子ビームを生成する新光源技術の開発に世界で初めて挑戦する。電子蓄積リング中の挿入光源から放射される軟X線を真空中の多層膜ミラーで反転反射して元の蓄積リングへ再入射し、高エネルギー電子と散乱させる。本研究では特に多層膜ミラーの最適化に重点を置き、高精度凹面研磨や散乱点での集光性能の研究、反射X線帯域の拡張等を進めて生成ビーム強度の向上を図る。挿入光源や軟X線制御の技術を従来のレーザーコンプトン散乱と融合し、他には得られないエネルギー帯で偏極光子ビームの実現を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、電子蓄積リング中のアンジュレータから放射される92 eVのX線を真空中のMo/Si多層膜ミラーで反転反射した上で元の蓄積リングへ戻し、そのコンプトン散乱によって今までのレーザー入射方式と比べて飛躍的に高いエネルギーのガンマ線ビームを得る手法を開発することが目的である。特に多層膜ミラーの開発に焦点を絞り、これまでの本研究で65.8%の高反射率を達成すると同時に、アンジュレータ光に対する反射光を高い相対強度で観測することに成功している。2023年度は開発してきた多層膜ミラーを使い、ニュースバルの短尺アンジュレータビームラインBL07Aにおいてコンプトン散乱によるガンマ線ビーム生成の試験を開始した。多層膜ミラーからの反射光を約17m離れた蓄積リング直線部で電子ビームと衝突させる必要があり、コンプトン散乱試験の初期段階ではX線プロファイルモニターを使って反射光の位置を測定しながら2軸の高精度ステッピングモーターにより反射角度調整を行う手法を確立した。同時にコンプトン散乱で生成されるガンマ線ビームについても蓄積リングトンネル内に設置したPWO電磁カロリメータで測定を行ったが、この段階では生成を確認できなかった。コンプトン散乱点に近い位置に設置されているX線モニターによる測定結果などから、散乱点における反射光の集光に課題があることが分かり、ミラー反射面(凹面)の曲率設定について詳細な光学シミュレーション等による再検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Mo/Si多層膜ミラーの開発を当初計画に沿って進め、反射率と反射角度調整については開発目標をクリアしている。ただし、軟X線コンプトン散乱の初期段階試験ではガンマ線ビームの生成が観測されず、ミラー反射面の集光性能に課題があることが分かった。そのため、ミラー基板形状の再検討が必要となっており、本研究の研究期間を延長してコンプトン散乱試験を継続することとした。
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今後の研究の推進方策 |
軟X線コンプトン散乱によるガンマ線ビーム生成の試験を継続する。多層膜ミラー基板の反射面(凹面)に施す曲率の設定を見直し、集光点を電子軌道が蛇行しているアンジュレータ部分から外す。また、アンジュレータからの放射光の発散角やビームライン光学系を詳細に再現したシミュレーションの結果もミラー反射面形状の設計に反映させる。そのうえで改良型のMo/Si多層膜ミラーを製作し、ニュースバルBL07Aの真空チェンバー内に再設置する。最終的なコンプトン散乱試験を行い、1 GeV電子に対して最大0.58 GeVのエネルギーを持つガンマ線ビームの生成を、PWO電磁カロリメータによるエネルギースペクトル測定で初観測することを目指す。
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