研究課題/領域番号 |
22K18709
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
市村 晃一 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (80600064)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 極稀事象探索 / 超伝導素子 / ガンマ線分光 / 超電導素子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではスズをガンマ線吸収体として用い、スズ112の2重電子捕獲反応で生じる微弱なエネルギー吸収を超伝導素子で直接観測する新しい物理探索手法の原理検証を行う。 続いて多数の超伝導素子からの信号の多重読み出し手法を確立し、基底状態に遷移するスズ112の2重電子捕獲反応を世界で初めて探索し技術実証を行う。本研究で期待される多数の超伝導素子からの信号の多重読み出しによる高質量化と高検出効率化、および超伝導素子が元々有する高エネルギー分解能は極稀事象探索感度向上に必須の要素である。この挑戦的手法が確立すると、極稀事象探索に新しい観測手法を提供でき、素粒子物理学の分野にブレイクスルーをもたらす。
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研究実績の概要 |
本研究ではスズをガンマ線吸収体として用い、スズ112の2重電子捕獲(DEC)反応で生じる微弱なエネルギー吸収を超伝導素子で直接観測する新しい物理探索手法の原理検証を目的とする。 2023年度は、TES(超伝導転移端温度計)を用いたDEC反応探索について、スズを吸収体として用いた多画素ガンマ線TES検出器技術をすでに確立している実験グループと共同研究をすすめ、4画素約90時間のガンマ線源照射データを解析した。 データ取得中は時間経過とともに信号応答が変化するが、補正方法を確立した結果、線源から期待される信号のエネルギー分解能についてガンマ線ではシグマで20 eV以下、X線では50 eV程度と超高エネルギー分解能であることを実証した。また興味のあるDEC反応による信号が期待される53 keV近傍では有意な信号は観測されず、スズ112のDEC反応についてのプレリミナリーな半減値の下限値を得ることが出来た。これらの研究成果について国際会議(TAUP2023)でのポスター発表、プロシーディングスの投稿および日本物理学会での口頭発表を行った。現在は系統誤差の評価とより多画素でのデータ取得に向けた準備を進めているほか、将来希釈冷凍機を設置することを考えている神岡地下実験室の環境中の中性子フラックス、ラドン濃度などの評価を進めている。 並行してKID(Kinetic Inductance Detector)を超伝導素子として用いたガンマ線検出器の研究開発を東北大学ニュートリノ科学研究センターが有する希釈冷凍機を用いて行っており、ガンマ線を効率に照射するためのコリメータの設計開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだ系統誤差の評価は継続中ではあるが、超伝導素子を用いたスズ112Snの二重電子捕獲反応探索の原理検証ができ、将来的に100から1000素子の濃縮スズを用いた探索を極低放射能環境で行えば観測可能であるとの見通しもできた。多画素化に向けた議論も共同研究者と進めることができ、実際に0.8ミリ角のスズ吸収体8画素でのデータ取得と解析の準備を進めている。 また将来的に希釈冷凍機を設置する予定の神岡地下実験サイトでの環境中の中性子やラドン量の評価も進めることができた。これらのことから研究は概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は2023年度の研究成果に関して系統誤差を評価して論文としてまとめるほか、0.8ミリ角のスズ吸収体8画素(TES)で外部からガンマ線を照射するデータを取得し、線源有りのデータからはエネルギー分解能などの検出器応答の評価を、線源無しのデータからはスズ112Snの二重電子捕獲反応の半減期の評価を行う。これらのデータと神岡地下の環境放射線量評価から最適な希釈冷凍機の遮蔽体の設計、最適なデータ取得方法の決定を行う。並行しKIDでの多画素データでの線源データ取得も行う。
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