研究課題/領域番号 |
22K18718
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
本田 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (40509783)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | テラヘルツ / 共振器 / 回折放射 / 電子加速器 / 電子ビーム |
研究開始時の研究の概要 |
テラヘルツ光を用いて、分子構造の特定の動力学モードを選択的に制御し、熱平衡状態では発現しない新たな機能を見出せる可能性がある。このとき、新奇な特徴をもつ光源が有用である。ベクトルビームと呼ばれる特徴的な光は、特異点近傍で物質を励起するなど、これまでにない利用法が考えられる。ただし、このようなベクトルビームの特徴を生かす実験を行うには、他の空間モードが混ざらない高純度かつ高強度のベクトルビームでなければならない。 本研究では、加速器による短バンチの電子ビームで発生したテラヘルツ領域の回折放射を外部光共振器に蓄積し、高純度かつ高強度のテラヘルツベクトルビームを実現する。
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研究実績の概要 |
本研究では、加速器のマルチバンチ電子ビームで発生するテラヘルツ領域の回折放射を外部光共振器に蓄積し、高ピーク強度で高純度のベクトルビームを実現する手法を開発する。 外部光共振器への蓄積技術は、例えば単一周波数レーザーや、モードロックパルスレーザー光の場合には、技術的に確立している。ただし、これらの事例はキャリアの周波数に対して比較的狭い帯域の光成分を扱うものである。一方で、本研究の回折放射テラヘルツ光は、キャリア周波数にたいして50%から100%の周波数成分を含む広帯域の光である。 この広帯域の光を外部共振器に蓄積するには、周波数帯域の全域にわたって共鳴条件が一致するような特殊な共振器設計を考える必要がある。従来の狭帯域光の考え方だけに基づいた設計では、その周波数成分の一部だけしか蓄積できず、強度が得られないうえ、パルスのサイクル数などの特徴が保持されない。 広帯域蓄積に必要な条件を定式化し、いくつかのレイアウトの共振器を検討したうえで、今回の回折放射テラヘルツ光の実験に適した折り返し共焦点型の構成を選択した。 計画ではKEKの超伝導加速器の試験施設であるcERL加速器で試験を行う予定であったが、cERLは運転期間が限られているため、他の研究施設で予備実験を行う機会を検討し、京都大学FELのテラヘルツ光源加速器を視察した。この施設は常伝導加速器であるため、本研究が最終的に目指す、連続運転ビームで多バンチの蓄積には向かないが、最初の予備実験を行うには適していると考えられる。 実験のセットアップを確定し、cERLおよび京大FELでの実験を想定して特注の共振器ミラーの仕様を確定し、発注した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特注ミラーの製作は多種類で多数を同時製作すれば1枚あたりの価格が抑えられる、また納期も半年近くと長い。このため、今後の実験の展開で必要となるであろう多くの種類ミラーについて、曲率半径などのパラメータを予想して、実験のセットアップを決めた。 必要な特注品の発注を2022年度内に済ませることができ、2023年度はじめには納品される状況になった。このため、計画通りに今後の実験が進められる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度5月末に共振器ミラーの準備が整う予定である。ミラーを組み合わせて共振器とするセットアップを整備したうえで、7~8月に京大FELにおいて準備実験を行う。その結果を踏まえて、9月にKEKのcERL加速器にセットアップを構築する。 10~11月のcERL加速器のビーム運転期間に実験を行う。cERLでは回折放射のテラヘルツビームラインが設置されているが、長らく運転休止期間があり2年ぶりの加速器の運転であるため、まず電子ビームの調整を行い、次にテラヘルツビームライン自体の調整が必要である。テラヘルツビームラインの終端で正しいプロファイルのテラヘルツ光が到達していることを確認したうえで、そのビーム軸を確認し、本研究の共振器を設置する。 共振器長をスキャンしながら、共振器反射光強度をダイオード検出器で測定し、共振器の共鳴に特徴的なディップが確認されれば、実験条件が確立する。そのうえで、共鳴ピークの強度分布を確認し、広帯域蓄積の特徴を確認する。
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