研究課題/領域番号 |
22K18726
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長谷川 健 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (00574196)
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研究分担者 |
山崎 雅 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30760235)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 大規模噴火 / カルデラ / 古地磁気学 / 地球物理学 / 岩石鉱物学 / 巨大噴火 / マグマ / 古地磁気 / 噴火継続時間 / マグマ滞留時間 / 超巨大噴火 / 弾性体モデル / 滞留時間 |
研究開始時の研究の概要 |
人類未体験とされる超巨大噴火が本当に存在したのかを検証する。地層に残された堆積物から超巨大噴火が過去の地球で起きたとされるが、人類はそれを目撃したこともなければ歴史にも残っていない。本研究は、これまで過大に想定されていた噴火規模やマグマ溜まりの規模に上限値を与えうる研究であり、既存モデルの大幅な見直しだけでなく、原発や地層処分における評価基準の見直し等にも貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、人類未体験と謳われている超巨大噴火(噴出量>1000 km3)が、本当に存在したのかどうか?について、古地磁気学的、地球物理学的、岩石鉱物学的手法を用いて検証することである。超巨大な量の噴出物が存在しても、それが一瞬で噴出・堆積したことが証明できなければ、超巨大噴火とは言えない。仮にそれが、100年かけて断続的にゆっくり噴出・堆積したのであれば超巨大噴火ではない。超巨大噴火とされる堆積物の代表例は、北米のイエローストーン火山とインドネシアのトバ火山の周辺に認められ、それぞれ約200万年前と約7万年前に噴出したとされる。しかしこれらが、何日間、あるいは何年間かけて噴出・堆積したのか?について定量的には全く分かっていない。また、一瞬で1,000 km3のマグマを噴出するためには、地下に同量のマグマを溜めて置かなければならないが、そのようなマグマ溜まりを地殻浅部に維持することは可能なのか?これらの不明点を検証する。 R5年度は、R4年度のイエローストーン火山に引き続き、インドネシアのトバ火山において、ヤングトバタフ(YTT)の現地調査とサンプル採取を行った。YTTは、先行研究によって、複数の噴火ユニットに区分されており、今回は4つの地点で100個以上の定方位(古地磁気測定用)サンプルを採取することができた。仮にこれらのユニット間に数十年以上の時間間隙があれば、各ユニットが記録する古地磁気方位に差異が認められるはずである。これらサンプルの残留磁化方位を測定した結果、採取地点による磁化方位の差異を認めることができ、YTTの噴出・堆積は数十年以上に及んでいた可能性が指摘できた。この成果は、R4年度に北米のイエローストーン火山で得られた成果と同様のものである。 また、粘弾性モデルを用いた地殻内マグマだまりの地球物理学的検証も行い、これらの成果を学会発表することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた計画通り、超大規模噴火堆積物の代表例である北米のイエローストーン火山のハックルベリーリッジタフ(HRT)とインドネシアのトバ火山のYTTの高密度サンプリングを実施し、古地磁気学的手法により、これらが一瞬で(数巡年以内に)噴出したものではないことを明らかにできた。 また、地球物理学的手法では、地殻変動モデル等の地球物理学的手法により、地殻浅部で母岩の弾性強度を超えずに蓄積できるマグマ体積量とマグマ溜まりのアスペクト比(縦横比)を関係づけることができた。マグマ溜まりの水平方向の広がりを実際のカルデラサイズに限定した場合、1000 km3規模のマグマを噴出させずに地殻浅所(<10 km)で貯留するためには、粘弾性による応力緩和が重要な役割を果たすことがわかったが、応力緩和時間の十倍程度以上の休止期を持ちながらマグマが供給される場合に、その効果が特に有効になることもわかった。 これらの定量的検証により、超大規模噴火とされる噴出物は、100年以上の時間をかけて噴出・堆積したものである可能性を指摘できている。 最終年度であるR6年度は、これらの仮説を支持するデータとして、岩石鉱物学的手法による検証を行い、これらの結果を統合し、議論することで本課題研究の目的を達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
堆積物の下部と上部で100年の時間差があった場合、その堆積物を供給したマグマだまりが、単一・超巨大で長寿命だったかどうか?をマグマ溜まりの滞留時間から検証できる。マグマが、地殻内に溜まりを作ってから、どのくらいの時間が経って噴出したのかというマグマだまりの滞留時間は、噴出物に含まれる鉱物の元素拡散を利用して、10年の時間分解能で求めることができる。超巨大・単一・長寿命なマグマ溜まりであれば、上部層に含まれる鉱物から求められる滞留時間は、100年以上を示すはずである。逆に100年以下であれば、その存在を否定できる根拠となる。 R6年度は、既に採取済みのHRTおよびYTTについて、上記の岩石鉱物学的分析を実施する。最終的には、得られたすべてのデータを統合して、超大規模噴火堆積物の噴火から堆積までの合理的なプロセス、モデルを提示する。モデル構築においては、地殻内に滞留できるマグマの量と時間の上限値、1回の噴火現象の規模(噴出量)の上限値を定量的に推定し、これまで超巨大噴火とされてきた堆積物は長時間にわたる複数の噴火・マグマで形成された可能性を指摘する。 これらの成果は、学術的にもインパクトが高いだけでなく、例えば原子力発電所への影響評価や防災に関するインフラ整備の基準制定にも貢献しうるものであるため、積極的に国内外の学会や学術雑誌で公表することを務める。
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