研究課題/領域番号 |
22K18732
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
栗田 直幸 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (60371738)
|
研究分担者 |
戸野倉 賢一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00260034)
松見 豊 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 名誉教授 (30209605)
安原 亮 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30394290)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
|
キーワード | 中赤外レーザー / 水蒸気同位体計測 / 水蒸気安定同位体 |
研究開始時の研究の概要 |
安定同位体測定は、レーザー分光法の登場により、実験室での分析から野外の現場測定に転換した。最近では、成層圏プラットホームや惑星探査機など新しい観測プラットホームが登場し、現場測定から遠隔監視への変革が期待されている。本研究では、最新の中赤外レーザー技術を活用してこのブレイクスルーに挑戦し、同位体測定装置の小型軽量化を実現する。中赤外領域の吸収強度は従来の近赤外領域よりも桁違いに高いため、分光セルの小型化、信号ノイズを低減する機構を簡素化できると期待できる。そして、簡便で高精度な同位体測定器の実現は、気象、水資源管理、火山噴火予測などの分野で大きな進展につながることが期待できる。
|
研究実績の概要 |
今年度は、高精度かつ高確度で同位体計測が可能な吸収線を選定し、その吸収線を発振できる量子カスケードレーザー(QCL)の準備を行った。最初に、大気の吸収線データベース(HITRAN)を使って、OH基の伸縮振動による吸収帯(2.6um-3.3um)とOH基の変角振動による吸収帯(5.8um-7.7um)を対象として探索を行い、(1) 各同位体水の吸収線が重なり合わない、(2) 各同位体水の吸収線が2cm-1の範囲内に存在する、(3)吸収線強度が同程度であるという条件を満たす吸収線候補(8波長)を選定した。次に、研究グループが開発したスペクトルモデルを使って、選定した吸収線の温度依存性の解析を行った。光路長15mのセルに水蒸気量10000 ppmの空気ガスを30 Torr封入した場合を想定し、セル温度が298Kから300Kに変化した場合の吸収線の変化をシミュレーションした。その結果から温度変化に依存する計測誤差を評価し、推定誤差が最も小さい吸収線を最終候補とした。最終候補となった吸収線ではH2Oの温度依存性が高く、これが誤差を生じさせる原因となっている。しかし、その計測推定誤差は0.05‰/℃程度であり、従来法の計測誤差0.1‰と比較しても十分に小さい。また、各同位体種間の吸収線も離れているため、圧力変化に対する影響も限定的である。最後に、FTIR(島津社製 FTIR-8400S)を使った室内実験を行い、選定した吸収線候補に対する妨害物質の影響も調査した。光路長10cmのガスセルに水同位体ガスを封入して吸収スペクトルを取得し、室内空気のスペクトルと比較して大気中に含まれる妨害物質の影響を見積もった。その結果、大気成分の妨害も小さいことが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、実験に使用する吸収線を特定したのち、選定した波長領域をカバーする量子カスケードレーザーの手配を行った。しかし、世界的な半導体不足や樹脂材料不足、さらには新型コロナウィルスの影響により、発注した製品の納期が遅れ、2022年度に行う予定であった、QCLを使った光学実験を行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に準備したQCL光源を使った同位体計測を実施する。光路長15mのマルチパスセルに水蒸気量10000 ppmvの空気ガス30 Torrを封入して吸収スペクトルを取得する。そして、その結果を2022年度に実施したスペクトルモデル実験結果と比較し、両者の類似性を検証する。また、従来よりも短い光路長でも環境変動を検出できるかどうかの検証にも取り組む。既存の同位体分光計では、環境中の水蒸気同位体変動を検出するのに光路長3kmの吸収セルを使用しているが、本研究では、光路長15mでも同様の計測が可能であるかどうか検証する。研究グループが開発した気化装置を用いて、同位体既知の水蒸気を含む空気ガスを連続的に発生させ、分析精度、およびその確度を調べる。
|