研究課題/領域番号 |
22K18751
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村島 基之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70779389)
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研究分担者 |
鷲津 仁志 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00394883)
梅原 徳次 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70203586)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | トライボロジー / 誘電体バリア放電 / 低摩擦 / DLC |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,摩擦潤滑剤は外部から供給し長時間効果が持続する必要がある,という従来の機械工学の概念を覆し,潤滑剤を摩擦面においてその場で生成し供給するという革命的な潤滑技術の開発に挑戦する.研究代表者は昨年度の独自実験において,誘電体バリア放電の摩擦面への直接照射により,超低摩擦潤滑剤が生成され,それらが超低摩擦を示す結果を発見した.本研究は,革新的な潤滑油レス超環境調和型エンジニアリングにつながる夢の技術を実現する研究であり,真に挑戦すべき課題である.
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研究実績の概要 |
本研究は,摩擦潤滑剤は外部から供給し長時間効果が持続する必要がある,という従来の機械工学の概念を覆し,潤滑剤を摩擦面においてその場で生成し供給するという革命的な潤滑技術の開発に挑戦する.研究代表者は独自実験において,誘電バリア放電の摩擦面への直接照射により,表面に40 nm程度の軟質有機物層と液状物質が同時に生成され,それらが超低摩擦を示すという発見をした.研究代表者はこの実験結果から,摩擦面において潤滑物質をその場で生成そして供給するという革命的な潤滑物質供給プロセスを発想した.さらにこの供給手法は,化学的安定性に劣る生分解性潤滑剤を機械しゅう動面で利用可能とする革新的技術であると気づきを得た.本年度の研究では,Diamond-like Carbon(DLC)と有機酸が示す超低摩擦現象のメカニズム解明のために, DLC膜と乳酸試薬を用いた摩擦試験を実施した.その結果,DLC膜であってもその組成により,超低摩擦が発現する場合もあれば発現しない場合もあるということが明らかになった.具体的には,本研究の試験条件では水素を含有したDLC膜を用いた場合には摩擦係数はおおよそ0.06程度と超低摩擦の領域までは低下しなかった.一方で,窒素含有DLCを用いた場合には,摩擦係数が0.01以下の超低摩擦領域まで低下することが明らかとなった.誘電体バリア放電をDLC膜に照射した際には,表面に酸性の液体が形成されていたことから,DLC膜と有機酸の組み合わせにより超低摩擦が発現することが確かめられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来実験では誘電体バリア放電を15秒連続して照射しており,この場合には,摩擦係数が0.01以下という超低摩擦を示すことが明らかになっている.一方で,この超低摩擦は照射直後の数秒しか持続せず,誘電体バリア放電を照射し続けているにも関わらず摩擦係数は上昇してしまうことが分かっていた.そこで,昨年度の研究では,1秒の誘電体バリア放電照射→1秒の照射停止というインターバルサイクルを繰り返すことが摩擦係数の推移にどのような影響を与えるかを実験的に明らかにした.その結果,インターバル放電の場合には,その間低摩擦が持続することが明らかとなり,従来の連続照射よりも優れた摩擦制御手法であることが当初予定を超えて明らかとなった.さらに,今年度の研究では,誘電体バリア放電を用いた時のような摩擦係数の上昇は,乳酸試薬を用いた場合には現れないことが明らかになった.すなわち,有機酸とDLC膜を組み合わせた場合の超低摩擦は有機酸の安定性が重要であることが明らかにされた.具体的には,誘電体バリア放電を連続的に照射していた時には生成された液体が再び放電にさらされ成分が分解してしまい,それにより超低摩擦が維持されなかったという可能性が強く示唆された.本研究は当初予定されていた研究進捗に加え,その結果から従来研究において超低摩擦が維持されないメカニズムを考察するまでの発展を見せており,当初計画以上に研究が進捗していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,摩擦潤滑剤は外部から供給し長時間効果が持続する必要がある,という従来の機械工学の概念を覆し,潤滑剤を摩擦面においてその場で生成し供給するという革命的な潤滑技術の開発に挑戦するものである.今年度の研究では,DLC膜表面に存在する有機酸分子が安定的に存在することが超低摩擦の長寿命化に重要であることが示された.さらに,DLC膜に水素が含有されている場合には超低摩擦が発現せず,窒素が含有されている場合には超低摩擦が発現することが明らかにされた.今後は,摩擦試験後の表面に吸着している有機酸分子が超低摩擦にどのように寄与しているかを明らかにする.そのために,超低摩擦を発現したDLC膜の摩擦試験後の表面TOF-SIM分析により,どのような分子が表面のどの部分(摩擦面および摩擦面外)に分布しているかを明らかにする.加えて,超低摩擦を発現しない表面におけるTOF-SIM分析結果と比較することで,有機酸分子の吸着や分布のどういった要素が超低摩擦の発現に重要であるかを明らかにし,最終的にDLC膜と有機酸分子の組み合わせにより生じる超低摩擦メカニズムの解明に挑戦する.
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